「インテリジェンス」生み出すビジネスマンが主役に現場力を鍛えるこれからのBI:(1/3 ページ)

経営層が経営分析に利用してきたBI(ビジネスインテリジェンス)が一般社員層にまで広がってきている。こうした流れは90年代初頭から始まった。現場の仕事にBIは直接利用でき、うまく活用すれば「現場力」を確実に高める成果を上げられるという認識は、すでに先進企業では常識となっているようだ。インテリジェンス=知恵を武器にビジネスの現場を戦う企業とはどんな組織なのかを探った。

» 2006年04月03日 07時00分 公開
[村上 敬,ITmedia]

現場のBI活用が進んでいることの証左の一つとして、ITアドバイザリ企業ガートナーの2005年の調査を図1に上げてみた。これによると、役職別利用者層人数比率では、一般社員層がもっとも高く26・1%と高くなっていて、改めてBIのユーザーが一般社員層に広がっていることがわかる。

図1 国内企業におけるBI利用者層(出典:ガートナー『ITデマンド調査室』/調査:2005年11月)

 経営層から命じられて、リポートを作成するという利用の仕方が多かったわけだが、一般の社員層が経営層やマネジャーに言われてリポート作成のためにBIを利用するとは考えにくい。一般社員層はまさしく現場の最前線で働く人たちである。こうした層が利用者として最も高い比率を示すというのは、やはり、「自分やチームの仕事のためにBIを使っている」と考えた方がいいだろう。

経営分析だけの利用に止まらなくなった

こうした見方に対して日本総合研究所のビジネスシステム戦略クラスター長主席研究員 兼為勇次郎氏は、次のように語る。

「たしかにそういう傾向はあると思います。これまでBIというのは、経営層や経営企画や財務部門で、会計データの分析に使われていた。経営分析的な使い方ですね。今はバランススコアカードが出てきたり、KPIという言葉が出てきたりして、現場で実績の分析もさることながら、それ以外の、たとえば目標に対してどんなことをやったかという分析もするようになった。現場で言えば、マネジメントもするし、営業であれば顧客の分析をしたり、データの活用が進んでいますね。そういう意味では、経営層だけのものではなくなったという感じはあります」

 またマイクロソフト、インフォメーションワーカービジネス本部のシニアプロダクトマネージャ、米野宏明氏も、利用者の変化について「経営者が使うものというのはまさにイメージだけの話で、実情はかなり変わってきたと思います。ドラスティックに変わったわけではないです。90年代後半くらいから、徐々にですね」と話す。

経営者から現場への単純な移動ではない

 かつてBIのメインユーザーは経営層だったが、経営層はBIを自分たちで利用するのではなく、現場に使わせることでより経営の効率化を図ったのだろうか。BIツールベンダー、日本ビジネスオブジェクツの畝見真マネージャーはそれに対しては否定的だ。

「ちょっと違うと思います。かつてBIツールは一部のパワーユーザーを中心に活用されてきた感があります。これが昨今一般ユーザー層や経営層へ広がってきているという印象です」

かつてのイメージでは「BIは経営者のもの」というものだったが、実態は違っていて、ITリテラシーが高く、ある程度経営層寄りの立場にあったパワーユーザーがメインで使っていたということなのだろう。それがここに来て、なかなか必要なデータを自ら引き出すことのできなかった経営層や、詳細な自社のデータに触れることのできなかった現場の社員たちがツールが使いやすくなってきたことも影響して、積極的に利用するようになったということだ。

アビームコンサルティング、BIグループの中世古操氏はこうした背景を次のように解説する。

「ツールが使いやすくなったので、利用者が経営層から現場へ降りてきたという解釈は間違っていると思います。経営層と現場の意思疎通のサイクルがうまく回り始めた、そういう企業が増えてきているのだと思いますね。企業では各階層で、意思決定をしていき、業務を遂行するわけですが、経営層、マネジメント層、現場という流れの中で、スピードの早い、正確な意思決定をしていくには、各階層が正確なデータを基に判断を下していくしかない。BIの利用者層の広がりはこうした意思決定の迅速化を早い時期から意識した企業から始まったものだと思います」

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