エンタープライズソフトウェア市場低迷、原因は市場の飽和化に

IT企業各社が最近発表した2004年第2四半期の決算は、予想よりも思わしくない結果だ。背景には市場の飽和化をはじめとするいくつかの原因がありそうだ。

» 2004年07月26日 14時20分 公開
[IDG Japan]
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 エンタープライズソフトウェアベンダー6社が今月発表した4〜6月期の収益見通しは期待を裏切る内容だった。アナリストらは、大企業市場の飽和化など幾つかの要因が各社の業績低迷の背景にあるとしている。

 ERPやCRM、財務ソフトウェアなどに対する需要は中堅・中小企業の間では依然として堅調だが、多くの大企業はこういった基幹システムをここ数年の間に導入済みであり、最近では機能不足を補うための「スポット購入」に徹しているというのが全般的な状況だ――マサチューセッツ州ケンブリッジにあるForrester Researchのアナリスト、アンドリュー・バーテルズ氏はそう指摘する。

 ワシントン州エバレットに本社を置く電力会社Snohomish County Public Utility Districtの場合もそのような状況だ。同社は数年前から、顧客情報、資材管理、財務、地理情報システム、エネルギー資源管理などのエンタープライズシステムの導入を進めてきた。

 同社の情報ビジネスコンサルタント、エド・クライン氏は、「運用と保守のコストを下げ、ビジネスプロセスの改善を図ることによって、これらのシステムから利益を引き出すことが当面の重要課題。大幅なコストメリットがない限り、これらのシステムを更新することはあり得ない」と話す。

 エンタープライズソフトウェアの購入の妨げとなっている要因はほかにもある。コネティカット州スタンフォードにあるMeta Groupのハワード・ルービン執行副社長は、企業バイヤーの間では「業務処理用システムからビジネス拡大型プロジェクトへの移行」が進んでいると指摘する。「活気が感じられるのは、ERPの導入の分野ではなく開発プロジェクトの分野だ。IT投資はエンタープライズソフトウェアベンダーの方に向かっていない」

 また、バーテルズ氏によると、4〜6月期に成立すると見込まれていた契約の中には、今四半期にずれ込むものもあるという。ここ数年の間に「大幅な値引きを当然のこととして期待するようになった」企業ユーザーに対して、価格ラインを維持しようとするベンダーの抵抗が強まったからだという。

 「これらの契約の一部は7〜9月期に成立するとしても、ベンダーの期待を大幅に下回る価格になる可能性がある」(バーテルズ氏)

 先週、4〜6月期の決算発表を行ったIBMの広報担当者ティム・ブロイアー氏によると、6月末の時点でソフトウェアの購入を延期した顧客もいたという。

 「延期になった取引の大半は、7〜9月期に成立するチャンスがあると考えている」とブロイアー氏は話す。

 カリフォルニア州マウンテンビューに本社があるVeritas Softwareは、四半期売上高の目標を4億9000万〜5億500万ドルから4億7500万〜4億8500万ドルに下方修正したが、7月27日の収支報告までは説明を手控える方針だ。売上高予測を6億7500万〜6億9000万ドルから6億5500万〜6億6500万ドルに修正したPeopleSoftも、同日に収支報告を予定しており、それまでは売り上げ低迷の理由についてはコメントできないとしている。

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