ICタグの普及と雇用問題月刊コンピュートピア(1/3 ページ)

ICタグの普及には、いくつかのハードルをクリアしなければならないが、本稿ではいかにICタグが社会に普及していくかを、総務省の調査研究会の報告書を基に考えてみたい。ICタグと雇用問題についても触れてみたい。

» 2004年11月15日 23時04分 公開
[岡崎勝巳,月刊コンピュートピア]

この記事は月刊コンピュートピアから許可を得て転載しています。

 ICタグの普及には、いくつかのハードルをクリアしなければならないが、本稿ではいかにICタグが社会に普及していくかを、総務省の調査研究会の報告書を基に考えてみたい。また、ICタグが普及し効率化が実現すると雇用に影響することが予想される。すでに米国では、解雇を恐れた工場労働者たちがICタグを密かに破壊していたという。ICタグと雇用問題についても触れてみたい。

 ICタグが広く、社会で利用されるためには、ICタグにはシステム構築面での課題が残されている。たとえば今後、多くの企業がICタグを活用したシステムを構築すると見込まれているが、ICタグを高度に活用するには、企業間でICタグに蓄積されたIDデータを相互にやり取りすることが必須となる。

 そのための仕組みを整備するには、データ連携を実現するためのコスト清算の手法を整えることが必要だ。一方、技術的な面では、システム間の情報のフィルタリング処理などに関する課題が報告書に挙げられている。あるICタグのシステムで得た情報をほかのアプリケーションで利用する場合には、使い道に応じて不要な情報を除く必要がある。そのメカニズム、ルールをいかに整備すればよいのかというものだ。

 そもそもICタグはモノを個別認識するための、いわばセンサーにすぎない。そのため用途はさまざまなものが考え付く反面、それらを実現するためには上記のような新たな課題をひとつづつクリアしていく必要がある。

 総務省の報告書によると、ICタグはバーコードの代替としての利用にとどまらず、ネットワークとつながることでICタグが情報の窓口となり、これまでにないビジネスやサービスを創造するという。だが、膨大なICタグの情報をネットワーク上でいかに効率よくやり取りするか、ICタグの利用促進について社会的なコンセンサスをどのように形成すべきかという課題も指摘されているのだ。

 これらの問題をすべて解決できた場合の経済波及効果が前項の31兆円であり、普及が阻害された場合には9兆円にとどまるという。もっとも、アコムやアイフルといった消費者金融専業の市場が約10兆円ということを考えれば、ICタグが大きな可能性を秘めていることに変わりはないようだ。

ICタグはいかに普及するか

 では、はたしてICタグはどのように社会に普及していくのだろうか。そのイメージは報告書内の「利活用高度化マップ」から読み取ることが可能だ。

 図1では縦軸を「利活用ネットワークの広がり」、横軸を「ICタグにひもづく情報の広がり」とし、それらが広まった結果、どのようなサービスが実現するのかを表したものである。

(クリックで拡大)

 利活用ネットワークの広がりとは、ICタグのID情報がネットワーク上でやり取りされるようになることで、単一組織での利用にとどまることなく組織、さらに業界の垣根を越えて情報を高度に利用するようになることだ。いわば、プラットフォームのオープン化と考えればわかりやすく、1.単一プラットフォーム、2.共有プラットフォーム、3.連邦プラットフォームという課程で進むと考えられている。

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