安心して開発するために必要な条項──MSは抗戦へ

「特許侵害の心配なく開発できる環境を整えるのは重要だ」と、問題になっている条項の正当性を主張した。

» 2004年07月13日 20時02分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 米Microsoftが公正取引委員会から排除勧告を受けた問題で、マイクロソフトは7月13日、都内で会見を開いて勧告を応諾しない方針を改めて明らかにした(関連記事1)、(関連記事2)。

マイクロソフトの法務・政策企画統括本部長の平野高志執行役

 問題となった「特許非係争条項」(the non-assertion of patents provision)は、同社がPCメーカーとWindowsの使用許諾契約を結ぶ際、Windowsに使われている技術がPCメーカーの特許権を侵害する恐れがあっても、PCメーカーは訴訟など法的措置をとらないとするもの。公取委は、同条項が公正な競争を阻害したとの判断し、排除勧告に踏み切った。

 これに対して同社は、同条項はMicrosoftがソフトを安心して開発するために必要で、違法ではないと主張する。「ソフトの構造はどんどん複雑になり、技術も多岐にわたっている。特許侵害の心配なく開発できる環境を整えるのは重要だ」(マイクロソフトの法務・政策企画統括本部の平野高志執行役 法務・政策統括本部長)。

 また同条項は、マイクロソフトに公取委が立ち入り検査(関連記事参照)する直前に削除を決めており、今年8月1日以降の契約で削除される予定。「削除を決めたのは、違法だと判断したためではなく、顧客重視の立場を貫くためだ」(平野執行役)。

 ただし、8月1日以前に結んだ契約による同条項の拘束力は残る。「守秘義務契約などと同じ扱いで、対象物が残っている限りは有効」(平野執行役)。公取委は過去に結ばれた契約も含め、同条項の効力すべてを無効にするよう求めている。

特許非係争条項の有効期間は製品の出荷停止3年後まで。Windows XPに搭載された機能が、次期Windows「Longhorn」にも搭載された場合は、その機能はLonghorn出荷停止3年後まで同条項の対象になる。MSは「過去に結ばれた契約にある非係争条項の効力は、非常に限定されたもの」としている

 同条項が、OEMパートナーの技術開発意欲を損なっているとの公取委の見解にも反論した。「OEMパートナーには、Windowsに特許侵害の恐れがある機能があればマイクロソフトに教えて欲しいと言ってきているが、これまで侵害を訴える報告はなかった。むしろ、同条項のおかげで安心してWindowsを利用できるという業者もいるくらいだ」(平野執行役)。

 しかし公取委は、一部メーカーが特許侵害を指摘し、同条項に関する修正・削除を要求していたことを明らかにしたが(関連記事参照)マイクロソフトは「事実確認がまだできていない」(平野執行役)とした。

 また同社は、WindowsのOEM契約時、同条項を含まない形態も選べるようにしている。同条項を含まない形態は、含むものよりも高価だが、「同条項を強制してきたわけではない」(平野執行役)。

 同社は勧告を応諾しないことを7月26日までに公取委に表明。審判手続きを通じて正当性を主張する方針だ。「主張が受け入れられない場合は、(二審に当たる)高裁で争うことになるだろう」(平野執行役)。

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