マイクロソフト、64ビット版Windowsの日本語版をリリース

マイクロソフトは先月提供を開始した「Windows Server 2003 SP1」と、6月1日から提供を開始する「Windows Server 2003 x64 Editions 日本語版」に関する発表会を開催した。名古屋銀行の早期導入事例も示されている。

» 2005年05月16日 17時33分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 マイクロソフトは5月16日、先月提供を開始したWindows Server 2003のService Pack 1(SP1)と、6月1日から提供を開始する「Windows Server 2003 x64 Editions 日本語版」に関する発表会を開催した。

SP1は1週間で100万ダウンロード

 MicrosoftのWindows Serverデビジョン、ゼネラルマネージャーのクリス・フィリップス氏はSP1について、「SP1の公開から1週間ほどで100万ダウンロードがあった。全世界でエンタープライズサーバは600万ほどだと思うが、そこから考えてもこのダウンロード数は非常に意義のあるものだと言える」と述べている。

クリス氏 「SP1ではセキュリティの向上だけでなく、パフォーマンス、可用性ともに向上している」とクリス氏

 一般的にSPは、それまでに公開された修正プログラムをまとめたものと考えられているが、実際には修正プログラムだけでなく、数々の機能変更や機能拡張、新機能追加が行われている。Windows Server 2003 SP1でもWindows XP SP2と同様のセキュリティ機能が追加されたほか、セキュリティの更新ウィザード、データ実行防止機能(DEP)などの機能が追加された。合わせて、SSL利用時のスループットの向上などパフォーマンスのチューニングも行われている。Windows Server 2003 SP1の詳細についてはレビューを行っているので、そちらを参考にして欲しい(関連記事参照)

 「セキュリティの構成ウィザード」は、サーバの役割に応じたセキュリティ設定をウィザード形式で行うツール。役割に必要のないポートやサービスを閉じる・停止するといったことが容易に行える。

 同ツールは同社製品だけの対応にとどまらず、アプリケーションごとにポリシーファイルを作成すれば、他社製品も利用可能になるが、それを示すデモではOBCの勘定奉行を動作させる場合のセキュリティ設定を行っていた。現時点でも350を超える国内のアプリケーションに同ウィザードは対応しているといい、管理面での負担の軽減になることをアピールした。また、IHV、ISVなどのパートナーと共同で同ウィザードで利用可能なポリシーファイルの提供を推進していくことを明らかにしている。

「64ビットに関する不安は弊社がよい証左」

 一方、間もなく登場する「Windows Server 2003 x64 Editions」は、「Editions」と複数形となっていることからも分かるが、実際の製品としては「Standard x64 Edition」「Enterprise x64 Edition」「Datacenter x64 Edition」の3製品が存在する。

 IDCのレポートなどでも今後64ビット化の波は確実に大波となることが予想されているが、マイクロソフトも既存の32ビット版Windows Server 2003を利用しているユーザーに対して乗り換えを促そうとしている。

 同社が2005年6月1日から開始する「Technology Advancement Program」というプログラムがそれだ。同プログラムはWindows XPに関しても同様のものが先月発表されているが、既存のWindows Server 2003のパッケージを持っているか、AMD64/EM64T対応のCPUを搭載しWindows Server 2003がプリインストールされたサーバを利用しているユーザーに対し、それと同じエディションの64ビット版を提供するもの。価格は、マイクロソフトのWebサイトから申し込んだ場合はCD-ROMなどの実費、プリインストールモデルの場合でもそれぞれのIHVから基本的には実費程度で提供される予定となっている。

 クリス氏はMicrosoft社内での各種サービスや基幹アプリケーションのサーバにx64またはItanium Processor Family(ITP)を搭載したものを利用していることを挙げ、その安定性について自信を見せる。

 「MSNなどのサイトでも、x64に移行することで全体のパフォーマンスは目覚ましく向上した。x64への移行について不安に思われるかもしれないが、われわれ自身1年以上もやっていることがよい証左となるだろう」(クリス氏)

 なお、ITPとのセグメントについては、「スケールアップ型のアプリケーションが必要であればItanium、メインストリーム型のアプリケーションにはAMD64/EM64T対応のCPUがいいのではないか」と説明している。

AMDの「口撃」

 発表会後半はマイクロソフトのパートナーとなるさまざまなIHV、ISVが登場、Windows Server 2003 SP1およびWindows Server 2003 x64 Editionsに対する支持を語った。

 x86の64ビットCPUを提供するインテルとAMDも登壇したが、AMDのコーポレートバイスプレジデントの堺和夫氏(同日に日本AMDの代表取締役社長にディビッドM.ユーゼ氏が就任、堺氏は代表取締役会長に就任している)は、「AMDはWindows Server 2003 x64 Editionsの開発に関して、かなり初期の段階から緊密な連携を取ってきた。ハードウェア、シリコンソリューションはもうAMDにまかせて欲しい」と強気の姿勢を見せ、加えて「サーバソリューションにおいて、消費電力の問題は重要。AMDのプロセッサはローパワーも設計思想にあるため、Windows Server 2003 x64 Editionsと組み合わせることで非常に効率のよいソリューションとなる」とインテルをけん制するかのようなスピーチを行い、会場を沸かせた。

堺氏 「このスピーチ中に何回『AMD』と言えるかもスピーチの重要なテーマ」と自社のアピールも忘れない堺氏

早期導入事例も

 最後には、Windows Server 2003 x64 Editionsを活用した名古屋銀行における早期導入事例も披露された。この事例では、同行の「次期統合顧客情報データベースシステム」に関するもので、日本電気(NEC)とマイクロソフトがシステム構築に早期段階から協力したもの。

 新システムは、「64ビット インテル XeonプロセッサMP」を4個搭載したNECのIAサーバ「Express5800/140Rd-4」にWindows Server 2003 x64 Editionsを搭載、そのほかにSAN対応ストレージ「iStorage S1400」を加えたもの。データベースには「Microsoft SQL Server2005」を採用する。

システム図 「次期統合顧客情報データベースシステム」のシステム図

 「銀行の業務も変化しつつあり、いわゆる『新勘定系』業務の扱いも増えてきた。これまでの情報系のシステムはUNIXとOracleの組み合わせだったが、ライセンスコストなどの問題で、本部でしか使っていなかった。これを全行員が使えるものにすることで、お客様のニーズに合った金融サービスの提供を推し進めることができると考えている」(同行の取締役頭取、加藤千麿氏)

左から鈴木和洋氏(マイクロソフト)、山本正彦氏(NEC)、加藤千麿氏(名古屋銀行)、グレッグ・ピアーソン氏(Intel)、クリス・フィリップス氏(Microsoft)

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