行政動向――ユビキタス・ネットワーク社会への対応無線ICタグの可能性 第3部

Open Enterprise Magazineから米国発のRFID利用状況レポート特集を掲載。いまどのような利用状況にあり、どのような課題があるのか? 国内状況との対比が行われている。

» 2005年03月04日 17時16分 公開
[Open Enterprise Magazine]
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RFIDの導入に向けて、日本ではさまざまな産業分野で実証実験が始まっている。各省庁も、IT戦略本部が2003年7月に発表した「e-Japan戦略II」で、ITの利活用に重点を置いた戦略が打ち出されたことを受け、RFIDの普及・促進に向けた取り組みや施策を加速している。情報通信政策を担当する総務省や経済産業省のみならず、国土交通省や農林水産省なども物流や食品トレーサビリティ分野での実証実験を進めている。

グローバル化の波及

米国での利用状況(キャプション内容はPDFにて)

 現在、数多くの企業や業界がRFIDシステムの可能性に注目し、導入可能性の検討を開始している。そのなかでも積極的な取り組みを見せているのが物流分野や流通・小売業だ。これらの業界では、従来からPOSレジや商品データベースによる商品・在庫管理、サプライ・チェーン管理(SCM)などにバーコードを利用してきた。現在の流通・小売業はグローバル化とIT化が急速に進展している業界の1つである。

 たとえば、2005年1月からは、商品コードの国際的な標準化団体である欧州の国際EAN協会(EAN International)と米国の流通コード管理機関UCC(Uniform Code Council)が正式に合併し、「GS1」の新名称で活動を開始する。これにともない、商品に付番される商品識別番号(GTIN:Global TradeItem Number)や、企業/流通拠点を識別する拠点識別番号(GLN:Global Location Number)が国際標準として採用され、世界共通のデータベースを使用した商品情報管理システム「GDSN(Global Data SynchronizationNetwork)」によって、製造業者と小売業者との間でやり取りされる商品情報が一元的に登録/管理されるようになる。

表1■大手小売企業のRFID導入動向[参考:経済産業省、JETRO、流通システム開発センター](表内詳細は、PDFにて)

 米国のウォルマート・ストアーズやターゲット、ドイツのメトロといった大手小売業者が先を争ってRFIDシステムの実証実験を行ない、導入を進めているのは、このような市場環境の変化に対応し競争力を維持するためで(表1参照)、各企業はこれを機に、旧来のシステムを刷新して一気に次世代のシステムへ移行しようとしている。

 これらのグローバル化と国際標準化の流れは、流通・小売業のみならず、モノを扱う製造や運輸、食品、医薬品などの業界にも波及し、ひいては国際競争力にまで影響を及ぼすことになる。ユビキタス社会の基盤づくりこのような状況のもと、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が2003年7月に発表した「e-Japan戦略II」では、それまでのe-Japan戦略で目標としてきたIT基盤の整備がほぼ達成されたとの判断のもとに、第2の段階として、IT基盤の利活用の推進へ重点を移すことになった。情報通信行政を担う総務省は、e-Japan戦略IIの策定と並行して、2003年4月から「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」を開催し、物流、食品、医療などの多様な産業分野で適用が期待されている電子タグ(無線ICタグ)の高度利活用に向けて、総合的な推進方策の検討を開始した。そして同年7月に中間とりまとめを公表し、そのなかで2010年に実現する新たな社会の姿をユビキタス・ネットワーク社会(u-Japan)として定義した。

 このときから総務省は、「世界初のユビキタス・ネットワーク社会の実現」を目指すu-Japan構想の実現に向けた施策を打ち出し始める。u-Japanとは、“いつでも、どこでも、何でも、誰でも”ネットワークに簡単に接続できる環境が整備され、個別の情報通信技術(ICT)サービスや技術のみならず、それらが統合された新たなICT利活用環境で課題の解決に貢献する社会を意味する。

 さらに、今年3月に総務省の調査研究会がまとめた最終報告では、中間報告以降に検討された利用者参加型の実証実験の方向性や、プライバシー保護に関するガイドラインなど、無線ICタグの高度な利活用に向けた今後の総合的な推進方策が提言されており、現在総務省ではこの提言に基づいて無線ICタグに対する取り組みを進めている。

 u-Japan構想を実現するための研究開発においては、ITによる経済活性化と国際競争力を確保するために「日本が強みを有する分野への集中」を施策の方針とし、無線ICタグをこの分野に位置づけている。そして、簡単・便利で安心・安全な暮らしを実現するために各産業分野での導入を推進するとともに、将来の発展基礎となる技術の芽として確実に育てたい考えだ。

 ユビキタス・ネットワーク社会の実現に向けた総務省の総合的な取り組みでは、環境を端末系ネットワークとアクセス・ネットワーク、コア・ネットワークの3つに大きく分け、無線ICタグを端末系ネットワークの領域に位置づける。

 これは、無線ICタグが一般消費者の日常生活(端末系)に密接に関わるようになるとの意味付けを示している。

 総務省では、これら政策を具体的な施策として落とし込み、「ユビキタス・ネットワーク時代における電子タグの高度利活用の推進」として、「電子タグの高度利活用技術の研究開発」と「新たな周波数(950MHz近辺等)の確保」を進めていく。そして、これに基づき今年度(2004年度)で7億円の予算を計上し、物流、食品、医療、環境、教育などの分野で無線ICタグの高度利活用に向けた技術の研究開発や実証実験を行なう。また、周波数の確保では、実証実験などを経て今年度中に950MHz近辺(UHF帯)の確保を制度化する予定だ。

基盤技術の研究開発

以降、記事の続きはPDFで読むことができます。


本特集は、ソキウス・ジャパン発刊の月刊誌「Open Enterprise Magazine」の掲載特集を一部抜粋で掲載したものです。次の画像リンク先のPDFで記事の続きを読むことができます。同特集は、2004年11月号に掲載されたものです。

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