政府に食い込むオープンソース

「オープンな政府」を目指す動きは、オープンソースソフト採用にぴったり合っている――Linuxベンダー各社が政府関係者の集まるカンファレンスでアピールした。(IDG)

» 2005年04月08日 19時49分 公開
[IDG Japan]
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 ワシントンD.C.で4月7日に開催されたFOSEトレードショウで、「政府におけるオープンソースソフト」セッションに集まった聴衆は少なかったが、それでもLinuxベンダー各社は、自分たちは米政府機関の支持を獲得しつつあると主張している。

 各国政府がより多くの情報を国民に公開する動きに乗り出す中で、Linuxと政府機関が同盟を組むのは自然に思えるとNovellのLinuxソリューションマーケティングディレクター、バジル・ハリスJr.氏は語った。「このようにオープンな政府、オープンなソフトに向けた動きがあり、これらはぴったり合っているように思える」と同氏はFOSEの「Open Source, Open Government: A Match Made in Heaven?」セッションで述べた。

 政府機関におけるIT利用をテーマにしたFOSEトレードショウの展示フロアに、Linux各社が自社のパビリオンとシアターを設けたのは今年が初めてだ。このイベントは毎年2万5000人以上の来場者が訪れる。LinuxベンダーとユーザーグループはこれまでにもFOSEに出展したことがあるが、今年のカンファレンスは政府機関でのオープンソースソフト採用に焦点を当てた十数のセッションが特徴となっている。

 ハリス氏は、正確な数字は明らかにできないが、Novellのビジネスのかなりの部分を国防総省など連邦政府、州政府、地方自治体が占めていると語った。FOSEのLinuxセクションに出展したPenguin Computingの販売担当副社長マット・ヤコブズ氏は、同社の売上高の約35%を米政府機関が占めていると述べた。同社は約2000社の顧客を抱え、過去1年間の成長率はおよそ25%という。

 Penguin ComputingがFOSEに参加するのは今年が初めて。同社はワシントンD.Cでのプレゼンス拡大に取り組んでいるところだ。「以前から顧客だった政府機関の前に出て行かなくては」とヤコブズ氏。

 ブラジル、タイ、カナダなど他国の政府がオープンソースソフトを支持してきた一方で、米政府はオープンソース採用が遅れていたとハリス氏は指摘した。Linuxやその他オープンソースソフトは、国家安全保障局や国防総省など多くの政府機関に進出してきた。2002年10月に調査会社MITREが公開した報告書では、かなり採用が進んでいることが明らかになっている。

 しかしNovellのハリス氏は自身のセッションに参加した人々に、もっと多くの政府機関が、オープンソースソフトをライセンスコストと単一ベンダーの囲い込みを避ける手段と考えていないのはなぜかと問いかけた。約20人の参加者のうち、「あなたの勤務先はオープンソースソフトを採用しているか」と問われて挙手した人はおらず、「採用を検討しているか」という質問にはわずか2人が挙手した。

 CHF Internationalのユーザーサポート専門家デビッド・バークハート氏は、35カ国の支所でソフトライセンスを監視しなくても済むようにするため、オープンソースソフトを推進していると語った。同団体では乗り換えにより、ライセンスコストとソフトライセンス追跡の手間を避けることができたという。

 問題は、同団体にはLinuxで動作しないソフトがあり、ユーザーが新しいパッケージへの乗り換えを望んでいないということだとバークハート氏。「本部と出張所を乗り換えさせるのは、気が遠くなる仕事だ」

 Novellのハリス氏は、Linux対応アプリケーションよりもまだWindows対応アプリケーションの方が多い点に触れ、「率直に言って、汎用デスクトップはMicrosoftのテリトリーだ」と語った。

 だが同氏によると、Novellの社員6000人のうち約60%はデスクトップでLinuxを走らせており、同社は年内に全社員のデスクトップに(スタンドアロンとして、あるいはWindowsとのデュアルブートの形で)Linuxを載せることを目指しているという。

 限られたデスクトップ機能のみを必要とする社員、キオスクタイプのマシン、PDAにおいてはLinuxは競争力を持っていると同氏は付け加えた。

 CHFのバークハート氏は、Linux採用のもう1つの障壁として、同団体の職員たちが、ITスタッフにLinuxの知識がないと思っていることを挙げた。しかしハリス氏は、多くの幹部、特に政府機関の幹部は、ITスタッフが追加の費用を要求せずにLinuxを問題解決に利用していることを理解していないと指摘した。

 ハリス氏はまた、WindowsよりもセキュアなオプションとしてLinuxを勧め、オープンソースコミュニティーでよく主張される「オープンソース開発モデルの下では、世界中の開発者がクローズドなモデルよりも迅速にセキュリティホールを見つけられる」という信条を改めて掲げた。

 「LinuxはUNIXと同様に、最初から安全性を確保するための取り組みが多数行われてきた。それに対してMicrosoftは使いやすさにフォーカスしていた」(同氏)

 7日午後の時点では、Microsoftの担当者からコメントは得られていない。同社は、オープンソースソフトの方が安全で、長期的に見るとコストが安いという主張に異を唱えている。

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