“転職ブーム”に踊らされる人が「浅はか」である、これだけの納得理由:今ダメな人は、どこに行ってもダメ(2/5 ページ)
売り手市場が続き、企業が中途採用に躍起になる今、街やネットの至る所で求人広告を目にするようになった。それを受け、「年収が低い」「上司が嫌いだ」などの理由で転職を検討する声も多い。ただ、そんな悩みは、会社を変えることで本当に解決するのか。本当に転職すべき人と、そうでない人にはどんな差があるのか。東京・銀座の“転職バー”で多くの社会人の相談に取ってきた、マスターの鈴木康弘さんと常連客に話を聞いた。
「浅はか」な理由で転職しても、同じ失敗を繰り返す
――日々、こうした悩みや意見を聞く中で、鈴木さんは転職を考えている人にどんなアドバイスをしているのですか。
鈴木: 「もっとバリバリ働きたい」といった前向きな悩みではなく、「頑張っているのに評価してもらえない」「人間関係がイヤだ」「上司が嫌いだ」などと後ろ向きな悩みを持つ場合、8割には転職すべきでないと伝えています。仕事がうまくいかない時に自分の非を認めず、人や環境のせいにするくせがついている人は、転職先でも活躍できないからです。どうしても転職したい場合は、過去の経験を反省し、自分の物の見方を変えた上で環境を変えるべきだと伝えています。
「評価されない」「やりたい仕事を任せてもらえない」などの不満を募らせて転職を考えている人の場合、話をよく聞くと、単に実力不足で評価されていない場合や、上司との接し方や交渉スキルに問題がある場合があります。それでへそをまげ、「上司は分かってくれない!」などと考え、歯向かうような態度を取ったり、対話をやめてしまったりすると、いい仕事を振ってもらえなくなるのは当然です。こうした場合は、今の会社に残って地道に努力しつつコミュニケーション力を高めるべきです。
「社風が合わないから転職したい」と考える人もいますが、そういう人には「そもそも『社風』って何ですか? 漠然としすぎていませんか?」と問いたいです。一言で社風といっても、仕事の進め方、優先順位の付け方、評価ポイントなど、企業の風土を形作る要素はたくさんあります。それらを細かく分析し、なぜ自分の価値観と合わないのかを確かめた上で、今の会社に適応する努力をしないと、“ふわっとした理由”で安易な転職を繰り返す人になってしまいます。どうしても周囲と相性が悪い場合は、社内異動で解決するケースも多いので、まずは人事部門に相談してみるべきです。
社内評価が“ストップ高”の時に転職せよ
――浅はかな理由で転職しても、自分が変わらない限り同じ失敗を繰り返してしまうということですね。では、転職をしても問題ない人はどんな人ですか。また、転職するタイミングの「見極め時」はどう判断すべきでしょうか。
鈴木: 現職に不平不満がなく、現職で高く評価されている上で、「新しいチャレンジをしたい」と考えている人は転職しても問題ありません。また、目に見える結果を出して社内評価が最高潮に達した“ストップ高”の時に転職するのが望ましいです。
というのも、これまで多くのビジネスパーソンと接する中で、若い頃に「最優秀新人賞」「売上1位のMVP」などを受賞していたのに、周囲にチヤホヤされて慢心し、成長が止まり、いつしか「昔はすごかったのに、普通の人になってしまったなあ……」と劣化していく人を何度も見てきました。
せっかく実績を買われて若くして管理職になったのに、マネジメントを学ぼうとせず、「オレはこうやって成果を上げた」などと、自分の成功体験を部下に押し付けて信頼を失っている人もいます。
人は何歳になっても、「今の時代に何が必要なのか」を考え、学び続けるべきです。特に若手は、チヤホヤされて輝きを失う前に、一つの企業で仕事をやり切った頃に、環境を変えて学び直すことも重要な選択肢ではないでしょうか。
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