巨人IBMは今なお健在Magi's View

Microsoftのビル・ゲイツ氏は、自分が夜も気になって眠れない競争相手とはGoogleやAppleではなくIBMだ、と述べたそうだ。競争相手の増加や、時折しでかしたマーケティング上の大失敗にもかかわらず、IBMは今でも砂上に巨大な足跡を残している。

» 2006年01月26日 17時04分 公開
[Lauren-Rudd,IT Manager's Journal]
SourceForge.JP Magazine

 ITが普及し始めた初期のころは、「IBMを買っておけば間違いない」と言われていた。年月が経つにつれて、さしものビッグブルーも影が薄くなってきようだが、競争相手の増加や、時折しでかしたマーケティング上の大失敗にもかかわらず、同社は今でも砂上に巨大な足跡を残している。

 Reutersの報告によると、Microsoftのビル・ゲイツ氏は、ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)の基調講演前の記者団との談話の中で、自分が夜も気になって眠れない競争相手とはGoogleやAppleではなくIBMだ、と述べたそうだ。

 GoogleはMicrosoftの30年の歴史の中で最も恐るべき脅威なのではないかと質問されると、ゲイツ氏はきっぱりこう答えた。「そうではない。コンピュータ業界最大の企業は断然IBMだ。IBMはMicrosoftの4倍の従業員を抱えており、収益もはるかに大きい。IBMはいつでもわれわれの最大の競争相手である。ただマスコミがIBMの記事を書きたがらないだけだ」

 IBMはコンピュータサービス、ソフトウェア、ハードウェアのベンダーであり、Microsoftに対して明らかに対決姿勢を取っている。例えばOSを考えてみよう。IBMはLinux界の大手ベンダーであり、MicrosoftのWindowsに真っ向から勝負を挑んでいる。Gartnerによれば、IBMは2005年第1四半期の全世界のLinuxサーバの売上第1位を占めた。さらに、IBMの全能ぶりを証明するがごとく、同社のLinux サーバ売上の40%は、x86ベースのシステムではなく、自社製のPowerプロセッサを搭載したサーバからのものである。

 この情報はウォールストリートでも評価されている。Merrill Lynchの調査アナリストであるリチャード・ファーマー氏は、先日、サーバユニットの規模は今後緩やかな縮小傾向が続くと予想されるが、IBMは引き続き重要な役割を果たすだろう、とする顧客向け文書を発表した。

 「サーバユニットは第3四半期には安定した動きを見せていたが、グローバルなサーバ市場は、キラーアプリケーションの不在と置き換え需要の衰えにより、今後の数四半期で緩やかに縮小していくと予想される」とファーマー氏は調査ノートに記述した。

 全世界的に見て、第3四半期のサーバユニットの販売数は11%増加し、2四半期連続で10%を超える成長を見せ、8%の売上増となった。しかしファーマー氏は、2006年のサーバユニットの販売数および売上の増加率(それぞれ9%、2%)は、2004年の数字(それぞれ19%、6%)に比べてどちらも大きく低下していることを指摘している。

 ファーマー氏は、Sun Microsystemsはサーバ市場で大きく減速しそうだが、IBMとDellは市場シェアを伸ばすだろうと述べた。

 このようなIBMに対する高評価が同社の株価に反映されているかどうかを確かめるために、私はIBMの本質価値をざっと算出してみた。直近12カ月の収益78.3億ドルを基準とし、10.94%(ウォールストリートの5年間の平均収益成長率)の比率で成長するものとして、そこから11%(S&P 500の平均収益)を割り引いた結果、IBMの今後10年間の収益の正味現在価値は781億ドルとなった。

 1年目以降の価値を求めるために、収益成長率を6%に下げ、割引率を12%に上げたところ、正味現在価値は1380億ドルとなった。2つの数値を加算し、そこからIBMの長期借入金144億ドルを引いて、発行済み株式の総数15.8億株で割ると、1株当たりの本質価値は125.51ドルとなった。ちなみに、先日のIBM株の終値は84.71ドルだった。

 PERアプローチを用いて、2006会計年度の1株当たりの私の収益予測5.72ドルに現在のPER率16.57を掛けると、今後12〜15カ月間の株価の資本増加の可能性11.9%に対して、1株当たりの価格は94.78ドルとなる。

 IBMには、買収によってソフトウェアビジネスやサービスビジネスを拡大し、同社のハードウェア製品の性能を引き続き向上させていくことを期待しようではないか。そうすれば、確実な収益増に結びつくはずだ。

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