日本人の「匠」が生きる、HDDからのデータ復旧サービス(1/2 ページ)

ハードウェアトラブルによるものからソフトウェアのバグによるもの、さらにはユーザーの操作ミスによるものまで、HDDの障害はさまざまだ。これら、データ復旧サービスは障害を起こしたストレージを預かって解析し、中からデータを取り出すサービスがある。

» 2004年11月15日 09時00分 公開
[柿島真治,ITmedia]

 ハードウェアのトラブルや事故によってストレージが正常動作しなくなり、データにアクセスできなくなってしまうことがある。もちろん、システム構築時にそのような事態に備えるために、RAIDを導入して耐障害性を高めたり、定期的なバックアップを行うようにする場合がほとんどだろう。

 とはいっても、障害を100%防ぐことは不可能だ。どんなに対策を講じてもデータを読み出せなくなってしまうことはありうる。このような場合、定期的なバックアップを取っておけば、被害を最小限に抑えることができると考える場合が多いだろう。しかし、バックアップのスケジュール次第では、バックアップからのリカバリが非現実的な作業になったり意味をなさない場合もある。

 現実問題として毎日バックアップを取ることは不可能に等しい。仮に可能だったとしても、バックアップを取ってから障害発生までのデータに関しては失われてしまう。もしもその失われるデータがきわめて重要だった場合はバックアップでは回復できない。

 また、バックアップはリストアできてこそ意味があるものだが、多くの場合バックアップを取るだけで安心してしまい、それがリストアできるかどうかを確認しないことがある。いざリストアというときになってバックアップしたテープメディアが読み取り不良を起こしてしまうこともある。これではバックアップを取ってあっても役に立たない。

 このような場合に役に立つのが、データ復旧サービスだ。データ復旧サービスは障害を起こしたストレージを預かって解析し、中からデータを取り出すサービスだ。バックアップと違い、障害を起こす直前のデータを取り出すことができるため、データの喪失という被害を最小限に抑えることができる。

 しかし、システム設計時には「障害を未然に防ぐ」ことは考えても、「障害が発生してしまった」ことを前提にして、対処方法を考えることはほとんどないこともあり、知名度はそんなに高くないサービスといえる。だが、すでに述べたように障害を100%避けることは不可能だ。万が一の被害を最小限に抑える意味でも十分検討に値する。

 このデータ復旧サービスとは実際にどのようなものなのか? データ復旧サービスに関して実績のある「Ontrack DataRecovery Service」を日本で展開している、ワイ・イー・データのオントラック事業部長 浜田賢一氏と技術部長の松尾明氏、営業部長の沼田理氏に話を聞いた。

浜田賢一氏 「持ち込まれるハードディスクの8割は物理的な障害」と話すワイ・イー・データ 常務取締役 オントラック事業部長の浜田賢一氏

障害の内容と程度によって異なるサービス

 ハードディスクの障害にはさまざまなものがある。ハードディスクのハードウェアトラブルによるものから、ソフトウェアのバグなどによるもの、さらにはユーザーの操作ミスによるものまでさまざまだ。これらをどのようにして復旧するのだろうか?

 オントラックのデータリカバリサービスには、障害の内容と程度に応じていくつかのサービスがある。最も簡単なものはオントラックの提供するツールをユーザーが利用して、自分でデータの復旧を行うものだ。これはユーザー側にも知識が要求されるため、軽度の障害に対するものとして提供されている。

 また、操作ミスやソフトウェアバグなどによって、ハードディスク自体は正常だが中のデータが認識できなくなってしまうような論理的な障害の場合、インターネットなどを経由して障害を起こしたディスクの接続されているコンピュータと接続して診断、復旧を行うのがリモートデータリカバリーサービスである。これは迅速な診断と復旧が要求される場合に利用されるサービスだ。

 論理的な障害であってもそのコンピュータに外部から接続できない場合や、ハードウェアのトラブルによる物理的な障害に関してはメディアを預かって調査・復旧を行っている。この場合、まず持ち込まれたメディアを検査して障害の原因を特定し、どのようなデータがディスクから取り出せるかを調べる。このようにして復旧可能なデータのリストを依頼主にまず提示し、実際に復旧作業を行うかどうか依頼主の意思を確認した上で実際の復旧作業を行う。

 これは、データ復旧作業を行ったとしても障害の内容によっては、一部のデータを復旧できない場合が存在するため。依頼主にとって必要なデータが復旧できなければ、復旧作業を行う意味がないので、復旧できるデータを提示し確認をしているとのことだ。

職人芸ともいえる物理的障害からのデータ復旧作業

 操作ミスによってデータを削除してしまったなどの論理的な障害の場合、ハードディスク自体は読み込み可能であるのだから、データの復旧が可能なのは分かる。しかし、ハードウェア的に障害の出たハードディスクからどうやってデータを復旧するのだろうか?

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