旅をするような多拠点生活で「働く」はどう変わった?:ホステル「泊まり放題」の仕掛け人を直撃(1/5 ページ)
「ホステルパス」という新サービスが話題になっています。月1万5000円から登録している全国のホステルに泊まり放題になるというもの。東京〜地方、地方〜地方の多拠点生活が実現できるのです。この仕掛け人である「Little Japan」の柚木理雄さんを直撃しました。
「旅するように暮らす」という夢のような話が現実のものになるかもしれません――。
とあるゲストハウスのオーナーが仕掛ける新サービスが今話題になっています。それが「ホステルパス」。月1万5000円からという手ごろな値段でパスを購入してメンバーになると、登録している全国のホステルに泊まり放題になるというもの。たったの1万5000円だけで、東京〜地方、地方〜地方の多拠点生活が実現できるというのです。
この新しい仕組みを提案しているのは、東京都台東区でゲストハウス「Little Japan」を運営する柚木理雄さんです。柚木さんは京都大学卒、元農林水産省のエリート職員。在職当時から複業でNPOを立ち上げ、全国の空き家問題の解決に取り組むなど、新しい働き方を実践してきました。そしてその後、夢であったゲストハウス経営のため退職し、起業。自ら1年の3分の1を地方で過ごす多拠点生活を実践しつつ、このたび新たなライフスタイルを提案し、大きな反響を呼んでいます。
「なんて魅力的な話なんだ……」。そう思いつつも、多くの人の頭をよぎるのはやはり「仕事との兼ね合い」ではないでしょうか。どこに住むかという問題は、働く場所に紐づいており、やはり会社の近く、と半自動的に決まるのがこれまでの“常識”と考えられていたからです。
では、多拠点生活はどうすれば可能になるのか。そうした住まい方は逆に、私たちの働き方をどう変えるのでしょうか――。
株式会社Little Japan代表取締役 柚木理雄。兵庫県神戸市出身。京都大学を卒業、京都大学大学院を修了。幼少期から学生時代にかけて、ブラジルに3年、フランスに1年住み、海外40カ国以上を訪問。多くの国を訪れる中で、日本のために働きたいと考えるようになり、2008年に農林水産省に入省。国際交渉、経理、金融、農地、官民ファンド、6次産業化、バイオマスなどに携わる。在職中、東日本大震災をきっかけにNPO法人芸術家の村を立ち上げ。空き家問題の解決やさまざまなNPOの支援に取り組む。その後、退職し、17年12月に株式会社Little Japanを創業。地域資源を活かしたビジネスの創造による地域創生を目指し、ゲストハウス「Little Japan」の運営など事業推進中
気分に合わせて住む場所を変える、という新しい選択肢
――どうして定額泊まり放題の「ホステルパス」のサービスを始めようと考えたのですか?
まず、僕自身、これまで多拠点生活と呼べるような暮らしをしてきたんです。最近は「ホステルパス」が話題になって、かなり忙しくなってしまったんですが、それでも住まいを東京に置きつつ、年の3分の1くらいは地方のいろいろな場所を移動しながら暮らしています。
そうすると、「いい」と思える場所は1つじゃないんですよね。東京のような場所には都会にしかない良さがあるし、地方には地方の良さがある。皆で一緒にいたい気分のときもあれば、一人で静かに過ごしたいときもある。自分が「いい」と思える場所を、その時の気分に合わせて選べるようになったらいいなあという自分自身の願望が、まずありました。
けれども、これまでは家と言えばあくまで1つで、仕事が終わればそこに帰るというのが当たり前でした。それ以外の選択肢がないのです。だけど、もし可能なのであれば、僕がそう感じているのと同じように、その時の気分に合った場所で過ごしたいという人はほかにもいるはず。何なら「旅するように暮らす」というのは、誰もが一度は思い描く夢ですよね。
幸い、今はテクノロジーのおかげで場所を選ばずに仕事ができるようになってきました。それに、飛行機などの交通手段も以前よりはずっと安くなっています。今ならそういう新しい選択肢を作ることができるのではないか、と考えて立ち上げたのが、この「ホステルパス」なんです。
サービスの正式リリースは2018年11月中の予定で、提携する全国のホステルが泊まり放題になるのはまだこれからなのですが、先行して今年2月からは、自分が経営するこのゲストハウスで試験的に「泊まり放題」のプランを実施してきました。
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