日本陸運産業がCRYPを用いて実現したセキュアなリモートアクセス
 危険品物流の国際的リーディングカンパニーとして知られる日本陸運産業に聞く。ソニーが法人向けに提供する「bit-drive」の導入により、高コストなフレームリレーからの乗り換えを図ると共に、セキュアなリモートアクセスまでも実現している。
■導入サービス
WAN回線 某社フレームリレー

bit-drive光ファイバー100M接続
拠点間接続 某社フレームリレー12拠点

bit-driveインターネットVPN 12拠点
リモートアクセス 某社リモートアクセスVPN

FeliCaを用いたリモートアクセスVPN "CRYP"

導入企業”危険品物流の国際的リーディングカンパニー”日本陸運産業

 日本陸運産業は1946年の創立以来、石油製品、化学品を中心とした物流業のほか、ISOタンクコンテナ、IBCsなどの物流機器の賃貸、保管配送などの事業を展開してきた。


「日本の法規制を国際的なものに合わせていく努力をこれからも惜しまない」と話す取締役業務本部長、田久保博氏

 規制緩和が叫ばれる物流業界では、生き残りをかけた熾烈な争いが続いている。タンクコンテナのリースや危険物の倉庫業では国内最大のシェアであり、物流業でもトップシェアを争う同社も、1990年以降は英インターフロー社を買収するなど海外拠点を複数設立し、グローバルでの国際複合輸送事業を展開するなど競争力強化に向かって大きく前進している。

「弊社の歴史は日本の法規制を変えていく歴史だっだといえるかもしれません。日本の法規制と国連の法規制との整合性を取っていくことが、危険品物流の国際的リーディングカンパニーとして活動する弊社に求められている」と、取締役業務本部長でインターフロー社の取締役社長でもある田久保博氏は説明する。

フレームリレーからの脱却を図る

 グローバルな国際複合輸送事業を手がける日本陸運産業では、現地法人など、世界各地の拠点とデータをやり取りする方法としてフレームリレーを利用していた。また、国内も一部の小規模オフィスを除いて、フレームリレーで構築していたという。

 しかし、業務内容に広がりが出るにつれ課題も生じてきた。将来を見据えた柔軟な経営体制を構築する上で、帯域面やコスト面など不十分な点がいくつか出てきたのである。業務を円滑に行うため、また、経営判断を迅速に行うため、それまでのオフィスごとのシステムから、統合されたシステムが求められるようになってきた。

「帯域の細さをツールでカバーしようとした時期もありました。センターと拠点という両端に位置するルータに配置することでパケットの圧縮を行うという触れ込みの製品を試してみたのですが、やはり物理的な回線が細いこともあり劇的な効果はありませんでした」(業務本部システム開発部、辻穣氏)

 そこで、海外拠点に対するサービス品質の低下を回避し、さらにシステム全体の運用コストの削減、データ増大に対応できる拡張性を備えたネットワークへの移行が検討されることになった。

24時間×365日体制のサポートが導入の決め手に

 次期ネットワークは、2002年夏ごろからソニーを含めた数社に提案を受けたが、帯域は光ファイバー以上という必要条件があったことで、この段階でベンダーはかなり限定されたという。そして最終的に同社が導入を決めたのは、ソニーが法人向けに提供するブロードバンド・ソリューション&サービス「bit-drive」の「DigitalGate VPNプラス」。2002年10月のことだった。

「DigitalGate VPNプラス」では、bit-driveのブロードバンド回線をバックボーンに提供する。この広帯域かつ経済的なインフラと、VPN構築に不可欠なIPsec対応VPNルータのレンタル/各種設定・保守サービスが組み合わせて提供される。


「24時間×365日のサポートが導入の決め手」と語る業務本部システム開発部部長の藤本実樹氏

 このときは、bit-driveが提供する法人専用の光ファイバ接続サービス「ファイバーリンク pro IP8」をセンター側に導入し、各拠点側が「ファイバーリンク pro IP1」を採用したという。また合わせて、センター側にアプライアンスサーバ「DigitalGate」、各拠点側にはIPsecに対応したルータ「DigitalGate VPNプラス」を導入することで、インターネットVPNを構築した。

 導入の理由を業務本部システム開発部部長の藤本実樹氏はこう話す。
「ソニーのソリューションを選択した理由は、短期間に導入可能で、初期投資も抑えられること。また、サポートも魅力だった。障害対応では、ソニーがこれまで法人専用ISPのビジネスで培ってきたノウハウを投入し、センター拠点、および各拠点側を24時間×365日サポートしてくれる。こうしたサポートの実績を評価した」

 検討段階では、IP-VPNも候補に挙がっていた。しかし、トライアルを行う段階でコストがかさんでしまうことがネックになったという。「テストをするにしてもルータ1つで100万円、と言われては腰が引けてしまう。インフラを変えるということは、ある程度リスクがあると理解していてもこれでは検討すらできない。しかし、bit-driveは数万円の料金で導入できてしまうため、この部分の障壁は感じなかった」(藤本氏)

■ネットワーク概略図

■スループット
  VPNスループット(3DES暗号化時) ファイアウォールスループット
DigitalGate FTP測定値 45Mbps 80Mbps
SmartBits測定値 56Mbps 100Mbps
VPNプラス FTP測定値 5.0Mbps 61Mbps
SmartBits測定値 6.0Mbps 82Mbps
※各スループット値は、いずれもDigitalGate対向における弊社テスト環境での測定値


「フレームリレーと比べて高いパフォーマンスを得られた」と話す経営企画室次長の東海林武氏

 導入後は、国内に存在する各拠点から多くの好意的な意見が寄せられたという。
「導入してみて感じたのは、パフォーマンスの高さです。光ファイバーを足回りにしていることもあるのでしょうが、フレームリレーの時代は、WANでの通信だと明らかに速度の低下を感じたものでした。今はWANでもLANに近い体感速度が得られていますので、業務効率が飛躍的に向上しました」と経営企画室次長の東海林武氏は期待以上の効果に驚きを隠さず話す。

 しかし、現在はまだ全拠点に同サービスが導入されているわけではない。業種の特性上、拠点が繁華街から離れた場所にあることが多く、ネットワークインフラが整備されていない拠点も多いのがその理由だ。「現時点でも、国内の16拠点のうち、4〜5カ所は光回線はおろか、ADSLも来ていない状態」(辻氏)としながらも、ADSLに妥協することなく、光回線が導入可能になった時点で、これらの拠点にもbit-driveを導入していくつもりであるという。

フレームリレーとの置き換えでさらなるコスト削減を目指す


「単純なコスト比較は難しいが、それでも従来から激減した」と話す業務本部システム開発部、辻穣氏

 一時はフレームリレーを全て廃止し、インターネットVPNだけでインフラを構築するという案もあったという。しかし、海外では足回りの回線が非常に弱いことがざらにあるため、一定レベルの帯域を確保するため、まだフレームリレーを残さざるを得ない部分があるという。しかし、部分的ではあれbit-driveを採用したことで、フレームリレー一色のシステムと比較して、初期投資/ランニングコストを合わせて、コストを大幅に削減することに成功したという。

「例えば、jpドメインからukドメインに飛ぶ際のルータのホップ数が非常に大きいため、インターネットVPNを組んだとしても実行速度ではフレームリレーと変わらないことも珍しくありません。そのため、弊社でもまだフレームリレーから完全に移行できないのです。

 フレームリレーではパーシャルメッシュ構成を採っている場合、部分的な置き換えではメッシュが残ることがあることもあり、単純なコスト比較は難しいのですが、それでも従来に比べ、ネットワークの部分にかかっていた費用は激減しました」(辻氏)

リモートアクセスのASP化を推進

 こうして各拠点をインターネットVPNによって結ぶという第一のミッションは完了した。しかし、よりビジネスの効率化を進めるため、メスを入れるべき部分がもう一つ存在していた。リモートアクセスの部分である。

 日本陸運産業では、営業の人間や長期にわたって出張する人間に社内ネットワークにあるリソースを使わせるための方法として、一昔前はダイヤルアップでサーバに接続していた。その後、支社管理のため、VPNサーバも立てていたが、専任の管理者がいないため、管理しきれないという状態であった。こうした管理は、専任の担当者がいたとしても相応の負担がかかるものであることから、同社としては、頭の痛い問題だった。

 このような問題を抱えていた日本陸運産業は、IPSec VPNで高いセキュリティ実績を持ち、非接触ICカード「FeliCa」を利用した個人認証までサポートする”CRYP<クリプ>”に目をつけた。CRYPでは、専用のクライアントソフトと「FeliCa」を組み合わせることで、セキュアなリモートアクセスを可能にする。また、ASP形式のサービスのため、多大な設備投資を行うことなく、初期投資を抑えた形で安価にセキュアなネットワーク環境を構築できるのが特徴だ。

「初期費用や月額のコストも微々たるものであったことから、気負わずにトライアルに進むことができた」と辻氏は話し、2004年2月からシステム部の人間を中心に約30アカウントでトライアルを行ったという。

 トライアルでは、一部パーソナルファイアウォールソフトとの相性が悪いことと、専用クライアントソフトが国内での使用を想定して作られているため、英語圏での使用時に少なからず問題が発生することなどの問題が発生したが、いずれも要件定義外の部分であったことと、利用者からの手ごたえが非常に良好だったことを受け、現在のユーザーから一般社員にアカウントを振り替える形でそのまま導入の運びになる見込みだという。今後の方向としては、現在の約30アカウントから、業務上必要であれば営業の人間を中心に全社的な導入を検討していく段階だとしている。

 また現時点では、CRYPのサービスとして利用可能な無線LAN認証は使用していないという。「今後、社内のPCがデスクトップからノートパソコンに変わるのであれば、そういった機能を活用することで、机に縛られない自由なビジネス環境が構築できるかもしれない」と辻氏はオフィスレイアウトの革新にも期待を膨らませる。

インフラ作りから次のステップへ

 日本陸運産業では今後、コンピュータ連携の整備による情報共有の促進、社内の無線LAN導入による作業の効率化など、競争力の強化を目指した計画を立てている。国際間のネットワークは従来のフレームリレーを残さざるを得ない部分があるとはいえ、国内は足回りの状況次第でフレームリレーを廃止していく考えだ。

「原材料の輸送は減ってきたとはいえ、高付加価値の製品を作る場合に、中規模以下の原料の輸送がなくなることは、国際分業の観点からも考えにくい。そうした状況でシステムはアクティブな情報を活かすため、集中化の流れになっている。日本にいながらにしてグローバルの流れをつかめることは、専門性を高め、高品質なサービスを提供するための必須条件」と田久保氏が語るように、これまで培ってきた在庫管理や流通管理、そしてEDIによる受発注システムのノウハウを最大限生かすインフラを手にしたことで、日本陸運産業は今、次なる高みへと登ろうとしている。

【参考】CRYP(クリプ) スタートアップソリューション例

【イニシャルコスト 初期導入費用】
    \30,000-(一律)
【ランニングコスト 月額費用】
    \ 9,000-/10ライセンス
    \18,000-/20ライセンス
    \27,000-/30ライセンス

【その他費用 (変更手数料)】
    \5,000-/変更回数(ライセンス数の増減など、登録情報に変更のある場合)
【費用例:30アカウント導入の場合】
    初期費用:\30,000-
    月額費用:\9,000-/10ライセンス×30ライセンス=\27,000-/月
【CRYP(クリプ)構成図】

[ITmedia]

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