阪神大震災で痛感 「バイタル・レコード管理」の重要性Interview(1/2 ページ)

富士ゼロックスは、社員1万5000名の保有する社内文書を棚卸しし、バイタル・レコード・マネジメントを実践してきた。きっかけは、1995年の阪神大震災だという。業務の基幹文書についてバックアップの仕組みがなければ、企業の存亡にかかわるからだ。

» 2006年02月21日 08時15分 公開
[聞き手:丸山隆平,ITmedia]

 米国には「バイタル・レコード」と呼ばれる記録・文書がある。これは、組織の存続に必要不可欠な記録や文書のことを指している。文書の電子化が進み、情報共有といった点で文書管理システムの整備が始まってきているが、組織の存亡を左右する文書の管理は、企業のリスク管理という意味でより大切なものとなる。

 「ザ・ドキュメント・カンパニー」を標榜する富士ゼロックスは、サービス事業の1つとして「バイタル・レコード・マネジメント」(VRM)を展開している。同社VRMジェネラル・プロジェクト・マネジャーの新保友二氏にバイタル・レコード管理と同社の文書管理の事例を聞いた。

新保友二氏 富士ゼロックス VRMジェネラル・プロジェクト・マネジャーの新保友二氏

ITmedia まずバイタル・レコードとはどのような文書を意味しているのでしょうか?

新保 コーポレートガバナンスや内部統制の観点から組織の存続に必要不可欠な財務上、法律上、事業運営上の記録や文書のことで、社内の全文書量の2〜7%を占めるといわれています。この記録や文書が失われると、社外に向けて説明責任が果たせなくなるものです。

ITmedia その管理の仕組みを事業化しようとしているのは、どのような背景からでしょうか?

新保 VRMの直接のきっかけは、1995年の阪神大震災でした。契約書類など業務の基幹文書についてバックアップの仕組みを構築する必要性を痛感したのです。VRMのポイントは(1)原本を安全に保管・保存する方法の確立、(2)普段から必要な場面でリアルタイムに文書が参照できる仕組みを確立することにあります。

ITmedia VRMとは、単なる情報活用の効率化といった範ちゅうにとどまらない、企業経営上最優先すべき文書管理の考え方ということでしょうか?

新保 そのとおりです。これは文書管理というよりは、リスク管理に位置づけられるでしょう。バイタル・レコードは、米国では一般的な用語として理解されています。企業リスクには、地震、テロなどの純粋リスクと、機密漏えい、説明責任を果たすことなどのビジネスリスクの2種類があります。当社ではこの2つのリスクに対応するものとしてVRMを展開しているのです。

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