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» 2011年11月29日 09時30分 UPDATE

クラウド最前線:クラウド導入に潜む“落とし穴”とは?――ガートナーに聞く

企業がクラウドサービスに寄せる期待は年々高まっていると言われるが、実際の導入はそこまで進んでいないのが現状だ。クラウド化が検討段階で止まってしまう企業にはどのような課題があるのか。ガートナー ジャパンの亦賀忠明氏に聞いた。

[本宮学,ITmedia]
photo クラウドコンピューティングの利用・検討状況(出典:ガートナー)

 クラウドには企業のシステムを迅速に展開したり、コストを削減したりする効果があると、これまで多くのITベンダーなどによって叫ばれてきた。これにより、急速に普及するかのようにみられたクラウドだが、実際の導入事情はそれほど順調ではないようだ。ガートナー ジャパンが8月に実施した調査における「クラウドサービスを現在利用している企業は全体の10%程度に過ぎない」という結果が、この事実を裏付けている。

 このことについて、ガートナー ジャパンの亦賀忠明 リサーチ部門ITインフラストラクチャ バイスプレジデント 兼 最上級アナリストは「ユーザー企業がクラウドのメリットを具体的にイメージしづらいという問題が、クラウド導入を妨げる原因になっている」と指摘する。

 「現在、“クラウド”と名のつくサービスが国内だけで1000以上ある。その中でユーザーはどのクラウドサービスを選択すればいいのか分からないし、どのクラウドサービスを導入すればどのようなメリットが得られるかも分からない状況になっている」(亦賀氏)

 クラウドサービスのメリットとしてしばしば挙げられてきたコスト削減効果は、主にパブリッククラウドについて言われてきたものだろう。同社が8月に実施した調査「クラウドコンピューティングへの期待と懸念」によれば、ユーザー企業がクラウドに期待するメリットの1位は「コストの削減」(60%超)だったものの、懸念点として「予想よりコストを削減できないかもしれない」「既存よりもコストが高くなるかもしれない」がそれぞれ40%以上という結果だった。

photo クラウドコンピューティングへの期待と懸念(出典:ガートナー)

 ユーザーはクラウドにコスト削減効果を期待する一方で、実際にコスト削減効果を得られるかは疑問視している――こうした「矛盾」こそが、企業のクラウド導入率が伸び悩む最大の原因になっていると亦賀氏は指摘する。

クラウドのメリットを正しく把握するためには?

 亦賀氏は、ユーザー企業の多くがこのような矛盾に陥ってしまう理由の1つとして、既存の業務内容をクラウド上でそのまま展開しようとしてしまうことを挙げる。

 「既存の業務をそのままクラウド上に移行するのであれば、クラウドを活用する意味がないし、かえってオンプレミス(自社運用)のインフラよりもコストが高くついてしまう可能性がある」(亦賀氏)

 亦賀氏によれば、「システム稼働までの時間短縮」「コストの抑制」といったクラウドのメリットは、あくまでクラウドサービスを1つのパッケージだと考えてそのまま利用した場合に得られるものだという。だが、自社の業務に合わせてクラウドサービスをカスタマイズしようとしてしまうことで、結果的にコストや手間が発生し、クラウドの本来の利点を殺してしまっている企業が少なくないとのことだ。

 それでは、企業がクラウドのコスト削減などのメリットを得るにはどうすればよいか。「業務は変えてはならない」という固定観念を捨て、場合によっては業務のあり方を変えながら割り切ってクラウドサービスを利用することが求められると亦賀氏は指摘する。また、どのような業務のシステムをクラウド化すべきかは、業務要件を個別に検証した上で判断していく必要があるという。

photo 業務要件の振り分け図(出典:ガートナー)

 これまで日本企業では、業務要件の異なる複数のシステムを「基幹系かどうか」「ミッションクリティカルかどうか」といったあいまいな視点で一緒くたに議論してしまうことが多かったと亦賀氏は指摘する。クラウドの導入に当たっては、各業務のシステムについて「個人情報が含まれるか」「カスタマイズが必要か」「どの程度の稼働率が必要か」といった要件を個別に見直していくことで、各システムをクラウド化するメリットや、クラウド化すべきかどうかといったことが把握できるようになるという。

 「例えば年間に数回しか稼働しないシステムならば、パブリッククラウドを利用して必要な時だけリソースを獲得するようにすることで、インフラ調達や維持のコストを削減できる。これは、普段クルマに乗らない人なら必要なときだけレンタカーを借りたほうが購入するより安く済むのと同じことだ。企業はクラウドを万能の“魔法の杖”だと思いこむのではなく、業務を今一度見直すことで『これはレンタルでもいいのでは』というシステムを見極めていくことが重要だ」(亦賀氏)

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