ポッドキャスティングを活用するIBMの従業員

IBMでは社内での情報共有のために、社員自らの手で作るポッドキャスティングに取り組んでいる。ツールとガイドラインを社員に与え、その成果はコスト削減や社員の意識向上などに現れているようだ。

» 2005年11月28日 09時30分 公開
[IDG Japan]
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 音声記事を社内で発表するためのツールと社内ポッドキャスティングガイドラインを32万人の従業員に与えると、何が得られるのだろうか? IBMの経験では、電話料金の削減、そしてインフォーマルな社内コミュニケーションの改善と活発化というメリットが得られたようだ。

 IBMは8月、同社としては初めて正式にポッドキャスティング分野に進出すべく、「IBM and the Future of...」(IBMと○○○の将来)と呼ばれる一連のプログラムを立ち上げた。これは、社内の科学者およびスタッフがドライブ、ショッピング、バンキング、都市計画などのトピックについて語るというもの。ポッドキャストとして配信されるのは、iPodなどの携帯型オーディオデバイスで再生可能なオーディオファイルで、リスナーはソフトウェアを使って関心のあるポッドキャスト番組を登録すれば、新しい記事が自動的にダウンロードされる仕組みだ。

 ニューヨーク州アーモンクに本社を置くIBMは以前にも時折、自社のイントラネット上で社内向けポッドキャストを掲載していたが、今回の新しい「Future」シリーズは、同社のポッドキャスティングの取り組み拡大を促すものとなった。

 IBMは、昨年採用した社内ブロギングポリシーと同様のポッドキャスティングポリシーを作成し、オーディオファイルのアップロードおよびRSS(Really Simple Syndication)を通じたシンジケート(記事集約)を行うためのツールをひそかにリリースした。そして、IBMのスタッフが何を作成するのか見守ったのである。

 Futureシリーズのまとめ役を務めるIBMの投資家担当広報マネジャー、ベン・エドワーズ氏は、「スタッフはすぐに飛びつき、いろいろなことを試し始めた。非常に興味深いモデルも登場している」と話す。

 エドワーズ氏が気に入っている記事の1つが、IBMのサプライチェーン部門の週報である。同部門では従来、関係するすべての従業員と毎週、テレカンファレンスを行っていた。この会議には、7000人もの従業員が参加していた。現在、サプライチェーン部門の幹部が毎週、ポッドキャストをアップロードし、スタッフは好きなときにそれを聞くことができる。

 

 「コストが劇的に低下した。加えて、何千人ものスタッフが、毎週の会議のためにスケジュールを調整する必要がなくなった」とエドワーズ氏は話す。

 英国にあるIBMのHursley研究所では、所内のスタッフおよびそのプロジェクトに関する話題を提供することを目的としたコミュニティーポッドキャストを立ち上げた。このポッドキャストは、ラボの研究者や特殊業務を担当しているスタッフ(ラボの安全衛生管理者など)とのインタビューなどで構成される。

 そのほかのIBMスタッフも、同社における各人の特殊な状況を紹介するためにポッドキャスティングを行うようになった。入社間もないIBMスタッフの1人は、ほかの新入社員のためのTipsを掲載したポッドキャストを作成した。また、IBMのオフィスに出社する機会がめったいないIBMスタッフの仕事を紹介する連載記事を書き始めたモバイルスタッフもいる。

 IBMの社外向けポッドキャストも、同社に満足をもたらしている。Futureシリーズは、開始後最初の3カ月間で4万件のダウンロードを記録した。現在、同シリーズでは6つの特集が提供されている。

 「ダウンロード件数については、特に具体的な目標はない。基準となる指標がないからだ。これは非常に新しいメディアであり、一種のニッチだ。どんなオーディエンスが集まるのか予想できなかった」とエドワーズ氏は話す。

 エドワーズ氏によると、IBMによるポッドキャスティングの取り組みの最初の数カ月で同氏が学んだのは、作成者はサウンド品質についてあまり心配しなくても大丈夫だということだ。IBMは一部のレコーディングをスタジオで行っているが、最近では、ポータブル型レコーダーやハンドヘルド型レコーダーも試しているという。

 「ほかのポッドキャストを聴いてみると個人制作の品質だ。しかしそれも1つの魅力となっている」(エドワーズ氏)

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