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» 2005年03月31日 16時54分 UPDATE

Interview:住友商事がVAリナックス株を譲渡した本当の理由

住友商事が保有するVAリナックスの全株式は住商情報システムへ譲渡された。さまざまな憶測が流れるなか、真相をVAリナックスの上田氏に聞いた。

[西尾泰三,ITmedia]

 3月31日、住友商事が保有するVA Linux Systems Japanの全株式は住商情報システムへ譲渡された(関連記事参照)。事実上の買収だ、いや、子会社化ではないか、などの情報が錯綜するなか、VAリナックスの代表取締役社長である上田哲也氏に真相を聞いた。

上田哲也氏 「今回の譲渡は極めて友好的に行われたもの」と上田氏

ITmedia なぜ住友商事から住商情報システムに株式譲渡が行われたのでしょうか?

上田 今回の話は基本的には株主間での話ですので、わたしたちがこの質問に答えるのは適切ではないかもしれませんが、まず言っておかなければいけないのは今回の譲渡はVAリナックスの今後の成長を考えた上での最善の道を摸索したことによる決定であるということです。わたしたちの筆頭株主であった住友商事は、VAリナックスという稀少な技術を保有する技術者集団の価値を最大化するにあたって、熟慮を重ねた上で今回の判断を行ったと確信していますし、VAリナックスはその判断に100%賛同しています。

 また、今回の譲渡は極めて友好的に行われています。そもそも住商情報システムは東証一部にも上場する日本を代表するソリューションプロバイダの内の一社ですが、住友商事が過半数の株式を保有している企業でもあります。つまり、兄弟企業だったわけですので、VAリナックスにとっては兄貴分の会社に所有権が移っただけとも言えます。

ITmedia 住友商事が住商情報システムの過半数の株式を保有する以上、住友商事が支配権を持つことに変わりはないと思いますが、この株式の譲渡に何の意味があるのでしょう。また、今までと何が変わるのですか?

上田 誤解をしてほしくないのですが、支配権は住商情報システムに移ります。確かに、住商情報システムの過半数の株式を住友商事が保有していることまで含めれば、ご指摘のとおりとも言えなくはないですが、直接の支配権は住商情報に移ると考えていただいて結構です。

 その上で、この株式譲渡の意味ですが、住友商事が中心となってVAリナックスを設立してから4年が経過してました。その間にVAリナックスのビジネスは順調に成長を続け、またそれ以上にLinuxカーネル開発を中心としたオープンソース・ソフトウェアの基盤分野において世界にも誇れる技術力の結集が図れたと自負しております。VAリナックスほどに一騎当千の技術者を抱えている企業は、世界にもそうはないでしょう。

 翻って、世間を見渡せば、わたしたちが創業したころとは異なり、オープンソースには多大なる追い風が吹いています。政府機関がオープンソースを支援するという状況は当時はまったくなかったわけで、このタイミングにおいてVAリナックスが他社に真似ができないOS基盤部分の技術を保有しているというのは非常に大きな強みです。

 ですが、いかに一騎当千とは言えども単体で可能なビジネスには限界があります。また住友商事は日本を代表する10兆円カンパニーですが、そのビジネス形態は総合商社であってVAリナックスが必要とするリソースを保有しているわけではありません。その点で住商情報システムは豊富なシステムインテグレーションの経験、ノウハウ、人材を保有し、最近ではMySQLのプラチナパートナーにもなったことからも分かるように、オープンソースのソリューションにも力を入れています。

 つまり、住商情報システムにはVAリナックスの基盤技術を取り入れる素地があり、オープンソースのソリューションビジネスのシナジーを生み出しやすいわけです。

 住友商事は住商情報システムの過半数の株式を保有しているので、VAリナックスが住商情報システムとのシナジーによってさらなる成長を遂げれば、それは住友商事の利益に結び付くわけですので、その点で大きな意味があります。

ITmedia VAリナックスに対する住友商事および住商情報システムの本当の狙いはどのあたりにあるのですか?

上田 ここまでくると住友商事や住商情報システムが答えるべき質問ですね。ただ、住友商事はこれまでVAリナックスという技術集団を非常に大事に育ててきたことは紛れもない事実です。

 VAリナックスについては単なるキャピタルゲインではなく、VAリナックスの事業によって住商情報システムだけでなく住商グループのIT関連企業全体にインパクトを与える大きな効果を期待されていると思います。VAリナックスとしては、単純にわたしたちが保有する技術によるビジネスを最大化させる努力をするのみです。

ITmedia ほかの株主は今回の譲渡を了承しているのですか?

上田 弊社の主要株主であるNTTコムウェアおよびNTTデータなどからは、快く了解してもらっています。そもそも今回の件で既存株主の議決権への影響はありませんし、株式の価値が毀損するわけでもありません。むしろ、住商情報システムが強みを発揮する上位層での開発力とのシナジーによって、NTTグループとはより密接なビジネスを展開できるようになると期待しています。

ITmedia 住商グループとの取り引きの比率はどうなるのでしょう。また、NTTグループや他社との関係はどうなるのか。

上田 先ほど、住友商事に育ててもらったという表現を使いましたが、売り上げ的には住商グループからは見かけほどは大きな取り引きがあったわけではありません。わたしたちは今までずっと独自の技術で独自にビジネスを行い、成長してきたのです。

 ということで、今後、住商情報との関係によるビジネスが始まれば、住商グループからの売上比率は高まる可能性はおおいにあります。ただし、わたしたちはNTTグループやその他の企業とのビジネスを縮小するのではなく、むしろ積極的にわたしたちの技術を活用したエンタープライズレベルのオープンソースソリューションビジネスを展開できるベンダーとの協業を進めることになると思います。VAリナックスが成長することは住商グループ全体にとってもプラスであることは自明ですので、わたしたちは引き続きオープンソースの技術力の結集に努め、住商グループ同様、NTTグループ各社をはじめとするパートナー各社との連携を深め、わたしたち自身の成長を加速させることになります。

ITmedia 住商情報との具体的なビジネスの展開はどのようなものになるのですか?

上田 現時点で詳細は申し上げられませんが、住商情報システム側からも発表されているように、データセンター事業におけるIT基盤、アプリケーション開発における開発ノウハウ、極限まで信頼性が求められるシステムにおけるノウハウなどの技術がわたしたちには期待されていますし、それを応用したビジネスを共同展開するということを視野に入れています。



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