損失は数十億ドル? Vista延期の波紋(1/2 ページ)

Windows Vistaが年末商戦に間に合わないことで「すべてにマイナスの影響が及ぶ」と見るアナリストもいる。皆がそこまで悲観的なわけではないが――。

» 2006年03月23日 17時15分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 Windows Vistaのリリースを延期するという米Microsoftの決定により、第4四半期のPC売り上げは大打撃を受けることになるだろう――。業界観測筋はそう指摘している。

 Microsoftは3月21日、Windows Vistaのリリースを延期すると発表した。Windows Vistaは、PCユーザーにより良いユーザーインタフェースと安定性およびセキュリティの改善をもたらすとされている次世代のWindowsだ。

 Windows Vistaは当初今秋のリリースが予定されていたが、同社はコンシューマーも含め大半の顧客向けの同OSを2007年1月にリリースする計画という。つまり、今年の年末商戦期にはWindows Vistaは登場しないことになった。

 PCメーカー各社は販売台数を拡大するためだけでなく、大容量のメモリとグラフィックスカードを備えた、比較的高い価格帯のハイエンドマシンの購入を促進するという意味でも、Windows Vistaのリリースを当てにしていた。

 コンシューマーの関心を駆り立てる新OSの登場がなければ、第4四半期のPC売り上げは減少し、PCメーカーや半導体メーカー、およびMicrosoft自身も第4四半期の利益を数億ドル減じることになるかもしれない。しかも、そうした需要が1月に戻ってくるかどうかも定かではない、とアナリストは指摘している。

 Windows Vistaのリリースを3月や4月ではなく1月に延期することで、Microsoftは基本的にはコンシューマーに新規PCの購入を踏みとどまらせようとしている、とNPD Groupのアナリスト、スティーブ・ベイカー氏は指摘している。実際、多くのコンシューマーはそうするだろう、と同氏。

 「人々が新規PCを購入しない言い訳を与えていることになる。悪くない言い訳だ。第4四半期に失った分の売り上げは、その後も全部は取り返せないだろう」とベイカー氏。

 また消費者は年末商戦期の買い物として、PCの代わりに、高品位TVなど、そのほかの製品を選ぶことになるかもしれない。ベイカー氏によれば、高品位TVの価格は今年の年末商戦期に初めて1000ドルを切ると見られている。

 そのため、Gateway、HP、Dellなど、コンシューマー向けPCの販売に大きく依存している企業はいずれも、ある程度の影響を受けることになりそうだ。Dell幹部はこの発表を受けてすぐに、同社の売り上げの85%は企業向けのものだと指摘したが、コンシューマー向けの売り上げは通常、第4四半期に大幅に増加することも認めている。

 Endpoint Technologies Associatesのロジャー・ケイ社長は、今回のリリース延期により、今年第4四半期の出荷台数として見積もっていた約1900万台のPCのうち、10〜30%程度は実現しないことになるかもしれないと指摘している。

 ケイ氏が見積もっていた2億2000万台という2006年の世界PC出荷台数からすれば、第4四半期の販売台数が10%(約200万台に相当する)減ったからといって全体にそう大きな影響はないかもしれない。

 だが、もしこの縮小幅がもっと大きく、全体の30%に当たる約650万台に影響が及ぶことになれば、出荷台数はかなりの減少となる。リリース延期の影響で第4四半期の出荷台数が約650万台減少すれば、理論的には、2006年のPC出荷台数は全体で約3%減少することになる、とケイ氏。

 「それは大きい」と同氏は語り、そうなれば、売上高は数十億ドル減少し、結果的に、MicrosoftやPCメーカー、半導体メーカーの利益は数億ドル減じることになるだろうと指摘している。

 そのほかのアナリストも同様の見解を示している。

 ドイツ銀行のアナリスト、クリス・ホイットモア氏はリポートで次のように指摘している。「Windows Vistaのコンシューマー向けリリースが2007年1月に延期されたことは、DellやHPにとって、ある程度、マイナスに影響するだろう。当社のPC出荷台数の見通しはまだ変わっていないが、今回の発表を受けて、2006年第4四半期のPC出荷台数の見通しにはマイナスのバイアスがかかり、2007年上半期の出荷台数についてはさらに強いバイアスがかかっている」

 ホイットモアは、消費者にアピールするためのWindows Vistaの存在なしでは、PCメーカーは価格で勝負するしかなくなるだろうと指摘し、年末商戦期にはコンシューマーPCの価格競争が激化すると予測している。価格競争の激化は通常、PCメーカーの売上高の減少や利益の減少、あるいはその両方をもたらす。

 PCメーカー数社は、自社のマシンを確実に「Vista対応」にすることで前進すると語っている。

 つまり各社は、Windows Vistaがリリースされた時点で同OSにアップグレードできるよう自社のPCを設計し、そのように宣伝するということだ。

 例えば、HPのパーソナルシステムグループの広報担当者の電子メールによれば、同社はコンシューマー向けと企業向け、両方の製品ラインでWindows Vistaをサポートする計画を続行中という。

 「通常、当社にとって年末商戦期は最強のシーズンだ。われわれは依然として、今年もそうなるものと期待している」と同担当者。

 「当社のコンシューマーPCの90%以上をVistaに対応させれば、新OSとの将来的な互換性を懸念している顧客も、HPのシステムであれば、後からVistaに移行する段になっても使い続けられるという点を納得し、安心して購入できることになる」とこの広報担当者は続けている。

 Dellの広報担当者は、今回のリリース延期が同社の売り上げにどのように影響するかについてのコメントは控え、eWEEK編集部に送った電子メールで、「MicrosoftがWindows Vistaをリリースするのを楽しみにしており、リリースされ次第、出荷する」と説明している。

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