Linuxビジネスは「銀座のすし屋」? VA Linuxが狙うポジションとはInterview

VA Linux Systems Japanは、ローカルエリアネットワークの負荷分散と高可用性サービスを実現するソフトウェア「VA Balance」を発表した。今回の発表が意味するもの、そしてVAリナックスが考えるLinuxビジネスのあり方について、VAリナックスの佐渡氏に話を聞いた。

» 2004年11月18日 15時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 既報のとおり、VA Linux Systems Japanは11月18日、ローカルエリアネットワークの負荷分散と高可用性サービスを実現するソフトウェア「VA Balance」を発表した。今回の発表が意味するもの、そしてVAリナックスが考えるLinuxビジネスのあり方について、VA Linux Systems Japanのマーケティング部長で、OSDNユニットのユニット長も務める佐渡秀治氏に話を聞いた。

ITmedia 今回発表したVA BalanceはF5 Networksのようなロードバランサー市場を狙うのでしょうか?

佐渡 市場的には、F5のBIG-IPに代表されるロードバランサーのセクターを狙うことになります。VA Balanceはロードバランサーに必要十分な機能を満たすものだと考えていますし、コアとなるUltraMonkeyはそもそもVAリナックスの社内で現在も日々開発、改良を続けているため、顧客に「ソースコードレベルの安心感」を与えることができると思います。

 クッキーパーシステンスなど、特許の問題もあって実装が難しい機能もありますが*、VA Balanceは当然ハードウェアにしばりはありませんので、その特徴を生かしながらある程度のシェアを獲得することは可能だと考えています。

 また、ロードバランサーを導入するという場合には、その後方に何らかの大規模なシステムが存在するはずですが、そのシステム全体のコンサル、構築を含めて弊社が引き受けるということに重点を置ければいいと思っています。システム全体の設計と構築能力はそもそも弊社の強みの一つであり、単にロードバランサーをかつぐだけのベンダーには欠けているものだと思います。

ITmedia VAリナックスとして初の独自ソフトウェア製品ということですが?

佐渡 一部にはOSDNが有名なのでしょうが、弊社のこれまでのビジネスはほぼLinuxカーネル開発やオープンソースによる大規模システムなどのテクノロジーコンサルティングにかなり偏っていたと思います。特にカーネル関連のビジネスは非常にうまくいっていて、つい最近も人員増強とサービス拡充のプレスリリースを出したばかりです。

 ですが、この形態のビジネスは、非常に限られた市場で限られた顧客を相手にするビジネスです。例えれば「銀座で看板もメニューもないすし屋」を営んでいるようなものですが、今回初めて「製品」という分かりやすい単位で一つのメニューを張り出したということです。最初の店はもうすでに軌道にのってしまっているので、近所に開店する2つ目の店はもう少し顧客層を広げたビジネスを展開しようということです。

 これは同じ銀座でも「メニューがあって敷居がそれなりに低いすし屋」ということでしょうか。今後は、1つ目の店のますますの繁盛を狙うのはもちろんですが、この2つ目の店のメニューをどんどん増やしていこうとも考えています。

ITmedia ISVもしくはディストリビューターに移行するということでしょうか?

佐渡 それは違います。VAリナックスはあくまでもシステム全体を提供するベンダーでありたいと考えています。先ほどのすし屋に例えるなら、回転寿司チェーンやスーパーのパック寿司のような存在になる気はありません。絶えず顧客と向き合ったビジネスをすることが弊社の価値だと思いますし、そのために必要な技術を蓄積することにも努めています。最近発表したNTTデータとの共同開発によるMini Kernel Dumpは、システムの障害解析には効果を発揮すると思いますが、弊社はカーネルを含むシステム全体に対して、「ソースコードレベルからのサポート」をするためにこのようなプロジェクトを推進しています。

ITmedia 今後、ほかの製品がでてくる予定は?

佐渡 当然、今回だけで終わる話ではありません。今後数カ月内にいくつか発表できると思います。すし屋で一人前の握り寿司になるくらいまではメニューをそろえたいと考えていますが、現段階では次に何が出てくるのかをお話することはできません。

ITmedia VA Balanceに採用されているOSのVA CoreはDebianベースだそうですが、単体で販売しないのですか?

佐渡 VA Coreは、Debian GNU/Linuxに対して弊社が改良したカーネルやセキュリティアップデートを施したOSですが、現時点においてはわれわれが提供するシステム、ソリューションに付属するOSと考えています。もちろん将来販売に踏み切る可能性を排除しませんが、われわれのビジネスはあくまでも「システムを提供する」ことです。VA Coreは、Debianの欠点だと言われている部分をいくつか改善していると思いますので需要があるのかもしれませんが、今は時期尚早だと判断しています。

ITmedia そもそもDebianを採用する理由は?

佐渡 われわれが自由に手を入れることな可能なLinux OSとしては、実質的にDebianしかありませんし、もともと弊社には数名のアクティブなDebian Developerが在籍しており、その技術を応用できることが大きいと思います。Red Hat Enterprise Linuxは良いOSだと思いますが、それを必要としないケースも非常に多いわけです。

 特にシステムやハードに合わせた実装が必要な特殊用途の場合は、RHELはかえって不向きでしょう。また、ホスティング用途のような大量導入の場合も向いていないでしょう。これとは反対に、Debianが向いていない利用用途は存在しますので、弊社としては適材適所で使っていけばいいと考えています。

このページで出てきた専門用語
クッキーパーシステンスなど、特許の問題もあって実装が難しい機能もありますが
クッキーパーシステンスの特許に関しては、こちらを参照してほしい

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