「人とアイデアをつなぐプラットフォームを提供したい」とアドビ新社長

アドビの事業戦略説明会で、新社長のイルグ氏は、「情報こそがビジネスのパワー。人とアイデアの深いエンゲージメント(かかわり)を追求したい」と話した。

» 2006年02月07日 16時58分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 アドビシステムズは2月7日、都内のホテルでプレスやアナリスト向けに事業戦略説明会を行い、Adobe SystemsとMacromediaとの合併に伴い打ち出された「Adobeエンゲージメントプラットフォーム」戦略を披露した。

 「情報こそがビジネスのパワー。人とアイデアの深いエンゲージメント(かかわり)を追求したい」と話すのは、この1月、日本法人の社長に就任したばかりのギャレット・イルグ氏。1999年から2002年まで日本BEAシステムズの社長を務めたことでも知られる。

日本でのビジネス経験が豊富なイルグ新社長

 Adobeも昨年12月、Macromediaの買収を完了したばかり。PDFとFlashという「至るところに普及しているユニバーサルクライアント」を擁し、プラットフォームとして統合された両社のソフトウェアスタックを活用すれば、「企業は顧客、パートナー、そして従業員らとコミュニケーションをより良く、より迅速に、そしてより安価に実現できるようになる」(イルグ氏)という。

 Adobeは新年早々、携帯端末や家電機器向けのFlash Player新版「Macromedia Flash Lite 2」と、家電機器向けに最適化された「Flash Player SDK 7」を発表している。イルグ氏は、携帯端末がもたらすコミュニケーションのリアルタイム化について特に触れ、優れたモビリティの機能を提供していくことで、日本市場がリードするこの分野に引き続き注力していくことも明らかにした。

 「Macromediaと合併したことで、デジタルユニバースの境界をさらに拡大できる」とイルグ氏は話す。

Macromedia Flexが加わる企業ソリューション

 もちろん、モバイル市場以上に日本法人がフォーカスしていくのが、エンタープライズや、そこで働くナレッジワーカーの市場だ。

 エンタープライズ市場では、セキュアなPDFを作成し、そのワークフローやライフサイクル全体を管理する「LiveCycle Policy Server」が核となり、リッチインターネットアプリケーション(RIA)を容易に構築できる「Macromedia Flex」や、Webカンファレンシングの「Macromedia Breeze」が加わり、より製品ラインが拡充された。

 Flexは、Flashの開発経験がなくとも、Flashベースのユーザーインタフェースを自動で生成できるツール。オブジェクト指向のアプリケーションフレームワークである「Flex Framework 2」、Eclipseベースの統合開発環境である「Flex Builder 2」(コードネーム:Zorn)、そして既存システムのデータに接続する「Flex Enterprise Services 2」から構成され、既存のビジネスロジック層やインテグレーション層に手を加えることなく、プレゼンテーション層を強化し、RIAを実現してくれるエンタープライズ向けの製品だ。Adobeは2月1日、新しい「Flex 2.0」の公開β版をリリースしたばかりだ。

 イルグ氏は、製造、通信、金融、政府といった、主要な産業ごとに法人営業部隊を強化し、こうした「エンゲージメントプラットフォーム」を売り込みたいと話す。

 「主要な産業分野を熟知しているパートナーらとの協業がカギとなるのは言うまでもない。彼らとウインウインの関係を築きたい」とエコシステム構築の重要さもイルグ氏は口にする。

 事業戦略説明会では、3D CADデータをドラッグ&ドロップするだけでPDFに取り込み、編集できる「Adobe Acrobat 3D」のデモも行われた。パーツの階層構造を取り込むことも可能で、付属のツールを使えば、パーツを分解することもできる。もちろん、配布された3Dデータは無償のAcrobat Readerで共有できるし、LiveCycle Policy Serverと組み合わせれば、外部のパートナーらと共有する際にも閲覧できる人を限定したり、無償のAcrobat Readerでも注釈を書き込めるよう設定できる。

 デモを担当したマーケティング本部ナレッジワーカー部の市川孝部長は、「製造業、建設業のコラボレーションに革新をもたらす」と話す。

 「アニメやゲーム、あるいはデジタル家電などで、日本は高く評価されている。デザインプロセスや製造プロセスもデジタル化によって革新できれば、日本の強みをさらに発揮できるはず」とイルグ氏は話す。

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