「しのぎを削るか」「一緒になるか」――合併を選択した新生シマンテックを語るチャフィンCMOInterview(2/3 ページ)

» 2005年11月10日 11時31分 公開
[聞き手:堀哲也,ITmedia]

ITmedia セキュリティとアベイラビリティを同様のコンテクストの中で考えることが浸透しているか、まだよく分からない点があります。

レオナルド氏 確かに、セキュリティとアベイラビリティは別個のものという意識があると思います。日本の状況を見ていると、セキュリティの担当者とアベイラビリティに携わっている人間は違っていたりします。ですので、現在の段階では、われわれはセキュリティとアベイラビリティを一枚絵の形で提供していくつもりはありません。

 ただ、先を見据えたとき、「セキュリティしかできません」「アベイラビリティしかできません」というのでは事業としてやっていけません。ますます両社のソリューションが混在していくような状況になっていくと思います。

 例を挙げましょう。最もセキュリティが高い情報というのはどういうことでしょうか? たぶん地下室にマシンがあって一切の接続がない状態という状態が、最もセキュリティの高い情報でしょう。しかし、これではビジネスの役に立たない情報になってしまいます。つまり、いかに必要な人たちに必要な情報が提供されているか、というアベイラビリティが重要になってくるわけです。

 しかし社内やパートナー、サプライチェーン全体の人たちなどさまざまな人にアベイラビリティ高く情報を提供するということは、反対にセキュリティの課題を抱えることになります。この2つの関係をよく自動車のブレーキにたとえるのですが、ブレーキというのは基本的には減速のために使うものでなく、より高速な運転を実現するために必要なときに制御するために使うのです。ブレーキがあることで、高速な運転ができるようになっているわけです。

 セキュリティも同様です。セキュリティを実現することで、必要な人に情報が行き渡らなくなったら困ります。セキュリティというのは、情報を必要とする人に提供するための高いアベイラビリティを実現するためにあるものなのです。

チャフィン氏 「セキュリティとアベイラビリティの垣根がなくなってくる」。そう言い出したのはわたしたちだと思いますが、米国の業界アナリストも同じような見方をしていることを付け加えさせてください。顧客は業界アナリストの意見をかなり参考にしているようで、米国においてはセキュリティとアベイラビリティにおける認識の変化が確実に見られるようになってきています。

ITmedia 新生Symantecは一枚絵を提供するつもりはないとのことですが、両社の製品はスイート製品のような形で統合されていくわけではないのでしょうか?

レオナルド氏 今後も既存のセキュリティとアベイラビリティの2つテクノロジーに投資を続けていくことを約束していますが、われわれが目標としているのは、いろいろなものをすべて盛り込んだ統合型ソリューションではありません。顧客にとって必要なソリューションを提供するのが目的なのです。顧客が「アベイラビリティのソリューションはいらない」と言っているのに、統合型でなければというようなことはしません。二本の軸を持つソリューションをどういう形で提供したら、顧客にとって効果的か、そのことに主眼を置いています。

 大規模な顧客がいて、両方のソリューションを必要としていた場合、両社の製品が調和を持って機能するという意味での統合を目指しています。仮に顧客にEMCのソリューションが入っているのに、それを捨てないとSymantecの新しいソリューションを導入できないといったことはないようにしないといけません。既存の資産を生かしながら必要としているパーツを提供できる、両輪立てで行きたいと考えています。

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