とうとう正式に発表されたDebian Common Core Allianceだが、当初参加するとされていたVA Linuxの名前はなかった。これが意味するところについてVA Linuxの佐渡氏に聞いた。
既報のとおり、現在開催中のLinuxWorld Conference & Expo San Francisco 2005において、ProgenyをはじめとするDebianベースのディストリビューションを扱う企業・団体数社が集結し、Debian Common Core Alliance(DCCA)を結成したことを明らかにした。
しかし、DCCAにはUbuntuなどは加わっていないほか、事前の報道でDCCAに加わるとされていたVA Linuxも今回の参加を見送っている。ITmediaではVA Linux Systems Japanのマーケティング部長の佐渡秀治氏にコンタクトを取り、Debian Common Core Allianceに対しての印象などを聞いた。
ITmedia 事前の報道ではVA LinuxはDCCAに参加するとの記事もありましたが、一転してVA LinuxがDCCAに入らなかった理由はどのあたりにあるのですか?
佐渡 VA LinuxがDCCAへ参加するよう再三要請されていたことは事実ですが、われわれがDCCAに参加する意思を示したことは一度もありません。
ただし、われわれはDCCAに参加する各社の行動は支持していますし、これによってDebianがISVの支持を得られる可能性を創出したことは、Debianの発展にとって喜ばしいことだと思います。
現時点でDCCAに加わらなかった理由は、DCCAが急に立ち上がってきたこともあり、今後、どのような活動をし、どういことを目指していくのか、明確には把握していないことに加え、単純に我々には参加に踏み切るだけのメリットを見い出せなかったということです。
ならびにDebian Projectとの関係においてまだ理解を獲得していないように見えるということです。これらの点が明らかになれば、将来VA LinuxがDCCAに参加していくことも大いにありだと思います。
ITmedia LSB準拠はメリットではないのですか?
佐渡 LSB準拠は望ましいことですが、それだけではDCCAに参加する理由になりません。現在のSargeでもLSB準拠は難しいことではないですし、次のDebian GNU/Linuxのリリースでは準拠させるというTODOもありますので、それで問題ないと思います。われわれの戦略パートナーである中国のSunWah Linuxでは中国市場の特性を考えるとLSBのような標準は非常に重要となりますが、VA Linuxにとっては最優先の事項ではありません。もちろん、われわれもLSBを軽視してるわけではなく重要だとは考えています。VA LinuxにとってはDebian ProjectがリリースするDebian GNU/LinuxがLSB準拠するのは歓迎なのですが、Debian Projectとは別の組織が準拠というのは意味が薄れるのではないかと懸念します。
現在、企業がDebianにコミットするとすれば、LSB準拠やISVの支持というよりも、ボランティアスタッフには難しい仕事、例えば長期サポートやセキュリティアップデートなどをDebianを支持する企業でうまくシェアしていけないかなと思いますし、それこそユーザーが求められているものだと思います。これをDCCAに入るような企業が外部からではなく内部に入ってコミットできると素晴しいのですが、そういった方向にDCCAが動いていくのであれば、われわれも大いに協力できるのではないかと考えています。
そもそも、LSB準拠に限らず、特定企業だけが集まってDebian Projectとは関係なくDebianに関する物事を決定しようというのは、VA Linuxの考え方とは少し異なります。VA Linuxは、特定企業の制御下にはないベンダーニュートラルだからこそDebianを応援していますし、自社製品にも採用しています。われわれの感覚では、DCCAはDebian Projectのサブプロジェクト程度の位置に収まるのが妥当で、独立したところにいるのであればDebianとは名乗らずに線を引くべきだと思います。そういった意見交換も今後、続けながら、お互いに協力できる関係作りを目指したいと思います。
ITmedia LSB準拠とDCCA結成ということはDebianがISVの支持も得やすくなり、VA Linuxにとってはメリットではないのですか?
佐渡 それはまったくおっしゃる通りですね。ですので、DCCAの各社の動きそのものは別に否定はしませんし、その成果がDebianへ還元されるなら歓迎すべきことです。ただし、それがDCCAに属する企業・団体ではなくDebian Projectとしてメリットを亨受できる体制にできないかなと思うのです。例えば、DebianがフリーなOSだとは言っても、DCCAのお墨付きがなければISVサポートもLSB準拠もないということになれば、Debian Projectそのものへの求心力をそぐことにも繋がりかねませんので、それは避けたいと思います。
ITmedia Debian ProjectとDCCAの関係について、DCCAはDebian Projectと協調していくと話していますが?
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