内部統制は情報システムにどうかかわるのか?丸山満彦の「内部統制」講座(4/4 ページ)

» 2006年01月06日 08時00分 公開
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N+I そこにおける米国との違いは何でしょう。

丸山 日本で導入しようとしている内部統制監査は米国のCOSOモデルと若干異なる部分もありますが、基本的にCOSOのモデルを踏襲しており、米国の制度と同じであると考えてよいでしょう。ただ、内部統制監査が「なぜ必要か」という議論をもう少し深くしてほしいと思います。

N+I そうした点について、個人的な感想や見解はありますか。

丸山 企業の不正は、たとえば取締役会が不正に関与している場合、現場のマネジメントに対するチェックをいくら重ねても、最終的な不正を見抜くことができません。内部統制で必要なのは、現場のマネジメントに対する不正防止だけでなく、経営者による不正をどのように防止できるかという議論もあわせて深めていくことです。COSOでいう「統制環境」に対する議論をもっと深める必要があると思います。

N+I 先ほど、日本では取締役会と企業マネジメントが一体化しているという話がありましたが、その場合、取締役会に対してある種の制約をかければ、現場における各種プロセスのチェックは適正に行えるようになりますか。

丸山 取締役にどのような制約をかけるべきかは重要な問題です。結局、現場のマネジメントは経営層の指示どおりに動くという仕組みなので、取締役が間違ったことを考えておかしな指示を出すと、マネジメントが正しく機能していても結果的に間違った展開が生まれてしまいます。経営者の誠実性に関する問題ともいえます。

内部統制に関連する動き

N+I 日本におけるそのほかの動きとしては、何がありますか。

丸山 会社法の改正が挙げられます。これについては、規制を緩和して取締役会の自由度を高くしていく方向です。たとえば、従来は取締役会の無過失責任であったものを過失責任に変えたり、大企業の場合は取締役会や会計監査人が必須ですが、企業規模によっては取締役の配置だけでよいようにするなど、さまざまなパターンを作っています。会社法の改正が情報システム部門に直に影響するとはいえませんが、全体の流れの中でとらえれば、影響する範囲を押さえておく必要はあるでしょう。

N+I 企業の行動に対して、法規面でのさまざまな変更など、今なぜ、そうしたことが起きているのですか。発端は企業不正などでしょうが、グローバル化といった面ではいかがでしょう。

丸山 グローバル化も当然、影響しています。企業に対する投資を考えた場合、たとえば米国の企業が日本企業に投資する際、米国のルールが正しいかどうかという問題ではなく、米国人が理解できないルールを作っても、日本への投資にはつながりません。これは何も米国にかぎった話ではなく、相手がフランス企業やイギリス企業でも同様だと思います。つまり、グローバル化の流れに沿っていないものは受け入れられないため、日本への投資を妨げてしまうことになります。

 国際社会におけるプレゼンスを高めるには、グローバル化の流れには逆らえないでしょう。これは、日本企業が海外に進出する場合にも同じことがいえるでしょう。日本は海外への情報発信がうまくできていないと思います。米国のルールがおかしいのではなく、日本の考え方をグローバル化するという発想が必要だと思います。

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