衝撃をもたらすのはOracleとMS? ECMベンダーへ転身急ぐコンテンツ管理ソフトベンダーエンタープライズコンテンツ管理のすすめ(2/2 ページ)

» 2006年02月28日 10時07分 公開
[上村陽子,ITmedia]
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安価なECM製品への期待

 一方で、企業のコンテンツ管理は、部門レベルの特定機能を実現する目的で行われてきた。全社規模で管理に取り組んでいるところは少なく、その多くは選定したベンダーの製品に合わせて、ドキュメントの標準化に向けた体制を整えるという初期段階にある。すべての従業員(あるいはパートナー企業や顧客)がアクセス可能なツールを導入できているのは、ごく一部の先進的企業に過ぎない。

 このような背景には、企業内外の境界を越えてコンテンツを管理する必要にあるプロジェクトがあまりなかったことが挙げられる。また、このような組織横断的なプロジェクトは、長期的な視点の戦略が求められることが多く、短期的なコスト削減のメリットを説明しにくいことも原因だろう。

 これら企業側の背景に加え、ECM製品自体が決して安価でないことも企業の導入障壁となっている。ハイエンドのコンテンツ管理製品を実装するには、数千万円以上の費用が必要となり、導入前のコンサルティングも高額である。EMC、FileNet、StellentなどのECM市場のリーダーは、ローエンド製品を提供しておらず、ローエンド製品を提供することによって、自社のハイエンド製品の市場が奪われることも望んでいないだろう。

 しかし、最近になってECM市場に参入したOracleがこの市場に大きな衝撃を与えている。同社の「Oracle Content Services 10g」は、従来「Oracle Files」が提供していたドキュメント管理機能を大幅に強化したものだが、1クライアント1万円程度という価格設定を行っている。機能は限定的であるものの、スイートとしての完成度に対する評価も高い。

 Microsoftが提供しているECM関連機能は、「Windows SharePoint Services」のドキュメント管理と、「Microsoft Content Management Server」のWebコンテンツ管理の2つだ。どちらも基本機能に限定されたソフトであるが、次期Microsoft Officeの「Office 12」ではECMについてビジョンを提示している。何といってもMicrosoftは、デスクトップ環境やコラボレーション/情報ワークプレースといった分野では他の追随を許さない力がある。こうした独特のポジションを生かせば、Microsoftが近い将来ECMスイートを市場に提供する可能性もある。

 今後、ECM市場は、コンテンツ管理分野で長い経験を持つベンダーの高機能なハイエンド製品と、限定された機能だが比較的安価なローエンド製品へと二極化していくと予想される。コンテンツ管理ニーズの拡大と安価な製品の台頭により、市場全体のライセンスが低価格化していくことに期待したい。

上村陽子

株式会社アイ・ティ・アール シニア・アナリスト。データウェアハウス、BI、CRM、コンテンツ管理分野の市場調査を担当する。慶応義塾大学理工学部卒業後、ユーザー企業の情報システム部門を経て、1999年より現職。

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