ニワトリとタマゴの問題への考え方は?RFIDを育てる(1/2 ページ)

アクセンチュアの堀田徹哉パートナーへのインタビュー3回目はRFIDについて回る技術的な問題と、それを解決する上でのポリシーとして意識される「ニワトリとタマゴの問題」に触れる。

» 2004年09月09日 02時24分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 海外の小売業者がEPCによるRFIDで足並みを揃える一方で、日本企業は対応に遅れていると指摘するアクセンチュアの堀田徹哉パートナー。インタビュー3回目は、この問題に日本の小売業者はどう対応するべきかについて聞く。さらに、RFIDについて回る技術的な問題と、それを解決する上でのポリシーとして意識される「ニワトリとタマゴの問題」にも触れている。

ITmedia 日本の小売業者はどのような対応をするべきでしょうか?

堀田 それは難しい問題です。日本の小売業は、店舗の運用をはじめ、それなりに細かい対応を今までしてきています。その意味で、RFIDを導入したからといって、本当にスケールメリットが出るのかは分かりません。

 まして、Wal-Martのように大量の製品を扱うならスケールメリットを生かすことはできます。実は、Wal-Martはもともとサプライチェーンベンダーですから。言ってみれば、小売業者でありながら、サプライチェーンを磨き続け、生産性の向上を心がけて、競争力をつけてきた企業であり、それが日本の小売業者とは根本的に異なる点なのです。

 だからといって、日本で1社だけでやるべきかというと、規模的に厳しい。やるとすれば、やはり、Wal-Martと同じくらいの規模を一旦確保してからということになります。

業界は腹をくくるしかない

 そうすると、どうなるかと言うと、Wal-Martは、イオングループ、イトーヨーカドーとダイエーに西友を足したくらいの規模なわけです。メジャーな小売業者を全部足してはじめてWal-Martに並ぶことになります。

 既に、日本の業界団体も対応は進んでいると思いますが、いろいろな意味で腹をくくる覚悟が必要になります。どこかのタイミングで意思決定をして、共同でRFIDを展開していかないといけない。

家電量販は日米に違いは少ない

 同じ小売でも、スーパーマーケットなどは分散する傾向がありますが、家電の量販を見ると非常に集中しているのです。

 米国のBest BuyやSears、Wal-Martももちろん家電を扱っていますが、米国と日本の量販店にはあまり大きな違いはありません。Wal-Martでやっているようなことは、ジャスコやイオン、イトーヨーカドーなどはできないかもしれませんが、コジマ電気やヨドバシカメラ、ビックカメラなどの家電量販店ではできるかもしれません。

 そのため、Wal-Martのような一般的な消費財ではなく、家電量販の分野で、RFIDの成功事例を一つ作ってしまうというアイデアは、歴史的な流れとしてあっていいと考えられます。逆に、実メリットや問題点を検証する取り組みがあって初めて、少しハードルは高いですが、複数の小売業者が一つのプラットフォーム上で協力して、ステップアップしていくという発展シナリオにつながることを意識した方が、日本の場合はいいかもしれません。実際に、そうした動きは始まっています。

ITmedia 旗振り役はいるでしょうか?

堀田 旗振り役になるかは別にして、今その方向を進めているのが政府です。経済産業省は昨年度から、予算を実証実験のために割り当てています。公募をして、応募してくる組織に予算を割り当てるという取り組みをしているのです。その内訳を見れば、どの業界が最も取り組みが進んでいるかがわかります。その中に、家電流通も入っています。メーカーから家電量販店を結んだエンド・ツー・エンドのサプライチェーンの実験が始まろうとしています。

ニワトリとタマゴの問題

ITmedia RFID導入に当たって、技術的な問題点をどう考えていますか?

堀田 1つは、鶏と卵の世界があります。ICタグとリーダーの読み取り精度の問題です。100%読めるわけではない。読むためには物理的な制約があります。同じ向きを向いてなくてはならない、ダンボールの積み方などです。

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