IBMのUbuntu認定はDebianの勝利

IBMがUbuntu 5.04上でDB2 Universal Databaseの動作を確認したことは、Debianにとって大きな前進である。ついに第3のグローバル・エンタープライズLinuxという、本来あるべき位置に立ったのだとマードック氏は話す。

» 2005年11月25日 09時37分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]

 Ubuntuプロジェクトは、IBMがUbuntu 5.04上でDB2 Universal Databaseの動作を確認したと発表した。Ubuntuは昨年最初のバージョンをリリースしたばかりのLinuxディストリビューションである。これにより、容易なインストールと使いやすさを標榜するUbuntu上で、時間を要するさまざまな作業を自動化できるように設計されたデータベースが使えることになる。

 Ubuntuは、2005年10月にサーババージョンをリリースしたばかりで、来年4月にはエンタープライズエディションのリリースを予定している。そうした時期でのIBMの認定である。Ubuntuと同プロジェクトの協賛企業Canonical Ltdの戦略的提携およびパートナー担当マネージャであるマルコム・イェーツ氏は、このリリースが今後の認定のベースになるだろうと述べている。

 イェーツ氏によれば、Ubuntuプロジェクトの目標は、デスクトップユーザー向けに実現した使いやすさを大規模なシステムとネットワークにも提供することに移っている。従って、DebianのアーキテクチャーとアーキテクチャーをベースとするUbuntu Linuxのサーババージョンやエンタープライズバージョンがリリースされるのは時間の問題だったという。「Ubuntuを次のサポートプラットフォームとして選択したことに、DB2製品チームの洞察力が現れていますね」

 IBMはDB2を利用する際の推奨オペレーティングシステムだけでなく、動作の確認ができたオペレーティングシステムも公表している。同社のWebサイトに掲載されている動作確認済みLinux環境一覧には、DB2が動作するディストリビューションが12種――推奨ディストリビューションとしてRed Hat Enterprise Linuxの2バージョンとSUSE Linux Enterprise Serverの2バージョンを含む5種、動作確認済みプラットフォームとしてUbuntu、Mandriva Corporate ServerTurbolinuxサーバ・ソフトウェアの2つのバージョンを含む7種――挙げられている。

 Debian Projectの創設者イアン・マードック氏は、IBMの認定はUbuntuにとって大きな前進だと歓迎している。Debianベースのディストリビューションには独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のサポートがなく、これが長年の弱点になっていた。したがって、IBMがDebianベースシステムに目を留めたことは、Ubuntuプロジェクトのコミュニティー全体にとって大きな意味がある。

Debianの立場

 「Debianは弱点を克服し、ついに第3のグローバルエンタープライズLinuxという、本来あるべき位置に立ったのです」とマードック氏は述べた。しかし、コアプラットフォームとしては、この認定がUbuntuに限定されないことが望ましいとも述べた。「もちろん、Ubuntuなどの個別の派生ディストリビューションではなく、直接Debianを認定してほしいと思います。ISVコミュニティーに対する代表の立場を巡ってDebianの各派がしのぎを削るのは願い下げですからね」

 マードック氏自身のProgenyを含む、KnoppixXandrosMepisなど、Debianをベースとする主要ディストリビューションはDebian Common Core Alliance(DCCA)を組織しており、マードック氏はコア自体の保護と継続を図っている。DCCAはLinux Standard Base(LSB)に準拠しているが、少なくともDebianシステムの基本部分は相互に一致させようと努めている団体である。

 「思うに、Debianを巡って私たちが協力して作り上げてきたビジネス環境は、個別に動いていては決して達成できなかったでしょう。たとえ、それを壊さないように市場を得ようとしても。そうしたこれまでの動きがまったく無意味になることはないと思います」(マードック氏)

 UbuntuとDCCAの協調についてイェーツ氏は何も発言していないが、マードック氏はUbuntuの創設者であり後援者でもあるマーク・シャットルワース氏を含むUbuntuプロジェクトの関係者と相互協力について話し合ったと述べている――ただし、Debianコミュニティーの代表としてではなく一人のメンバーとして話し合ったのであり、両者には「大きな違いがある」と述べている。

 また、何らかの動きを期待して、Ubuntuが、バックポートのソースコードパッチでしかDebianコアに寄与していない点について4月のブログで提起した問題を繰り返した。マードック氏は主にDebianコミュニティーの統合を維持するために活動しており、そうしたパッチは「有意義ですが、Debian環境全体を成長させるほどの意味はありません」と述べた。

 ところで、マードック氏によると、DCCAも独自に動作確認と認定のプログラムを進めているという。だが、マードック氏は、多くのISV、独立系ハードウェアベンダー、OEMと協力していると述べるだけで詳細を語ろうとせず、数週間以内に詳細を明らかにするが、完全な開示は近い将来DCCAのパートナーと認定プログラムが正式に発足した後になるという。

 「大まかには、製品がDCCAで認定されれば、すべてのDCCA認定ディストリビューションで認定されたことになるような制度です。DCCAの各メンバーに個別に出向いて交渉する必要はありません。あるサービスを提供するベンダーが1社だけということはありませんから、今のサポートパートナーのサービスに満足できなければプロバイダーを変えることができます。認定を改めて取り直す必要はありません」(マードック氏)

 また、Ubuntuが提供しているサービスとよく似たサービスを、認定したすべてのプラットフォームに対して提供するという。

 Ubuntuはリリースサイクルを6カ月にし、サポート機能を絶えず充実させてきた。頻繁に機能を改善し、顧客が利用可能なサービスを増やしている。直接サービスだけでなく、Canonical経由、Webフォーラム、メーリングリスト、IRCチャネルによるサービスを追加してきているのだ。イェーツ氏によれば、Ubuntuの5.10サーババージョンではまだサポートの拡張はないが、サーバを提供したことで「ハードウェアとソフトウェアの両方の認定に関して計り知れない経験が得られたことは確かです」と言う。

 そして、Ubuntuはプロプライエタリソフトウェアを提供するつもりはまったくないと繰り返す一方で、さらなる認定と動作確認を得る活動を進めつつ、エンタープライズバージョンを提供し、そのためのサポートサイクルを広げようとしていることを、さらに多くの企業に知ってもらいたいと述べた。

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