バスクリン若手社員が立ち上げた「銭湯部」の効能:銭湯を盛り上げたい(3/4 ページ)
入浴剤の老舗メーカーのバスクリンで若手社員が立ち上げた部活動「銭湯部」。廃業によって減っている銭湯を「盛り上げたい!」という思いから始めた活動だが、社内の世代間交流促進にもつながっている。その取り組みについて、仕掛け人に聞いた。
地域の結び付きの大切さに気付く
設立から約2年半がたった現在、部員は10人。20代の若手社員から60代の取締役まで、世代や職種、役職の垣根を越えたメンバーで活動している。
活動内容は主に3つ。まずは銭湯巡りだ。1〜2カ月に1回、終業後や休日を利用して、気になる銭湯に出掛ける。最初にその銭湯がある街を散策し、商店などを訪問。そこに暮らす人たちと触れ合う。その後、銭湯を満喫し、懇親会で親睦を深める。
2つ目は、銭湯の魅力を発信するWebメディア「東京銭湯 -TOKYO SENTO-」を使った情報発信。銭湯巡りで得た知識や感想などを紹介したり、イベントの告知をしたりと、銭湯部の活動を発信している。
最後に、銭湯との共同企画によるイベントや集客施策の実施だ。その1つ、16年に始めた、東京都世田谷区の「そしがや温泉21」に図書館をつくる取り組み「銭湯ふろまちライブラリー」では、銭湯を地域の人たちに長く愛される場所にするための気付きもあった。
取り組みを始めた当初、1つの失敗があったからだ。待合スペースに設置した本棚に入れる本を一般の人に寄贈してもらうイベントを企画し、初回はFacebookで告知。たくさんの人が来場して盛況に終わり、大成功したかに見えた。
ところが、参加者は遠方に住む銭湯好きや本好きの人々が中心で、地域の人は少なかった。いくら銭湯が好きでも、遠方の人たちが継続的に通ってくれるわけではなく、一過性のイベントで終わってしまった。
取り組みの目的は、子どもも気軽に通えるような場所を作り、銭湯を活性化させること。そのためには地域に根付いた、息の長い活動にしなければならない。2回目のイベントでは、本を寄贈してもらうという内容は変えずに、告知方法を変更。インターネットを使わず、ビラ配りのみを実施し、地域の人たちに直接呼び掛けた。
すると、「そしがや温泉21」に8年通っているファンや、普段から本棚を利用している小学生など、地元の人たちが集まってくれた。現在では、本の貸し出し回数は累計300回を超え、本棚の整理も利用者が進んでやってくれるようになった。「新しいファンを取り込むことも大事だが、長く親しんでくれる人が離れないようにすることも必要。本業の商品開発にも通じる学びでした」と高橋さんは振り返る。
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