NewSpaceのハブを目指すルクセンブルクの戦略とは?:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
欧州で初めて民間宇宙ビジネスをテーマにした大規模カンファレンスが開かれた。開催地はルクセンブルク。この国は宇宙ビジネス分野で何を目指すのだろうか。
総人口約50万人の欧州の小さな国、ルクセンブルク。この地で2017年11月、欧州で初めて民間宇宙ビジネスをテーマにした大規模カンファレンスが開催され、米SpaceXの社長も会場に駆けつけた。宇宙ビジネス分野でルクセンブルクは何を目指すのか、現地の状況をお伝えする。
2040年の宇宙産業は1.1兆ドル以上に?
筆者が参加した宇宙ビジネスカンファレンス「NewSpace Europe」は、過去10年間ほどシリコンバレー、サンフランシスコ、シアトルなど西海岸で行われてきた。筆者も過去3年参加してきたが、場所柄、ベンチャー企業および投資家の参加者が多いことが特長だった。そうした中で今回、ルクセンブルクを舞台に初めて欧州で開催されたのである。
以前の連載でも書いたように、ルクセンブルクは商業宇宙資源開発を国家戦略として進めている。同国を訪れたのは今回が初めてだったが、驚いたのが地元のタクシーに乗った際に、運転手も宇宙ビジネスの盛り上がりを知っていたことだ。日本でも昨今宇宙ビジネスは注目を集めているが、広く一般にまで普及しているとは言えない段階だ。
今回のカンファレンスはキーノートスピーチに、同国政府のエィティエンヌ・シュナイダー副首相、地元ルクセンブルクに本社を構える世界最大級の衛星通信企業、SESのカリーム・ミシェル・サバ社長、さらにはSpaceXでイーロン・マスクCEOを支えるグウィン・ショットウェル社長が駆けつけた。主催者に聞いたところ、来場者は総勢400人強とのことだ。
シュナイダー副首相は同国の宇宙産業戦略を推進するために世界中のカンファレンスに登壇している。今回も「ルクセンブルクは宇宙資源の探査・活用のために必要な専門性、投資環境、政府支援を備えている」と改めて魅力を語った。そして、同国の目標は宇宙資源のみならずNewSpace全体のハブになることだ。
これまでも外国企業の誘致を進めてきたが、今回のカンファレンス開催に合わせて、衛星ベンチャーの米Spire Globalが同国に欧州拠点を設立し、ルクセンブルク政府から出資を受けることが発表された。ピーター・プラッツァーCEOは「ルクセンブルクのNewSpaceに対する専門性、コミットメント、支援は印象的だった。規制環境、国際的人材へのアクセス、投資ファンドの存在がルクセンブルクを選択した理由だ」と語っている。
続いて登壇したSESのサバ社長は、「現在、宇宙産業は、3200億〜3300億ドルだが、将来的には1.1兆ドル以上にもなるとも言われている」と、成長可能性を語った。SESの主要市場である通信分野では、世界全体のIPトラフィックは2040年には月間5ゼタバイトになり、そのための通信インフラとして衛星通信が必要と考えている。
その実現のための鍵として、Energy(太陽エネルギーを活用して衛星の動力を電気推進にする)、Technology(デジタル技術や低軌道&静止軌道の衛星インフラの構築)、Access to Space(ロケット技術革新による低コスト・高頻度なアクセス)、Presence(衛星基数が増え続ける宇宙空間における統制の確保)、Economics(経済性)の5つであると強調した。
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