インターネットVPNの新常識――導入のトレンドを探る

ソニーが法人向けに提供するbit-driveの各ソリューションは着実にユーザーを増やしているが、その一方でいまだ専用線やフレームリレーを使う企業は多数存在する。今、インターネットVPNを企業はどう感じているのか? 

» 2004年11月01日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ソニーが法人向けに提供するbit-driveの各ソリューションは着実にユーザーを増やしているが、その一方でいまだ専用線やフレームリレーを使う企業は多数存在する。今、インターネットVPNを企業はどう感じているのか? ソニー PSBGネットワークサービスセンター 通信サービス事業部 営業部の工藤孝之氏と、営業技術グループの平山智史氏にベンダー側から見たインターネットVPNの現状について聞いた。

今回お話を聞いた平山氏(左)と工藤氏(右)

ITmedia インターネットVPNは、登場から月日もたち、それなりに「枯れた」技術となりました。今、ユーザーはインターネットVPNのどこに魅力を感じているのでしょうか。

工藤 4年前からこのサービスを開始し、今現在、数千社が利用されています。ここで、お客様が気にされるのはやはり料金的なメリットです。

 例えば、専用線は64Kbpsでも一般的に6、7万円のコストがかかりますが、インターネットVPNはVPN装置の料金を含め、回線がADSLの場合は最小1万円台から、光回線でも最大100Mbpsの帯域で1万円台から多めに見積もっても3万円台で利用できます。インターネットを利用することの圧倒的なコストメリットについては、ユーザーも理解していると思います。

「インターネットVPNの圧倒的なコストメリットは疑いようがない」と工藤氏

ITmedia 現実問題として、100Mbpsもの帯域は必要ないのではないでしょうか。

平山 確かに現時点でこれほどの帯域を必要とする企業は少ないです。しかし、将来への拡張性、例えばテレビ会議システムなど映像系のデータを乗せたいといったときにも、回線を変えることなく対応できることは将来的な投資という観点から考えても有効です。

ITmedia 東京が本社で、地方の支店をインターネットVPNで結びたいという要望は多そうですが、地方になると、専用線はおろか、Bフレッツなども利用できないことがあります。そういったときにはどう対応するのですか?

工藤 通信事業者が乱立するなかで、ユーザーは何を選ぶのが自分たちにとって最適か分からない状態におちいっています。わたしたちは、回線を含め、ユーザーの環境に最適なものをお調べし、提案しています。仮にADSLを提案する場合でも、それがお客様の要望を満たせることを確認した上で提案します。回線のことを熟知しているのもわたしたちの強みです。

ITmedia 一般的に、どれくらいでbit-driveのサービスを導入できますか。

平山 わたしたちはこれまでの経験から回線の調整や物品の調達、設置フローなどを確立しており、回線が引ける状態であれば、構築までの期間は1カ月程度です。一般的なSIerと異なり、回線からネットワーク機器までワンストップで提供できるのがbit-driveの強みです。

「回線からネットワーク機器までワンストップで提供できるのがbit-driveの強み」と平山氏

ITmedia インターネットVPNの導入にあたって、ユーザー側ではどんなことに目を向ければよいのでしょうか。

平山 ユーザー側で昔から使っているルータや、LAN側のシステムをできるだけ変更することなく移行できるよう、事前に綿密な打ち合わせを行いますので、移行時の負担はかなり取り除かれると思います。最近はインターネットVPNの導入にともないLAN構築も依頼されるユーザーも増えていますが、その場合もSIerと協力する形で期待に沿えるようにしています。

ITmedia SIerなどに負けていると思われる部分はありますか。

平山 LANとWAN両方の構築・保守に関する部分や、DigitalGateでは実現できない機能をお客様が希望された場合には、マルチベンダー型のSIerが有利な面もあるかもしれません。しかし、bit-driveのサービスメニューにこれらを加えるというよりは、ソリューションを持っているSIerを巻き込んで一緒に提案する方向性を考えています。

ITmedia 今、ユーザーから寄せられる要望のトレンドはどのあたりでしょう。

平山 FeliCaなどのICカードを絡めたソリューションへの期待も高まっているようですが、それ以上に回線と機器の冗長化や監視などの保守の充実を求められるユーザーが増えています。

工藤 コストメリットは分かるが基幹業務系では使えないだろうと悩まれている担当者の声はよく耳にします。もちろん、金融業などの場合でインターネットVPNをお勧めできないケースは確実に存在しますが、サービス業や製造業の業務アプリケーションなどでは、よく話を聞くと移行できる場合もあります。わたしたちも必要であれば、業務システムを構築したSIerに話を聞くなどして、解決のために尽力しています。お話だけでもさせていただければ期待に応えられることは多いのだろうなと思います。

ITmedia きめの細かいコンサルティングをアピールされていますが、一般的なSIerであれば、コンサル、設定、作成といった部分でお金が必要ですが、この部分のコストはどうなるのでしょう。

工藤 レンタルメニューということで初期設定費用に含んでいます。法人向けのサービスであるため、満足していただけないと即解約ということにつながります。このため、ユーザーの規模に関わらず、十分に確認しながら進めていくことで、契約期間の縛りがなくても長く使っていただけるよう顧客満足度を高めるようにしています。

 わたしたちがSIerと違うのは、わたしたちは回線事業者であるということです。回線を長く使ってもらうためにどうすればよいのかを考えた結果がこのソリューションであると自負しています。一般的なSIerのように、毎月の保守料を下げるために導入時のコンサルティングの料金を積まなければいけないというゆがんだ構造にならないことが支持されている理由の一つではないでしょうか。

ITmedia 今後、導入を検討しているユーザーに対し、何かアドバイスなどはありますか。

工藤 ネットワークの世界は移り変わりの激しいものです。1、2年前に導入したネットワークが今最適であるとは言いがたい状態です。ネットワークの知識が乏しいと、そのあたりを見極めにくいものですが、わたしたちはインターネットVPNのメリットもデメリットも伝え、その上で最適なものを作るための手助けができればと思います。


 bit-driveでは、インターネットVPNの導入を考えているユーザーに対応すべくコールセンターを設けている。インターネットVPNに関しての疑問や、自社に導入する際に考えるべきことなど、総合的なアドバイスを受けることができる。現在のネットワーク環境が適切なものであるか、一度確認してみるのもいいだろう。

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