IBMの「Linuxデスクトップ移行計画」はどうなった?

およそ1年前、IBM会長は2005年末までに全社をLinuxデスクトップへ移行させるよう求めた。だが同社は今、それについて「Linuxを使っている社員はいる」と言うにとどめている。(IDG)

» 2005年01月26日 10時12分 公開
[IDG Japan]
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 米IBMの会長兼CEO(最高経営責任者)サム・パルミザーノ氏が、2005年末までに社員をLinuxデスクトップに移行させるよう求めてから1年あまり、同社はオープンソースクライアントに関する発言を大幅にトーンダウンさせている。

 「確定したことで、言いたいことは何もない」とIBMの広報担当ナンシー・カプラン氏は語り、Linuxデスクトップ導入の詳細についてのコメントを控えた。「Linuxを使っている社員はおり、それをやめろと言う人はいない」

 IBMのLinux移行計画は2004年1月に明らかになった。同社CIO(情報統括責任者)のボブ・グリーンバーグ氏が、移行を促進する社内プロジェクト「Open Desktop」を結成してから数カ月後のことだった。

 「当社会長はIT部門、および実際にはIBM全体に、2005年末までにLinuxベースのデスクトップに移行するよう求めた」とグリーンバーグ氏は2003年11月のメモに記している。「これはプロダクティビティ、Webアクセス、閲覧ツールを、同等の技術をベースにしたオープン標準に置き換えるという意味だ」

 IBM幹部は当時、社内に約1万5000台のLinuxデスクトップがあるとし、2004年末までには4万〜6万台のLinuxデスクトップが稼働しているだろうと予測していた。

 同社広報のカプラン氏は、この目標が達成されたかどうかを明かすことは避けた。「4万ユーザーという目標があったかどうか知らないし、4万人の(Linux)ユーザーがいるかどうかも分からない。何ら不可解はことはない。われわれはLinuxを使っている」

 しかし、IBMのLinuxユーザーが社内のサポートスタッフから支援を受けているのかどうかはまた別の問題だ。

 匿名希望のあるIBM社員によれば、同社は自社の標準デスクトップクライアント「Client for eBusiness」のLinux版を開発したという。これはRed Hat Linuxをベースに、OpenOfficeスイートとMozillaブラウザを搭載し、WindowsエミュレーションソフトのWineでLotus Notesクライアントを走らせている。

 IBM社員らはボランティアでLinuxの問題を話し合うための社内IRCチャネルを設けているが、Linuxユーザーは社内のWebアプリケーションを走らせる際に問題にぶつかるかもしれない。こうしたアプリケーションのほとんどはInternet Explorer(IE)向けに書かれており、IEはLinux向けに移植されていない。IBMの社内サポートデスクはIEにのみ対応していると、別のIBM社員は話している。

 「IEを使っていないと、問題が起きたときに大した助けを得られないかもしれない」とこの社員は語る。

 今のところ、IBMのLinuxユーザーの大半は製品開発や研究開発部門の専門的なユーザーであり、自力で十分にやっていける程度の技術的な知識があると先述の社員らは話している。

 情報筋によると、同社はWineを使って数千台のクライアントでLotus Notesを走らせているが、皮肉なことに、社内でWineを利用していても、同社Webサイトに最近掲載されたLinuxクライアントへの移行ガイドでこのソフトを全面的に支持するには至っていない。

 Wineは「What to do if all else fails」(その他の障害時の対策)というセクションで軽く触れられているだけで、Linuxクライアントでアプリケーションを走らせるための「一時的な次善策」であり、「長期的な解決策ではない」と書かれている。

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