トリジェル氏に聞く――OSDLフェロー、Samba4、特許、技術予測 Interview(1/2 ページ)

Sambaの開発者として名高いアンドリュー・トリジェル氏がOSDLのフェローに任命されて数カ月が過ぎた。自身を「OSDLにいる野郎」と謙遜する同氏がSambaの最新バージョンなどについて語った。

» 2005年04月18日 17時55分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]

 今年初め、Open Source Development Labs(OSDL)は、Linuxの作者リーナス・トーバルズ氏に次ぐ2人目のフェローとして、フリーソフトウェアおよびSambaの開発者であるアンドリュー・トリジェル氏を任命した(関連記事参照)。しかし、電子メールを介してインタビューに答えたトリジェル氏――多くの人からは「Tridge」と呼ばれている――はフェローであることをひけらかすこともなく、自分は南半球の「ヤロー」(野郎)だと謙遜する(Tridgeはオーストラリア在住)。

 そして、IBMからOSDLに移ったのはSambaの最新バージョンSamba4、FOSSファイル、Windows用プリント・サーバに専念するためだと説明し、「Windowsをより広い世界に開く」Sambaの最新バージョンなどについて語ってくれた。

トリジェル氏 アンドリュー・トリジェル氏と愛犬

NewsForge(NF) OSDLフェロー就任、おめでとうございます。OSDLフェローはトーバルズ氏に次いで2人目、一握りの人だけが就けるポジションです。OSDLへの参加について、その経緯をお聞かせください。また、この任命はSambaにとってどのような意味があるでしょうか。

トリジェル 「OSDLフェロー」は、任意に与えられる称号なんです。実際、OSDLに移った後も、わたしをどう呼ぶか話題にすらなっていませんでした。ですから、この名称には何ら特別な意味はないのです。いずれにしても、多分、「OSDLにいる野郎」と呼ばれる方が似合っています。私はオーストラリア人ですから。

 昨年4月のOSDLとの会談の話から説明しましょう。そのころ、私はIBMのアルマデン研究所で先進ストレージ・システムの研究をしていました。アルマデンに入った頃、私が属していたグループの第一プロジェクトはSambaも対象にしており、所内で進められていたファイル・システム・プロジェクトに繋がるような機能をSambaに追加しようとしていたのです。しかし、グループの目的は次第に変わっていきました(研究グループではよくあることです)。IBMは寛容な会社ですから、それでも私はSamba4に多くの時間を割くことができました。しかし、グループの研究テーマはすでに変わっており、わたしの方も、少し手を広げてSambaにほとんどすべての時間を費やすことになるのは明らかでした。そこで、共通の知人を介してOSDLのTim Withamに連絡したのです。IBMから休暇を取ってOSDLに加わりSamba4の仕事を終わらせることができないかと相談しました。取り立てて急ぐ事情も起きず、やがて事務手続きが整い、この1月からOSDLに加わりました。休暇は一応2年間ということになっていますが、この契約はかなり緩やかですから、実際にどれくらいの期間になるかはわかりません。Samba4の開発が終わる時期と、そうした宙ぶらりんな状態にいる者にOSDLがいつまで我慢しようとするかにかかっています。

NF ご自身のお話を含め、OSDLにポジションを得たことによってSambaに全力投球できるようになったと方々で言われています。他の責任からは解放されたわけですが、ご自身としては荷が重くなり、Samba4に対する期待も高まったのではありませんか。

トリジェル 開発を促したければ、自分で自分に圧力をかけるのが最も効果的です。わたしは、これまでもずっとSamba4を進めるよう努めてきました。今最も重要なことは、新しいコードベースをできるだけ早く完成させることです。新機能はその上に載るわけですし、Sambaの開発者たちは従来よりはるかに効率的に仕事を進められるようになりますから。2年ほど前、Samba3のコードの構造が開発の重い足枷になっていることがわかりました。新機能を追加しようとしても、必要以上に長い長い時間がかかっていたのです。コードは、わたしが最初に書き始めた1991年以来古い構造のままだったからです。つまり、わたしたちの持つプログラミング能力を効率的に活用できなかったのです。ときには、既存のコードベースに組み入れるのが難しいというだけで、重要な機能を積み残していました。その最大の例はActive Directoryです。4年ほど前、Samba3にADSメンバーのサポートを追加しました。しかし、ADSドメイン・コントローラの完全サポートは遅れに遅れました。コードの変更量が大きく安定性にも問題が生ずる恐れがあり、手が付けられなかったのです。しかし、Samba4の新しい構造では、ADS DCのサポートはごく自然に組み込むことができますし、実際、楽しみな作業です。

NF ちなみに、以前なさっていたことで今は止めていることがあれば、お聞かせください。

トリジェル 論文とかrsyncやccashなどについて書く仕事を別にすれば、この10年以上わたしのエネルギーの大半を費やしているのはSambaです。その時々によって費やす時間は異なりますが、大体、普通の意味の常勤レベルです。短い睡眠と朝食のわずかな時間以外はお籠もり状態だったことも、何週間かあります(ありがたいことにわたしの妻はとても寛容な心の持ち主です!)。そういうとき以外は、もう少しまともで、1日に12時間ほどでしょうか。Sambaはわたしの趣味であると同時に(特に最近は)わたしの仕事でもあります。ですから、できるだけ多くの時間をSambaに費やしたいのです。わたしは、プログラミング中毒なんですよ。

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