昔の商店主に顧客主義を学ぶコンタクトセンターが企業の顔になる(1/2 ページ)

昔の商店では店主が顧客の顔、名前、嗜好、家族構成に至るまで覚えていて、商売を繁盛させてきた。コンタクトセンターに求められるのも同じことなのである。

» 2006年02月08日 08時27分 公開
[杉山正二,ITmedia]

 オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」

杉山正二(アールエスコンポーネンツ取締役)

 企業は、顧客との接点をどのように管理すればいいのか。このシリーズでは、CRMの観点からコンタクトセンターに焦点を当て、効果的な構築、運営方法について論じていきたい。

 初回は、顧客との接点を管理することの重要性を論じ、質の高いコンタクトセンターが求められる背景を説明する。2回目以降では、実際にセンターに求められる機能や活用方法、人材育成、今後の課題などを、アールエスコンポーネンツの事例をベースに具体的な例を挙げながら話を展開する予定である。

昔の商店からマスの論理へ

 コンタクトセンターが注目されるようになった背景にCRM(Customer Relationship Management)の考え方がある。CRM自体は決して新しいものではない。およそ商売をする人にとっては持っていて当たり前の感覚と言ってもいい。昔の商店であれば、店主が顧客の顔、名前、嗜好、家族構成に至るまで、さまざまな情報を覚えていて、一人一人に対して個別に対応し、関係を緊密にすることによって商売を繁盛させてきた。

 しかしながら、大量生産、大量消費の高度成長期には、個々の顧客という視点が忘れられ、顧客を「同じ要求を持つマスの存在」ととらえて、提供する側の論理(すなわちプロダクトアウト)で企業活動が行われるようになった。しかし、そういった方法が有効であった経済環境にも変化が訪れ、現在はまた原点に回帰して、顧客第一主義の視点に立った企業活動(すなわち、マーケットイン)を行わない限り、ビジネスの成功が難しくなってきている。CRMという言葉とともに、顧客との関係を構築することの重要さが見直されているのである。

 CRMとは、顧客との良好な関係を構築し、発展、維持していくことが顧客の企業に対するロイヤリティを高め、最終的には、企業の業績向上につながるという考え方である。ここで、「顧客」という名前の顧客はいないことにも注意しなくてはならない。すべての顧客を異なる存在としてとらえ、個別の接し方をしなければならない。

 言い換えれば、製品マーケティング中心主義から顧客所有中心主義へと転換することを時代が要請しているとも言えよう。

 企業側も、顧客に集中することの重要性にようやく気付き、本腰を入れ始めたのである。ここで、企業は顧客が何を求め、何に困っているのか、何に感動するのか、などを理解することが大事だ。ここから、顧客のニーズを的確に把握し、そのニーズを製品やサービスの創造に反映させる。気付けばまさに、企業の原点に立ち戻ることなのである。

 その際のキーワードも常に顧客である。なぜならば、「企業は顧客およびその満足によって存続している」からである。企業の利益は結果であって目的ではない。目的はあくまでも顧客満足にある。

顧客を知るために

 顧客を知ることの重要性については十分論じたとして、次に「顧客を知るにはどうすればいいのか」を考えてみたい。

 それには、何を置いても「顧客の声を聴く(聞くのではない)」ことである。声とは、企業が顧客に提供した製品やサービス、情報、広告、訪問、電話を含むさまざまな働き掛けへの反応のことである。例えば、注文、問い合わせ、クレーム、意見、そして、「無反応」も含まれる。

 では、顧客の声をどのように集め、活用していけばいいのか? 

図1 顧客とのコミュニケーションチャネル

 図1に示すように、企業と顧客の接点にはさまざまな種類がある。マーケティングや営業部門の担当者、コンタクトセンターのエージェント、Webサイト、顧客窓口の担当者などが挙げられる。また、チャネルとしては、営業担当者とのフェースツーフェースはもちろん、電話、FAX、ホームページや電子メール、テレビ、新聞、雑誌、Web媒体などのマスメディア、それから、最近では最も重要なチャネルとも言われる口コミなども挙げられる。

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