Longhornは企業が飲む「痛み止め」

セキュリティ・管理の向上など、IT部門の痛みを和らげる機能こそLonghornの売りになる。MicrosoftはこのOSを肝油や虫除け、まずい咳止めシロップに例えた広告キャンペーンを張るべきだろう。

» 2005年04月26日 18時58分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 企業顧客が64ビットコンピューティングとLonghornに移行するとしたら、その理由はこれらが「何であるのか」よりもむしろ、「何でないのか」にあるかもしれない。それは確かだ(Microsoftがそうなのだから)。Longhornと64ビットは、Windows XPでないから、32ビットでないからという理由で売れるだろう。好きだからとか、心底エキサイティングだからという理由では売れない。痛みを和らげる手段を約束してくれるからだ。

 以前のコラムで、私は一般的なインフォメーションワーカーにとって64ビットコンピューティングはさして重要ではないと書き、これを必要とする企業向けの64ビットサーバを支持した。しかし、私はこうした意見を広げて、エンタープライズ64ビットコンピューティングに有利なケースを論じたくなった。これは64ビットとLonghornが何を解決できるのかに基づいている。

 おそらくMicrosoftには、「『好きだから』という理由でLonghornを買わないでください。『役に立つから』という理由で買ってください」という広告キャンペーンが必要だ。あるいは、Longhornを肝油や虫除け、まずい咳止めシロップに例えたノスタルジックなキャンペーンを張るべきかもしれない。そう、「Longhorn――データセンターのためのDEET(除虫成分)100%商品です!」で決まりだ。

 セキュリティ、導入、管理の向上など、IT部門に好まれる機能こそLonghornの売りになる。

 ユーザーは新しい64ビットコンピュータ、新しいOS、改良版のデスクトップ検索を手に入して、さらにMicrosoft Officeを走らせたければどうにかして実行できる。彼らの生産性は変わらないだろうが、IT部門は顧客が損得なしか幾らかのお金を節約できるように取引をまとめるだろう。

 Microsoftとハードメーカーは、顧客を購入に駆り立てた動機が何であれ、売れれば満足すると思う。顧客は解決できた問題の数と、解決にかかったコストで満足度を測ることになる。

 では、Microsoftが64ビットとLonghornをエンタープライズの標準にするためには何が必要なのだろうか? 投資した意味があるだけの問題解決を実現することだ。顧客のセキュリティ・管理費用が十分に節約されれば、これら技術へのアップグレードは考えるまでもない選択になる。絶対にというわけではないが、表計算ソフトで計算すれば簡単に十分なアップグレードの理由を出せる。

 それは、Microsoftが目標を達成すればの話だ。多くの企業顧客にとって、(Windows XP)SP2は解決した問題よりも多くの問題を作り出し、節約した費用と同じくらい――おそらくはもっと多くの――費用を生み出した。彼らはLonghornに投資する前に、このOSが約束通りのものか見極めたがるだろう。MicrosoftがLonghornでやってしまうかもしれない最悪の失敗は、SP2と同じレベルのFUDを生み出すバージョンをリリースすることだ。

 MicrosoftはLonghornに多くのユーザー機能を詰め込んでいるように見え、実際それだけの機能を詰め込んでいる。おそらくそれは賞賛に値することだ。現時点ではあまり多くの機能が明らかになっていない(来年まで待てば装備を調えたLonghornを見られると言われた)し、今の外観は衝撃を受けるほどMacに似ている。Microsoftでさえ、新しいOSが単なるフィックス集では売れないことに気づいたのではないだろうか。ただ、もしそうなら、私たちの手元にはもうフィックスが届いているはずだが。

 そうなっていたらたぶんSP2は必要なかっただろうし、XPが完全に消える日はもっと早くなっていただろう。Longhornの遅れは追加コストと売上逸失をもたらし、Microsoftにとってはかなり高くついた。これは、Longhornにより売上促進効果を求める業界全体にも打撃を与えた。

 Longhornの最大の目玉は、ITスタッフの苦痛を和らげることだ。Longhornからさまざまな「フィックス」を取り除いて、ユーザーと開発者向けの新機能だけで売り込むのであれば、Microsoftはこれまでに示してきた以上のものを実現しなくてはならない。私がここWinHECで目にしているLonghornは売れないだろう。

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