どうなる? オープンソースのコミュニティー(1/3 ページ)

オープンソース・コミュニティーが変わってきている。オープンソースが一斉に営利化され、コミュニティーが踏みにじられれば、本来オープンソースから得られるはずの多くの恩恵は消失してしまう。

» 2005年06月13日 18時30分 公開
[Matt-Asay,japan.linux.com]

 オープンソース・コミュニティーが変わってきている。わたしには「オープンソース・コミュニティー」が何なのか、それさえよく分からなくなってしまった。1998/1999年に初めてオープンソースに参加したころ、コミュニティーには特別な何かがあった。エリック・レイモンド、ブルース・ペレンス、ロビン・ミラーその他のメンバー、開発者、コンピュータマニア、ハッカーなどなど。今日ではオープンソース・コミュニティーとして存在していると言えるのかどうかも分からないくらいだ。

 彼らがよく出現する場所(とりわけApacheとLinuxのメーリングリスト)を覗けば、今でも彼らの投稿を目にすることができる。だが、多くはNovell、IBM、Hewlett-Packard、あるいは新興企業など、オープンソースのゴールドラッシュを利用しようとする企業に雇われてしまった。それだけではない。片手間にプログラムを作る人、米Morgan Stanley(米金融企業)や英Unilever(一般消費財メーカー)などで開発に携る「初心者」のような普通の開発者たちが、コミュニティーにどんどん参加するようになってきている。

コミュニティーの問題点

 オープンソースがオタクの世界を脱し、本来の道を進んでいるのだから、この変化はおそらく肯定的に受け止めるべきなのだろう。だが、わたしにはやはり否定的に思えてならない。あまりにも急速に拡大し、コミュニティーが拡散すると、昔のように効率的に運営することができないと思うからだ。

 単に「昔はよかった」と懐かしんでいるだけではない。これはわたしの会社のビジネスにとっても重要な問題だ。最近、ある友人が「SUSEから離れる。もう戻らない」と言ってきた。SUSEはOSだ。彼の妻ではない。だから心配はしているが、夫婦療法が必要だとか、そういったドラスティックな話ではない。

 だが、心配なのはその理由だ。彼はコミュニティーによるSUSEのサポートに不満を感じている。Red Hatにしても同じことだ。彼は大規模な商用ディストリビューションを離れ、コミュニティーに相当な重点を置くUbuntuという新しいLinuxディストリビューションに移るつもりだ。彼によれば、最高の企業とはまずコミュニティーを育て、それからアドオン、拡張機能などで補完を行う企業であり、最低なのはすべてを手に入れようとし、目先の問題を回避することばかりコミュニティーに強いる企業なのだそうだ。

 これも1つの意見であり、Novellを含めLinuxを金儲けに利用しようと群がるCIOたちが同じように考えているわけでは決してないが、ベンダーが考慮すべき問題を指摘しているのは確かだ。われわれはLinuxやその他のオープンソースプロジェクトをこぞって営利化しているが、コミュニティーをないがしろにしてはいないだろうか。またそのためにベンダー(および顧客)は、口コミによる営業効果、企業の上を行くQAテストなど、本来オープンソースから得られるはずの多くの恩恵を失ってしまっていないか。これらの恩恵は、オープンソースが一斉に営利化され、コミュニティーが踏みにじられれば消失してしまうのだ。

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