RHEL 4の年間サブスクリプションが無料に? ある企業の挑戦(1/2 ページ)

2月にリリースされたRHEL 4。日本での本格的な展開に先立ち、RHELの年間サブスクリプション費用を無償にすることをアナウンスした企業が現れた。年間10万円を超す価格をどのようにして無償としたのか。

» 2005年04月04日 09時11分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Red Hatが2005年2月に発表した「Red Hat Enterprise Linux 4」(RHEL 4)は、2005年4月にも国内での正式発表が行われる見込みだが、それに先立ち、専用サーバによるホスティングサービスを提供するある国内企業が興味深い発表を行った。なんと、RHELの年間サブスクリプション費用を無償にする「Red Hat Enterprise Linux ES 無償提供プログラム」を宣言したのだ。多くのビジネスユーザーがその必要性は認識しながらも、10万円を超える年間サブスクリプション費用のためにRHEL採用をためらっていることを考えるとこれは吉報といえるかもしれない。

 この発表は、東京で広告制作業を営むリンクと、PC/AT互換機の中堅メーカーである富山のエーティーワークスが共同運営する「AT-LINK専用サーバ・サービス」(at+link)のサービスの一環として発表された。リンク代表取締役社長の岡田元治氏、同取締役営業部長の眞神克二氏、エーティーワークス取締役副社長の永井浩和氏に、その背景と目的について聞いた。

左から永井氏、岡田氏、眞神氏

 at+linkは1996年11月にスタートしたサービスで、当時、共用サーバの50Mバイトのスペースが約5万円という市場に、420MバイトHDDの専用サーバで2万円を切る価格体系でビジネスを展開した。「電話やコピーのリース代と同じくらいの価格でないと中堅・中小企業には受け入れられないのではないかと考えた」とリンク代表取締役社長の岡田元治氏は当時を述懐する。加えて、利用拘束を一切設けないことと、月間利用料ベースのビジネスモデルによって人気を伸ばしている。

 専用サーバのビジネスは共有サーバのそれと基本的にベクトルが異なる。共有サーバは、事業者が枠組みを作るため、価格が重要なポイントとなる。一方、専用サーバではあらゆることが許可されているので、ユーザーのニーズに追従することが重要なポイントとなる。しかし、専用サーバの事業者でも、あらゆることを許可といいながら、複数台でのシステム構成は許可していないところもある。自分たちでサーバを購入し、データセンターに置く場合と自由度の面ではほとんど同じものを提供している点がat+linkが支持される理由のようだ。

Red Hat Linuxを使い続けるか否か、それが問題だ

 当初同サービスで使われていたOSがSlackware Linux。その後ユーザーの多岐にわたるニーズに応えようとWindows ServerやTurbolinux、Vine Linux、FreeBSDなど複数のOSをメニューに追加していったが、ここで1つの壁に遭遇する。サポートの問題だ。

 「サポートでよくある、ここまでは無料、ここからは有料、のようなお互いの障壁になるようなことはしないほうがいい。持ち込みのサーバなど特殊な場合を除けば、基本的には無償でフルサポートを提供する」と岡田氏は話すが、限られた人数の中でサポートOSを増やすことは限界がある。「ユーザーを獲得するには幅広いラインアップが必要、しかし、しぼって深くやらないとサポートスタッフがもたない」(永井氏)という、開発と営業のせめぎ合いが続いた結果、広く浅くという方向性からOSの選択肢を多少絞る方向性が取られることとなった。そこで現在は、当時ユーザーニーズの強かったRed Hat Linuxを中心にOSを少数に絞っている。

 しかし、しばらくするとまた別の問題が持ち上がってきた。Red Hatがエンタープライズ領域への進出とともに、製品ラインアップをRHELに絞り、Red Hat Linuxのサポートの終了をアナウンスしたのである。これに対しat+linkは、テンアートニが提供するLinuxアップデートサービスを購入、それをユーザーに無料で提供するなどして対応したが、それが一時しのぎであることは明白だった。セキュリティやサポートの面などを考えると、ビジネスユースにおいてRed Hat Linuxを利用し続けることは、無理ではないがかなり無謀な話だった。

 仮にat+linkでセキュリティパッチの提供などが可能だとしても、ミドルウェアなどの対応などを考えると、Red Hat Linuxを使い続けることはat+linkのリスクが高い。かといって、RHELを採用し、約10万円の年間サブスクリプション費用をユーザーに負担してもらうのか、それともビジネス上必要なことだと納得して自社でかぶるのか。何らかの対応が求められていた。このような経緯があって、Red Hatとの交渉に入ったという。

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