仮想化技術の強化を視野に、IntelがVirtual Ironに出資

Intel Capitalは、仮想化ソフトウェア「VFe」を手がける新興企業、Virtual Iron Softwareに出資し、技術提携を結んだ。

» 2005年09月27日 20時05分 公開
[IDG Japan]
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 巨大チップメーカーIntelのベンチャーキャピタル部門であるIntel Capitalは、仮想化ソフトウェアを手がける新興企業、Virtual Iron Softwareの最近の資金調達ラウンドのリードインベスターとなった。今回のラウンドの調達額は850万ドル。これは9月26日に両社が明らかにしたもの。またVirtual IronとIntelは、非独占契的技術提携契約にも調印した。

 シリーズCラウンドとして実施された今回の資金調達には、新規出資者のIntel Capitalに加え、従来の出資者であるGoldman Sachs Group、Highland Capital PartnersおよびMatrix Management傘下のMatrix Partnersが参加する。

 Intelが仮想化ソフトウェアベンダーに出資し、技術提携を結ぶのは、今回が初めてではない。IntelおよびIntel Capitalは6月、サーバ仮想化ソフトウェア「Virtuozzo」メーカーであるSWsoftとも同様の提携を結んだことを発表している。

 Virtual Ironは2003年と2004年に、シリーズAおよびシリーズBの資金調達ラウンドをそれぞれ実施し、合計2000万ドルの資金を調達した。

 これまでVirtual Ironは、調達した資金の一部しか使っていない。同社の最高マーケティング責任者、マイク・グランディネッティ氏は9月23日、電話会見で「当社は極めて資金効率が高く、資金は主として製品開発に投入した」と語った。

 グランディネッティ氏によると、Virtual Ironでは、仮想化ソフトウェア「VFe」の開発を進めるとともに、技術者とマーケティングスタッフを増員し、販売部門を設立するために資金を使うつもりだという。同社の従業員数は51名だが、最近、マサチューセッツ州ロウエルに2万8000平方フィート(約2600平方メートル)のオフィススペースの賃貸契約を結んだ。現在、同社はマサチューセッツ州アクトンに本社を置くが、近々、新オフィスに本社を移転する予定だ。

データセンターの仮想化を実現

 以前はKatana Technologyという名前で知られていた同社は、2003年3月にスコット・デービス氏とアレックス・バシレフスキー氏が設立した。今年の1月にVirtual Ironという新社名に変更し、2月にVFeソフトウェアを発表した

 VFeは現在、Red HatおよびNovellのLinux OS上で動作するが、グランディネッティ氏によると、Virtual Ironでは来年半ばにWindows版もリリースする計画だという。

 「Virtual Ironは、データセンターのサーバ、ストレージおよびネットワークの仮想化を管理できるソフトウェアを提供することにより、仮想化市場で他社との差別化を図っている」とグランディネッティ氏は話す。

 「Intelが当社との提携に魅力を感じるのは、われわれがデータセンターの真の仮想化を実現しているからだ」(同氏)

 グランディネッティ氏によると、Intelとの技術提携契約により、Virtual IronはIntelの製品ロードマップを把握できるほか、Intel Virtualization Technology(VT)などの技術にも早期にアクセスできるようになるという。「Intelが市場に投入する圧倒的なマーケティング力も魅力だ」と同氏は話す。

 しかし顧客が使用するプロセッサ、サーバ、ソフトウェアに関しては、Virtual Ironは自社を「極めて寛容な」ベンダーであると位置付けている、と同氏は強調する。同社は既に、IntelのライバルであるAdvanced Micro Devices(AMD)とも協力しており、グランディネッティ氏によると、Virtual Ironはいずれ、AMDとも正式な提携を発表する見込みだという。

 「Virtual Ironでは、当社のソフトウェアのユーザーがサーバ分野におけるほかの仮想化環境を管理できるようにするための取り組みも進めている」とグランディネッティ氏は話す。対象となるのは、オープンソースのXen、EMCのVMware部門のコミュニティーソース製品「ESX Server」である。

 同氏によると、同社のシリーズCの資金調達では、戦略的マーケティングパートナーとともに200万ドルの資金を追加調達するオプションも含まれるという。これは、ベンチャー企業が積極的なマーケティングを通じて自社のソフトウェアを販売するための手段である。

 現在、Virtual Ironのソフトウェアは、連邦政府や金融サービス、製造分野などにおいて6社/組織の顧客が利用しているという。

 Intel Capitalの投資マネジャー、ルーシー・マックイルケン氏は、今回の出資の一環として、投票権のないオブザーバーとしてVirtual Ironの取締役会に参加することになる。

 「Intel Capitalはこれまで、資金調達をリードしたことは少ないが、今後はその機会を増やしていく予定だ」とマックイルケン氏は9月23日の電話会見で語った。同氏によると、Intel Capitalがリードする出資はすべて、極めて戦略的な性格を帯びたものになるという。

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