Red Hatの財務状況を再点検Magi's View

6カ月前、私はRed Hatについて幾つかの予言をした。その予言の多くは、半年後のいま実現している。ただ、振り子がいささか大きく振れすぎたようにも思える。

» 2006年01月23日 15時44分 公開
[Lauren-Rudd,IT Manager's Journal]
SourceForge.JP Magazine

 6カ月前、私はここにRed Hatについての記事を書き、幾つかの予言をした。収益見通しについても、幾つか期待できる数字を並べた。その予言の多くは、半年後のいま実現している。ただ、振り子がいささか大きく振れすぎたようにも思える。

 7月12日付の記事「それでもRed Hatに投資しますか」(But would you invest in Red Hat?)の中で、私はRed Hatの真正価値が23.27ドルであることを示した。そして、2006事業年度における私の収益予測が1株当たり32セントであること、これに今後12カ月(Trailing Twelve Month:TTM)の株価収益率(PER)57をかけると、18.24ドルという予想株価が得られること、当時の株価が14.27ドルであり、従って次の8カ月間に28%の株価上昇が起こる可能性があること、を述べた。

 Red Hatの第3四半期が11月30日で終わり、12月21日に決算発表があった。決算内容は素晴らしいもので、四半期総収入は7310万ドル。昨年同期比で44%増、前期比で11%増という優秀さだった。サブスクリプション収入は6020万ドルで、前年比で54%増、前期比で11%増となっている。

 報告された営業利益は1870万ドルで、前年同期からは147%、前期からは57%の増益だった。四半期純利益は2320万ドル。こちらも前年比114%、前期比39%の増益である。1株当たり収益で見ても、今年度第3四半期は0.12ドルで、これは前期の0.09ドル、前年同期の0.06ドルから増えている。

 また、Red Hatの粗利益率は84%にのぼり、現金と短期投資の総額は10億ドルを超えた。これらの数字をウォール街が見逃すはずはなく、昨日の大引け時に、Red Hatの株価は29.05ドルをつけていた。私は同社事業年度末の株価を18.24ドルと予測していたが、その年度末まではまだ2カ月と少し残している。Red Hatの株価は6カ月で104%も上昇したことになる。

 Red Hat株は過大評価されているのだろうか。この疑問に答えるには、同社の真正価値を見直すことから始めなければならない。現在のTTM収益は5170万ドルである。この数字が、今後10年間、毎年25.78%(ウォール街が見るRed Hatの5年間の平均収益成長率)ずつ大きくなっていくとし、その結果を年率11%(S&P500の平均収益率)で割り引くと、今後10年間の収益の現在価値が得られ、11億ドルとなる。

 11年目以後については、収益成長率を6%に減じ、割引率を12%に増やす。これで、正味現在価値は31.9億ドルとなる。この2つの数字を合計し、そこからRed Hatの長期債務5.7億ドルを引いて、発行済み株式数1億7700万で割れば、1株当たりの真正価値が得られる。実際に計算すると、20.99ドルとなる。

 ご覧のとおり、この真正価値は現在の株価をかなり下回っている。私はRed Hatの2007事業年度の収益を1株当たり43セントと予測しており、これに基づいて問題を分析してみよう。Red Hat株は、現在、PER率84.5で取り引きされている。このPER率が、2007会計年度(2007年2月〜)中ずっと維持されるとすれば、株価は約36ドルと予測され、これは12か月で29%の上昇に相当する。

 問題は、Red Hat株が収益の84倍超の率を維持できるとは思えないことである。このPER率を別の角度から捉え直してみると、仮にRed Hatがすべての収益を株主に分配したとして、株主が初期投資を回収するのに84年かかるということである。比較のために他社の数字をあげると、Microsoft社のPER率が約23、Nevellが約10、Ciscoが20近辺と、いずれも格段に小さい。もちろん、今後、収益は増大し、PER率は下がるだろうが、収益が例え3倍になっても、PER率は25を上回り、依然として高すぎる。

 さて、いまRed Hatのソフトウェアを使用している――あるいは、使用を考えている――人にとって、これは何を意味するだろうか。本質的には、ウォール街からの激励の言葉と受け取れる。Red Hat株が過大評価されているのは、ウォール街が今後12から24カ月の間にRed Hatに多くを期待していることの現れである。

 だが、Red Hatの株価には投機的要素も含まれており、私の現在の収益予測によれば、それは維持できない。おそらく、20ドル台前半が納得できる株価ということになろう。では、株価は来週にも下落するのだろうか。その答えはノーである。また、現在、オープンソースソフトウェアの世界が拡大し、人気、知名度ともに上昇一途だという状況から見ても、しばらく下落とは無縁なのかもしれない。だが、投機バブルというものは、形状も規模もさまざまながら、最も思いがけないときに破裂するという1点だけは共有している。

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