Sarbanes-Oxley法でGPL違反が重罰化する?Magi's View

GPLを無視した企業にはどのような罰が待っているか、ご存じだろうか。これまでは企業にとってそれほど脅威ではなかったが、Sarbanes-Oxley Act of 2002の知的財産開示規定は新たな脅威となるかもしれない。

» 2006年02月24日 09時30分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 GNU General Public License(GPL)を無視した企業にはどのような罰が待っているか、ご存じだろうか。これまでは、Free Software Foundation(FSF)とオープンソース・コミュニティーから糾弾されるだけ。せいぜいコードの開示あるいは書き直しを迫られる程度だった。しかし、そのような不埒な企業にとって、Sarbanes-Oxley Act of 2002の知的財産開示規定は新たな脅威となるかもしれない。

 「ソフトウェアのライセンスを順守しなければ、使用する権利などありません。権利があると株主に述べたとすれば、それは虚偽説明になります」と、組み込みシステムを販売するWasabi Systemsで法務を担当するジェイ・マイケルソン氏は言う。Wasabi自体、GPL下のコードを利用しており、同社の収入のおよそ半分は組み込み型BSD製品によるものだという。

 また、自身による解説の中で、GPL違反は犯罪行為であり、財産刑または自由刑が科される可能性があると述べている。

 これについて、マイケルソン氏は、現時点では「理論上」だけの話だと認める一方、Linuxを貶める風評を流そうというのではなく、GPL違反は不利益になること、企業、特にGPL下のソフトウェアを販売したり取得しようとしている企業はそのコードを注意深く調べライセンスを確認してSarbanes-Oxley法に抵触しないよう注意する必要があることを警告したいのだと説明する。

 「今起こりつつある事態に目を向けさせる役には立つでしょうし、そうなるよう願っています」

 オープンソースに関する法律の専門家でSoftware Freedom Law Center(SFLC)の会長でもあるエベン・モグレン氏は、この問題をさほどには重要視していない。しかし、企業の役職・管理職はIPと財務に関する報告とその正確性に責任を負うことになるため、Sarbanes-Oxley法とGPLには十分な注意を払う必要があるという点については同意見だ。また、企業の分社や買収では知的財産問題が等閑に付されがちだが、実際には大きな影響があり、事後に再評価が必要になることも多いと言う。

 マイケルソン氏によれば、Wasabiとしては、そうした状況を隠すことも「大変だ」と騒ぐつもりもないという。「当社は反GPLでもなく、反Linuxでもありません。ただ、詐取に反対しているだけです」。そして、Sarbanes-Oxley法に抵触する恐れがあるのはGPL下のソフトウェアを販売する株式公開企業だけだと言いつつも、前掲の解説では「莫大な資金を費やして製作し、価値ある知的財産となるはずの」コードを「手放す」必要があるとあえて記し、GPLは従来より「重い義務を伴う」ものになったと述べている。

 ロード可能なカーネル・モジュール(LKM)については、マイケルソン氏もWasabiも、GPLを「回避」して価値ある知的財産をFSFライセンスの下で開示せずに済むとしており、マイケルソン氏はLKMとそれを扱っている企業向けの解説を執筆中だと言う。

 「また別のパンドラの箱を開けることになりますね。これも違反が起こりやすい分野です」

 OSI認定ライセンスを含むほかのライセンスについては、マイケルソン氏は次のように述べている。問題はコードの共有というGPLの基本理念をめぐるものであるため、「何かをするよう求めていないライセンスであれば、問題はありません」

 Sarbanes-Oxley法については、実際上の問題よりも議論の方がかまびすしいという。「もう、てんやわんやですね。一方には違反行為が山ほどあり、他方には順守の例も山ほどあります」と述べ、企業監査の受託をめぐって競い合っている法令順守制度の担い手たちによる「誇大宣伝」を指摘した。

 そうした現状を認めつつも、マイケルソン氏は、摘発は連邦取引委員会(FTC)などの連邦関係機関の裁量だがSarbanes-Oxley法に抵触すれば犯罪行為になると述べ、「最高刑は刑務所行き」で、企業の管理職はSarbanes-Oxley法により個人的に訴追される可能性があると言う。

 そして、GPLと比較し、GPLに違反しても、通例、FSFの警告とGPL順守の指導を受けるだけだが、Sarbanes-Oxley法に違反すれば連邦法への抵触になると説明する。「Sarbanes-Oxleyに違反したとなれば、管理者は個人的に責任を負うことになります。ですから、些細な出来事では済みません」

 さらに、ライセンス問題はソフトウェアエンジニアに任せっきりにされることが多いと言う。「弁護士にかかわってほしいと思う人はいません」。一方のマイケルソン氏も、社内の技術者たちとする仕事は気が進まないと言う。「しかし、ほかにもっと良い考えは浮かばないのです」

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ