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» 2004年11月08日 14時44分 UPDATE

欧州オープンソース動向第一回:EUと各国政府の支持を受けるオープンソース

欧州OSSに関わるキーパーソンに取材を行い、欧州におけるOSSの現状や人気の秘密、課題を探る同特集。第一回は、欧州政府のOSS採用の現状について見ていこう。

[末岡洋子,ITmedia]

 リーナス・トーバルス氏は北欧のフィンランド大学在籍中にLinux最初の「公式」バージョンであるバージョン0.02をアナウンスした。1991年10月のことだ。その後、Linuxはあっという間に世界に広がり、一大ブームを巻き起こす。単なる低コストなソリューションというだけでなく、基幹用途や組み込み分野、さらにはデスクトップへと進出し、Microsoftを脅かす存在となった。

 トーバルス氏はその後、アメリカ在住となったが、Linuxを初めとするオープンソースソフトウェア(OSS)は欧州と相性がよいようだ。現在、ミュンヘン市など各国政府の大規模な導入プロジェクトが世界的に報じられているが(関連記事参照)、政府、そして民間企業でもLinuxの採用は進んでいる。その背景は、単なるコストや安全性以上のものがありそうだ。

 今回、欧州OSSに関わるキーパーソンに取材を行い、欧州におけるOSSの現状や人気の秘密、課題を探ってみた。

デスクトップLinuxは欧州から、政府主導で進行

 欧州におけるOSSを語るとき見逃せない特徴として、政府など公共機関の動きがある。この部分は、事例などの形で実績が積み重ねられた時点でようやく検討をはじめる日本とは大きく異なる。欧州のIT事情に強い調査会社の英Ovumで政府プラクティスディレクターを務めるエリック・ウッズ氏、シニアアナリストのローレント・レッチェル氏の両氏に会い、欧州政府とOSSの関係について分析してもらった。

 まずウッズ氏は、欧州政府のOSS採用の現状に関して次のように語る。「政府によるOSS採用は、興味段階から実際にプロジェクトに入りつつある。いままさに“モメンタム”を迎えている」(ウッズ氏)。ウッズ氏は、現在特に話題になっているデスクトップOSにおけるOSSの採用プロジェクトを指摘し、「完全に政府主導で進んでいる」という。通常は保守的なことで知られる政府が、民間よりも積極的なOSS支持を示したことは、ウッズ氏らに限らず、誰もが多少驚いているようだった。

 欧州でも電子政府化は政府にとって優先課題。EU(欧州連合)加盟各国はEUによる圧力も受けているが、EUは加盟国IT化の道しるべに調査を実施している。その一環として発表されたのが話題を呼んだレポート「FLOSS(Free/Libre and Open Source Software)」である。2002年に発表された同レポート(オランダのマーストリヒト大と共同で作成)は、OSSの可能性を調査したもので、概して好意的な見解を示している。

 その後EUは各機関の間の相互運用性のためのプログラム、IDA(Interchange of Data between Administrations)を開始、Webサイト内にOSS専用のページ(Open Source Observatory)を立ち上げた。FLOSSが単なる調査であるのに対し、このページではOSSに関する情報の提供や事例研究を行うなど、全面的にOSS支持を打ち出している。このようなEUの姿勢は、各国政府のOSS導入に大きな影響を与えていると思われる。

 それにしても、どうしてOSSなのだろうか? ウッズ氏はコストや技術面でのメリット以外に、次のような内情があると分析する。「まずEUは相互運用性に高い重要性をおいている。それと共通性にこだわる体質が重なり、オープンソースこそとるべき道と思っているようだ」。ここでは触れられなかったが、長期化している欧州委員会とMicrosoftとの独占禁止法訴訟も無関係ではないだろう。

 各国政府の場合、「立場上、独占的な製品を使うことに対する倫理的な抵抗がある。さらに、政府には市場を作る役割りがあり、自国や地域の製品やサービスを利用するという政策的な背景もある」とウッズ氏は説明する。

 一口に政府といっても、アプローチは異なる。ラッチェル氏によると、欧州におけるOSS先進国、ドイツとフランスは政府主導のトップダウンのアプローチをとっているのに対し、比較的親米派(つまり、親Microsoft)の英国やスカンジナビア諸国ではボトムアップでOSS人気が高まったという。ちなみに、ドイツとフランスはそれぞれ、SuSE(現Novell)とMandraksofteという大手Linuxディストリビューターを生み出したことからも、OSSを育む土壌と素養があったといえるだろう。

 同じく調査会社の米IDCのEMEA(欧州・中東・アフリカ)地区でハードウェア調査担当副社長を務めるマーティン・ヒングリー氏は世界レベルで見たLinuxについて、「サーバでは離陸を果たしたが、デスクトップではまだまだ」と見ている。サーバ分野では同社が調査を開始した1999年第1四半期の1%から2004年第1四半期は8%と着実に伸びているが、デスクトップとなると、現在出荷されるPCのうちLinuxを搭載したものは1%。「あと2年は開発期間が必要だ」と述べている。

 ここで、LinuxなどのOSS採用やトライアルを公にしている主な各国政府や機関を挙げると、仏がパリ市、内務省、教育省、設備省、外務省など。独はミュンヘン市、ベルリン市、マインツ市、コブレンツ市、それに連邦財務省など。英国は政府全体のライセンスを取り扱う政府調達省、国民健康保険(NHS)、ノッティンガム市、スコットランド警察、オーストリア・ウィーン市、ノルウェイ・ベルゲン市、伊ローマ市など。報道されたものをざっと集めただけでも、これだけある。

 政策としては、たとえば英国政府の“政府が担当する研究開発プロジェクトはOSSが望ましい”のようなポリシーを多くの政府が打ち出している。中でも、OSSブーム以前から親OSS派で知られるフランスでは、公共機関におけるOSS採用を義務付ける法の制定が検討されたこともあった。


 次回は、Linuxブームの波に乗るベンダーを取り上げる。

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