「RFIDの成熟を待ってはいけない。」9月10日、東京で行われているRetail Technology Summit Tokyo 2004で、米Wal-Martの国際RFID戦略担当マネジャーのサイモン・ラングフォード氏は言い切った。
「RFIDの成熟を待ってはいけない。」9月10日、東京で行われているRetail Technology Summit Tokyo 2004で、米Wal-Martの国際RFID戦略担当マネジャーのサイモン・ラングフォード氏は言い切った。Wal-Martは、2005年1月、主要100プラス37社のサプライヤーに、ケースおよびパレットレベルでRFIDを貼付して取引する体制をスタートさせる予定だ。
日本では西友に資本参加している同社。今後、「世界の状況を見ながら日本でもRFIDの導入を検討していく」という。
同氏は、バーコード技術が成熟するのに10年以上を要したことを反省し、(次世代バーコードとも呼ばれる)RFIDでは同じ事を繰り返してはいけないと話す。現状、ICタグの単価が高い、RFIDシステムを使わなければ成長しないというニワトリとタマゴの問題など、技術面、運用面ともにさまざまな課題があり、堂々巡りをする傾向もあるが、「ボーイングやターゲット、米国防総省、Metro」など、RFIDを導入する企業が世界中に出始めており、状況が変わってきている」(同氏)という。
例えば、ICタグの単価は半年前の半分になり、逆に機能は改善しているという。具体的には、パレット上のすべてのケースを読み取るにあたり、かつては40%だったが、現在は100%に近づいている。また、日本の響プロジェクト発足(関連記事)のきっかけとなった米国における「5セントICタグ」計画に関して、同氏は、2006年の4月には、5セントが実現するとしている。
「多くのチップメーカーが今後、EPC対応のICタグを作るだろう。半導体メーカーのキャパシティには余裕があり、それが今後のICタグの単価を引き下げていくと考えられるため、5セントタグの実現は早まるかもしれない」(ラングフォード氏)
RFIDに用いられるコードの問題で、「EPC Globalが唯一の標準団体」と同氏は位置づける。だが、日本には、EPC Global Japanのほか東京大学の坂村健教授が推進するユビキタスIDセンターが存在している状況で、EPCといかに共存するかという点で物議を醸している。
だが、Wal-Martだけでなく、世界中のリテイラーがEPCをグローバルタグと位置づけようとしている限り、今後、製造業など各サプライヤーがEPCに対応していくのは確実。国際物流の観点から言えば、日本においても標準の統一、または効果的な共存の道を模索する必要がありそうだ。
「すべての業界でEPCを採用するべきだ。皆がバラバラの技術で進んだら、リテイラーもサプライヤーも、そして、消費者も幸せになれない」(同氏)
一方、同氏は、各メディアの報道について、「Wal-Martが言っていないこと」を挙げた。
RFIDの効果を最大化するというゴールを達成するために、「関係するサプライヤーやリテイラー、競合相手とも情報を共有しなくてはならない」(同氏)。垣根を越えた協力体制ができつつあるのが米国の小売業界の現状。この点が、RFIDの導入の進捗を左右するにあたっての、日米の最も大きな違いと言っていい。
ただ、日本でも7月26日、EPCの普及を進めているEPC Global Japan(流通システム開発センター内の組織)が、慶應義塾大学の村井純教授を中心とするAuto-ID Lab.(旧Auto-ID Center)とともに、「EPC RFID FORUM」を開催、EPC採用を進める動きが出ている。
ラングフォード氏は、RFID利用において懸念されているプライバシー問題にも触れ、「顧客のプライバシーには気を使っている」とした。
例えば、いわゆるスマートシェルフにおいて、棚にある商品を顧客が手に取り、それを棚に戻した場合、その顧客が誰かという情報は分からない。顧客が(RFIDに対して)フィルターをかけないように、RFIDが何なのかを説明する努力もしていくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.