NECとサンが協業、次世代クライアント開発の「連合軍を作る」

NECと米サン・マイクロシステムズは4月5日、提携の拡大を発表し、シンクライアントなど次世代のクライアントシステムの共同検討を始めたことを明らかにした。

» 2005年04月05日 20時56分 公開
[垣内郁栄,ITmedia]

 NECと米サン・マイクロシステムズは4月5日、提携の拡大を発表し、シンクライアントなど次世代のクライアントシステムの共同検討を始めたことを明らかにした。NECの代表取締役 執行役員副社長 川村敏郎氏は、「NECはいまある製品で十分とは思っていない。システム・アーキテクチャを抜本的に変える必要がある」と説明。3年をめどに両社でどのような方向で次世代のクライアントシステムを開発するかの結論を出し、共同開発やプロダクト共有の可能性を探る。川村氏は「(次世代クライアントシステムなどのテーマを)心底議論できる相手はオープンマインドポリシーを持つサンしかない」と述べ、次世代クライアントについての「連合軍を作る」と話した。

マクニーリ氏と金杉氏 サン・マイクロシステムズの会長兼CEO スコット・マクニーリ氏(左)とNECの代表取締役 執行役員社長 金杉明信氏。金杉氏はサンを提携相手に選んだ理由として「マクニーリCEOがいるからかもしれない。マクニーリCEOの人柄、サンの社風が個人的には好き」と述べた

 サンの会長兼CEO スコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏はNECとの協業を拡大した理由について、「NECは技術、ミドルウェア、顧客との関係維持などで高い専門知識を持っている。協業がさらに密になるのはうれしいことだ。NECなどシステム・インテグレータ(SIer)とは非常に補完的な関係を保てる」と説明した。マクニーリ氏はIT業界の動向について「人類対IBMの戦い」と最近得意のフレーズを連呼。「最終的には人類が勝つ。NECが人類の方についてくれてうれしい」と述べた。

 両社は次世代クライアントの可能性を探るための「共同検討のタスクフォース」を2005年1月に設置。日米で議論を続けている。シンクライアントの端末だけでなく、NECのネットワーク・IT融合ソリューション「UNIVERGE」とサンのシンクライアント「SunRay」をベースに、ミドルウェアやネットワーク、サーバなど次世代クライアントのシステム・アーキテクチャ全体について議論しているという。

 両社はSunRayの販売でも協力する。UNIVERGEとSunRayを組み合わせてシンクライアント上でIP電話やWeb会議のシステムが利用できるコンタクトセンター向けのシステムを両社で開発。日米をはじめ、グローバルで販売する。

 また、両社はシステム構築分野でも関係を深める。NECはSolaris環境のサポートを強化し、HP-UXやWindows、Linuxと同程度まで対応を引き上げる。Solarisのミッションクリティカル対応も進める。iモード向けのゲートウェイシステム「CiRCUS」の中小規模版システムで、NECが世界8カ国の8通信キャリアに導入した「NEC マルチメディア・インフォメーション・プラットフォーム」(NEMIP)の欧州、アジアでの展開も両社が共同で進める。NECの代表取締役 執行役員社長 金杉明信氏は「両社は、情報システム技術とネットワーク技術の融合というビジョンを共有している」と述べた。

 NECは2000年からサンのサーバ製品のOEM供給を受けて、「CX5000」シリーズとして販売している。SI案件などでこれまで1万台を出荷してきたという。NECによると、システム構築やサーバ、ミドルウェアなどNECが手がけるサン関連のビジネス規模は年間300億円。今回の協業拡大で2〜3年で2倍まで増やすことを目指す。ただ、川村氏は「単にプロダクトを売ることが目的ではない。次世代クライアントシステムの技術検討をサンとできることがNECにとってのメリットだ」としている。

 NECとサンの協業拡大で複雑な立場になるのはヒューレット・パッカード(HP)だ。HPはサーバをNECにOEM供給するなど強い協業関係にある。しかし、NECがサンとの関係を強化することで、その協業関係が不安定になる可能性がある。金杉氏は「HPとの関係は変わらない」としていて、協業関係を維持する姿勢を示した。

 ただ、NEC幹部が「HPはプロダクトからSIビジネスに軸足を移している。現実問題として(NECとHPの)マーケットの衝突はある」というように、HPがサーバをOEM提供し、NECがSIビジネスで販売するという協業の初期のスキームは崩れつつあるようだ。その点、「サンはSIビジネスをやらないので提携がしやすい」(金杉氏)。次世代基幹サーバの開発を富士通と行っているサンにも同じことがいえるが、業界のエコシステムの中でパートナーとよりよい関係を結び、イノベーションに結びつけるかが今後の成長の鍵になるだろう。

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