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» 2004年09月16日 11時56分 UPDATE

インフラと仲のいいP2Pを作るには?

日本ソフトウェア科学会のチュートリアル「P2Pコンピューティング−基盤技術と社会的側面−」では、増加し続けるP2Pトラフィックにどのように対処するかという実務的な観点からの指摘もなされた。

[高橋睦美,ITmedia]

 「P2Pはネットワークを非常に効率的に使う技術だが、裏を返せば、ネットワークを効率的に食いつぶす技術でもあるということだ」(NTTサービスインテグレーション基盤研究所の亀井聡氏)。

 日本ソフトウェア科学会が9月14日に開催したチュートリアル「P2Pコンピューティング−基盤技術と社会的側面−」では、P2Pソフトウェアの法的側面について議論が交わされたが、同時に、P2Pの登場以降増加し続けるトラフィックにどのように対処すべきか、という実務的な観点からの指摘もなされた。

トラフィックパターンに大きな変化

 亀井氏によると「インターネットの原点はそもそもP2P型」だ。その後、Webの登場によって急速にクライアント/サーバ化が進展したが、ユーザーやコンテンツの急増によって、このモデルではスケーラビリティに限界が見えてきた。その限界に対して「P2Pは有効な解決策になりうる。そう考えると、インターネットの発展形態としてはそんなに変な方向ではない」(同氏)。

亀井氏 NTTサービスインテグレーション基盤研究所の亀井聡氏

 だが、各ノードが対等に通信するというP2Pの特性ゆえに、トラフィックパターンには大きな変化が生じている。単純にトラフィック流量が増大するのはもちろん、質的にも変化が見られるというわけだ。

IX JPNAP(IX)で計測したトラフィックからも増加の傾向は見て取れる。もちろん、この数値だけで判断を下すのは危険だ

 たとえば、あるISP傘下のユーザーが人気の高いコンテンツを公開すれば、これまでほとんど問題視されてこなかった上り方向のトラフィックが急増する。考えてみれば当たり前のことだ。

 また、ボトルネックの場所も変化している。かつては、アクセス回線やWebサーバなど、比較的ユーザーに近い場所がボトルネックとなっていたのに対し、P2P登場以降はそれがどんどん上流にさかのぼっており、「ネットワーク的に弱いところが悲鳴を上げている」(亀井氏)。さらにP2P技術が普及すれば、「どこがボトルネックになるか分からないず、管理上お手上げ」とも言う。

 その上「トラフィックが集中するような箇所が存在しないため、全貌を把握するのが非常に困難になっている」(同氏)。

 しかし、トラフィックの増加は現実の問題だ。いったいどのような対策が考えられるだろうか? まずは回線の増設が挙げられるだろうが、「技術的、コスト的に追いつかない」と亀井氏。その上、サービスの公平性という観点からも、サービスプロバイダーとしてはなかなか増強に踏み切りにくいという。

 亀井氏はこういった問題点を踏まえたうえで、「ISPのビジネスモデル」「Webに最適化されている現状のネットワークの構造」に対する再考に加え、「P2Pアプリケーションのつくり」にも検討が必要ではないかと述べた。

 特に、現行のP2Pアプリケーションはとにかく速くコンテンツを収集することを念頭において設計されており、下位レイヤーのネットワークのことをほとんど視野に入れていない。そこで、1つのアイデアとして、アプリケーションと連携した制御を可能にするようなプロトコルの標準化が考えられるという。

 またこうした標準化がなされれば、マルチキャスト技術がそうだったように、ネットワーク側でP2Pの効率化、最適化が図られる可能性もある。今後、社会的に受け入れられるコンテンツがP2Pで流通するような状況に備える上でも、どういったインフラの作り方をするかを考えるのは必要なことだと亀井氏。そうなれば、「ネットワークのことも考えた、インフラと仲のいいP2P」の実現が期待できるだろう。

そもそも「P2P」とは何だ?

 今回のチュートリアルのテーマはP2Pだが、P2Pについて議論するには、そもそも「P2Pとは何か」についての共通理解が必要だ。

 ノードとノードが直接通信を行うという、クライアント/サーバ型に対比するアーキテクチャとしての「Peer-to-Peer」ならば、決して新しい概念ではない。登場は1980年代にさかのぼり、UUCPやMacintoshのLocalTalkもそのカテゴリに分類できる。

 では、「Peer-to-Peer」と、Napsterの登場以降頻繁に――時にはやや過剰と見えるほどに――用いられるようになった「P2P」との違いは何だろうか? 集中的なサーバが存在せず、末端ノード間が直接通信するという技術的な性質が、「人と人とを直接結びつける技術として、社会的な意義を見出した」ところにあるのではないかと、産業技術総合研究所の首藤一幸氏は述べた。

 また同じく産総研の高木浩光氏は、非集中型でアドホック的というP2Pの特性を踏まえたうえで、「管理不能であり、プライバシーを侵害するようなコンテンツがいったん放流されてしまえば、本人でさえ削除できない」といった問題点を指摘した。

 いずれにしても、この「P2P」ならではの特性を踏まえた上で議論を進めていくことが必要だろう。

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