Vistaリリース延期、企業ユーザーへの影響は?

Microsoftはコンシューマー版「Windows Vista」と「Office 2007」のリリース延期をアナウンスした。この出荷延期は企業ユーザーにどんな影響をもたらすだろうか?

» 2006年03月28日 18時54分 公開
[eWEEK]
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 考えられないことが起きた。Microsoftが「Windows Vista」のリリースを再度延期したのだ。「Office 2007」のリリース予定も2006年から2007年に延期された。

 Microsoftのプラットフォーム&サービス部門のジム・オールチン共同社長は3月21日、Vistaを2段階で投入すると発表した。企業向けのボリュームライセンス版Vistaは、大方の予想通り、11月に出荷される予定だ。しかしコンシューマー向けバージョンのリリースは2007年1月になるという。

 Microsoftは3月27日、Windows部門の組織再編を実施し、Microsoft Office開発責任者であるスティーブン・シノフスキー氏にWindows部門を担当させることを決めた

 Vistaの出荷延期は、企業ユーザーにとってどんな意味があるのだろうか――以下に幾つかのポイントをまとめた。

企業でのVistaの普及に遅れ?

 ITマネジャーらによると、たぶんそういうことにはならないという。ほとんどの企業はもともと、すぐにVistaに飛びつくつもりはなかった。

 eWEEKのコーポレートパートナーで、カリフォルニア州レッドウッドシティーにあるFoxHollow TechnologiesのシニアITディレクターを務めるトム・ミラー氏は、「魅力的な新機能があるかもしれないが、ほかのアプリケーションとの互換性を検証する必要がある。トレーニングに加え、アップグレードの計画・配備に必要なリソースも考慮に入れなければならない。Officeのリリース時期とタイミングを合わせる必要もある」と話す。

 Windows XPの場合と同様、企業が早急にVistaに移行することはないだろう。2001年に登場したWindows XPは、企業のデスクトップに大量進出するのに数年間を要した。多くの企業幹部によると、Vistaのテストは開始するが、アップグレードするのは、Microsoftが最初のVistaサービスパックをリリースしてバグを修正してからだという。

Microsoftの経営への影響は?

 Vistaの延期発表からわずか数日後に、Microsoftはプラットフォーム&サービス部門の組織改革を実施した。特に注目されるのは、オールチン氏に代わってシノフスキー氏が同部門の責任者に指名されたことだ。

 シノフスキー氏は、オールチン氏の退職時点で正式に就任する。Microsoftの昨年の発表によると、オールチン氏の退職はWindows Vistaのリリース完了時期と一致している。

 Office担当上級副社長のシノフスキー氏がWindows部門を統括することは、非常に大きなインパクトをもたらすだろう。シノフスキー氏は、統制のとれた組織運営を行い、社内的な締め切りと出荷時期を厳守することで知られる。Microsoftは、同氏のこういった持ち味をWindows開発チームでも発揮してほしいと考えているのだ。

PCのアップグレードサイクルに悪影響は?

 PCメーカーは年末商戦で重要な販売機会を失うだろう。メーカー各社は、VistaのリリースがPCの販売台数の増加につながるだけでなく、ハイエンドマシンの購入を促進することを期待していた(関連記事)

 ニューヨーク州ポートワシントンにあるNPD Groupのアナリスト、スティーブ・ベーカー氏によると、MicrosoftがVistaのリリースを延期するというのは、コンシューマーに新規PCの購入を見合わせるよう言っているのに等しいという。「人々はクリスマス休暇のショッピングで、高解像度テレビなどPC以外の商品を選ぶことになるかもしれない」と同氏は語る。このため、GatewayやHewlett-Packard、Dellなど、コンシューマー向けPCの販売に大きく依存しているベンダーは、何らかの影響を免れないだろう。

 PCメーカーの中には、自社のマシンを「Vista対応」にすることによって販売拡大を狙うというところもある。つまり、Vistaがリリースされた時点でOSをアップグレードできるようにマシンをデザインし、それを宣伝文句にしようというわけだ。

Vistaリリース延期の本当の理由は?

 表向きの理由は、セキュリティ、ドライバ、パフォーマンスなどを中心とした全般的な品質問題である。もう1つ考えられる理由としては、品質への批判が起きるのをできるだけ抑えたいとMicrosoftが考えたことが挙げられる。

 MicrosoftのWindowsクライアント製品管理チームのゼネラルマネジャー、ブラッド・ゴールドバーグ氏によると、延期が決定される前、Microsoftは社内的な締め切りに追われていたという。また、Vistaの最終コードをパートナー各社にいつ提供するのかを確約する必要があった。後で謝罪する羽目になるよりも、Microsoftは安全を期して、テストとバグ修正のスケジュールにもう少し時間を注ぎ込むことにしたのだ、とゴールドバーグ氏は説明する。

販売チャネルやISVへの影響は?

 VAR(付加価値再販業者)やシステムインテグレータ、システムビルダーは以前から、OSのリリースが延期されることに慣れている。しかし販売に遅れが生じることを懸念する声もある。

 ペンシルベニア州ギャップにあるVAR/システムインテグレータ、Esh Computer Centerのオーナーであるジェイク・エッシュ氏によると、常に最新技術を求めているユーザーは、Vistaのリリース延期のために、予定していたPCの購入を先送りする可能性が高いという。「販売機会が遅れるのは間違いないが、こういった遅れはせいぜい、当社のビジネスの10%程度に影響するだけだ」と同氏は話している。

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