RFID前夜:ICタグの真骨頂「アンチコリジョン」

RFIDの特に大きな特徴は非接触性と、もう1つが、複数のICタグを同時に読み取れる「アンチコリジョン」にある。これは、RFIDが現在のバーコードに取って代わろうとしている最大の要因だ。

» 2004年09月15日 03時25分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 RFIDの特に大きな特徴は非接触性と、もう1つが、複数のICタグを同時に読み取れる「アンチコリジョン」にある。これは、RFIDが現在のバーコードに取って代わろうとしている最大の要因だ。バーコードの場合、手でリーダーをかざして1つひとつの商品のバーコード面を読みに行かなくてはならず、小売業のレジ業務ではどうしても時間的に負担になってしまう。

 一方、RFIDを利用し、複数の商品が入ったカゴをそのままリーダ/ライタで読み取れば、一発で合計金額が出て決済までできてしまう。数年前、男がスーパーマーケットでたくさんの商品を抱えて、堂々と正面玄関から外に出るという設定のテレビCMをIBMが流していた。

 これは、RFIDシステムにより、男が持つ商品すべてが読み取られ、決済はクレジットカードで行うので、スーパーマーケットではレジに並ぶ必要がないという技術を示すストーリーになっていた。

 一見、万引きしているようにも見えるこの男だが、実際にはその逆。RFIDシステムによって商品が単品管理されていれば、小売店舗は万引きを防止することができる。実際、カミソリの替刃の1つひとつにICタグを貼付するとうたった米Gilleteも、万引き被害の防止をRFID導入の目的と説明している。

 ただし当時、実際にこれを実現するまでには技術が発達しておらず、「テレビCMで見たあのシステムは本当に実現できるんですか?」という問い合わせがIBMに多数寄せられたという話もある。

極端に時間がかかる

 では、実際にこうしたシステムを構築するのにはどんな問題があるのか? ICタグを貼付している商品の素材などの問題(関連記事)以外にも幾つか考えられている。

 1つには、同時読み取りをする際にかかる時間だ。「アンチコリジョンを行う性能如何では、1枚を読む場合と比較して(複数のタグを読む場合は)何十倍もかかる」(財団法人 流通システム開発センター)という。

 また、もう1つの問題は、ICタグの特性によるもので、通信距離内に入ると、ランダムにリーダ/ライタがICタグを読み込んでしまう可能性があること。つまり、一度決済が済んだものや、他店で買った商品さえも読んでしまう可能性がある。ただし、これについては、一度決済が終わった商品は、タグを外したり、タグのデータを消すといった運用をすることで避けることができると言われる。

EPCを使う方法も

 では、読み取り速度が遅いという問題は今後どのように解決されるのか。

 まず、重量の検知や、光学的な方法を使うなど、読み取るときに他の情報を併せて検知することで、精度を上げることができるという。現在、新たな読み取り方式や多重化処理により、同時読み取りの処理時間は確実に短くなってきており、数年以内には、データ長100bits程度のICタグを読み込むケースで、秒速1000枚以上という速さが実現すると言われている。

 また、日本では、慶應義塾大学の村井純氏が率いるAuto-ID Lab.の研究成果を踏まえて、EANとUCCが共同で組織したEPC Globalが推進するするEPC(Electric Product Code)を利用する方法が考えられる。これは、データサイズとして軽い(96〜128bits)EPCのみをリーダで読み取り、そのIDとヒモ付けて管理されているサーバ上のデータを取得してシステムを運用する方法。ICタグ自体が保持するデータが小さいことで、システムのパフォーマンスを維持することができる。

 一方で、中長距離用のリーダ/ライタを利用することで、現状では1秒でパレット上の50程度のケースを読み取れるという。3〜4年後には100ケースの読み取りも可能とも言われる。

もう1つの特徴は「書き込み可能」

 さらに、ICタグの特徴として、タグ自身に情報を書き込むことができることが挙げられる。現在、書き込みにかかる時間は、読み取りの3倍以上。また、UHF帯や2.45帯のICタグにデータを書き込む場合、有効距離は読み取りの3分の1程度になる。今後のICチップの性能向上により解決が見込めるが、現状を踏まえた上での運用ルールを考える必要もある。

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