大半の社員から反感を買ったチーム研修、それでも続けてきた理由:「よなよなエール」流 ガチンコ経営(2/5 ページ)
ヤッホーブルーイングの社長に着任してから真っ先に取り組んだこと。それが社内の改革でした。チームビルディング研修を持ち込み社員の意識変革に挑みましたが、その道のりは決して楽なものではありませんでした。
社長を続けられるか、クビになるか
TBPはどんな研修かと言うと、自分をさらけ出すほどの詳しい自己紹介に始まり、フラフープを参加者全員で上げ下げして、息を合わせて作業する難しさや楽しさを実感したり、クモの巣のように張り巡らされたロープの穴を皆で力を合わせて制限時間内に潜り抜けるアクティビティがあったりします。これらを通してどういうやり方で挑むかの意見のぶつけ合いや合意形成の難しさなどを体感します。これによって最終日までに全員で真のチームになることを最終目標にしています。
この研修は過去経験したことがないほどの大変さでしたが、悪戦苦闘しながらも素晴らしい学びを得ることができました。それは人生観が変わるほどの感動の体験でした。そこから学んだものは数多くありますが、特に私の意識が変わったものとしていくつか挙げると、チーム作りには以下のようなことが必要だということです。
・自分がまず変わる
・理想をあきらめない
・人それぞれ個性がある
・それを相互理解する
・コミュニケーションは大事
・目標を定め、皆で共有し、合意する
さて、自分が受けたこの研修をどうやって会社に生かすか考え悩みました。創業者の星野からは1円でも増収増益を続けることが重要だと言われています。このメッセージを大雑把に分かりやすく言うと、増収増益を達成していれば社長を続けられるが、そうでなければ外される、ということかと直感的に感じていました。
TBPを本気で行うには、私とスタッフのかなりの労力を費やすことになります。今はまだ通販の勢いがあり急成長を遂げているから、取り組むのなら今がチャンスかもしれない。伸びが鈍化して取り組むと、業績がさらに悪くなり減収減益になるリスクがある、ということも考えました。しかも今はまだ20人くらいのスタッフ数だが、将来人数が増えて取り組むと、より社内改革には時間がかかってしまうだろう。そんなことを考えた末、ついに決心しました。
やるなら今しかない。しかもできるだけ早くやる。TBPの活動を集中的に行い、会社を強固なチームに作り替えよう。短期的に業績の伸びは鈍化するだろうが、チーム化がうまくいって業績を上げるのが先か、チーム化が進まず業績が悪化して社長を外されるのが先か、時間との戦いだ、そう覚悟を決めました。
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