コラム
» 2005年05月23日 08時45分 UPDATE

Blog情報共有の未来:Blogは「フォーマット」として捉えるべきもの――小川 浩氏

Blogは、Blogであるべき形態を持ち備えている。「Blog」は、構築されたサイトそのものと捉えると本質を見誤ることになるだろう。パーソナル用途で人気となったツールを、いま、企業はどのように捉えるべきなのか?

[小川 浩,ITmedia]

 2005年4月時点でのBlogの認知率は、ついに70%近くにまで向上したという。これだけ認知されてくれば、コンシューマー向けのサービスや、商品でもビジネス用途に利用しようと考えるのは極めて自然である。恐らく2005年内、遅くとも2006年の春ごろにはBlogのビジネス利用への論議は意味のないものとなり、次なる段階の「効果をどのように高めていくか」が問われることになるだろう。

 さて、前置きはこの程度にして本題に入るが、ビジネス用途にBlogを用いる、あるいはそのBlogそのものを「ビジネスブログ」と称することは、既に業界の約束事にさえなっている、といえば誰も異論はないだろう。また、筆者が2004年6月ごろからオフィシャルに使い始めた造語「イントラブログ」も、社内Blog、もしくは社員Blogという意味であれば、それなりの普及を見せている(少し歯切れの悪い言い方をしているのは、筆者がイントラブログという言葉に本来意図するところは、単に社員Blogではなく、社内LANをBlogやRSSによって活性化する、セマンティックなイントラネットのことだからである)。

 ビジネスブログを大別すると個人発信と企業発信の2つにまず分類できるが、本コラムにおいては個人発信のそれには触れず、企業発信Blogについてのみ解説したい。

 一般に企業におけるビジネスブログは、次の2つの型が存在する。

1. 社外向けBlog

 広報用や商品紹介サイトの構築をBlogによって行うケース。

2. 社内向けBlog(イントラブログの一部として)

 イントラネット内で、ナレッジマネージメントツールとして活用するケース。

 2005年5月の時点における企業のビジネスブログとは、ほぼ社外Blogのことを指しており、簡易CMS(コンテンツマネージメントシステム=Webサイトのコンテンツ編集、更新を行うツール)としてBlogを利用し始めた企業が実際数多く出現している。

 社内Blogに関する関心や検討は多く見られるものの、実際にそれを導入にまで至ったケースはまだまだ少ないと思われる。つまりは比較対象が何か、ということなのだが、社外向けに公開されているWebサイトを、簡単に更新可能でコスト的にもリーズナブルであるBlogに置き換えてみようと考えることは容易だが、社内システムであるEIP(社内情報ポータル)やグループウェアの代用として用いるには、Blog自体が比較的稚拙なシステムに見えてしまう点が問題の1つだと思う(しかし、Blogを支える基本的なフォーマットはXHTMLやRSSといった、オープンでありながら応用性や検索性、即時性に優れたものであり、それはインターネットにおいて数年前から多くの識者が論じている理想的なネットワーク、セマンティックWebの構成要素と等質なのだ)。

Blogの使い方を誤解しないために

 つまり、企業が自社のホームページの一部をBlogで代用することについては敷居が低いが、社内LAN上で日々使う業務システムとしては、良さそうとは思うがまだまだ得体が知れない、という見解が多いのだろう。

 ここで明確になることは、企業のビジネスブログの導入を考えるときに、マーケティングや広報の担当部署が主導になる場合(社外公開)と、情報システム担当部署や経営層が主導になる場合(社内限定)での温度差がある、ということである。

 この構造は自然なことであるが、この1年ほどの間に問題点が浮き彫りになると筆者は予測する。

 例えば、社外に向けたBlogを見てみよう。大きな話題を集めた日産のTIIDA Blogをはじめとして、多くの社外向けのBlogとは、通常の個人Blogとほとんど変わりない外観と、同じフォーマット(時系列順に記事が掲載され、コメントやトラックバックを使ったインタラクティブ性)を使っている。Movable TypeをはじめとするBlog構築ツールは高機能CMSと比べても遜色のない高度なサイト構築が可能であるし、各種のAPIを用いて、純粋な意味のWebサービスを容易に実現できるというのに、個人のBlogを超える本格的なWebサイト運営にこれを用いているのは、筆者の知る限り、日立製作所のBOXERカレン程度だ(その両社のサイトでさえ、基本的には更なるダイナミックな情報発信に備えているかというと、やや心もとない状況である)。

 この状況は、これら2つのサイトが出現してから1年以上が経過したというのにまったく変わりない。

 つまり、マーケティング主導がちでBlogが採用されるため、システム的に見るべきところがあるサイトはなかなか出てこないというジレンマがある。今や、SEO/SEM対策であるとか、世間的なもの珍しさが先にたってBlog採用に走る傾向にあるわけだが、ありふれてニュース性が無くなるのも遠くはない。その時に、Blogはつまらない、意味が無いと捨ててしまいかねないと筆者は危惧する。やはり技術的な進歩という裏づけを考えていかなければ、単なるブームで終わるだろう。

 逆に、社内Blogについては、マーケティングや広報担当者の果断さが導入にあっては必要になってくる。

 Blogを社員に書かせるということだけでなく、社内ポータルのBlogフォーマット化やRSSというメタデータの常態化により、情報共有をより低コストかつリアルタイムに行うことができるようになるためには、まず社内にBlogを導入してみる、という強引さが求められている。社内でRSSを発信するシステムが存在し、それが一般的になれば、イントラネットのメンターであるグループウェアやEIPなどの「先住者」も、RSSの発信や収集(=RSSリーダーなど)機能を具備してくるはずだ。

 さまざまなBlogツールベンダーが社内用システムを発売し始めているが、その更新情報を購読するために、例えば代表的Webグループウェアである「サイボウズ・ガルーン」の新バージョンでは、簡易RSSリーダー機能を搭載している(今後堰を切ったかのように、追随者が現れると思う)。

 Blogはソフトウェアというよりも、プロトコルに近い、というのが筆者の感想である。メールやWebそのものに近い、と思う。だから通常筆者は「Blogフォーマット」、という言葉を好んで使う。Blogを構築されたサイトそのものと捉えると本質を見誤る。企業においては今後その利用の仕方を、営業、マーケティング、広報部署と、情報システム部署、そしてできれば経営者がいっしょになってよく方向性を鑑みつつ、考案していくべきだと考えているのである。

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