「インテリジェンス」生み出すビジネスマンが主役に現場力を鍛えるこれからのBI:(2/3 ページ)

» 2006年04月03日 07時00分 公開
[村上 敬,ITmedia]

意思決定の迅速化が現場利用に拍車を

中世古氏によると、あるオーディオメーカーでは製品投入のタイミングをBIを使って分析し利用しているという。ポータブルオーディオ機器などは製品の寿命が短く、投入タイミングを誤ると大きな損失になりかねない。そのためには週次でデータを集め分析していかないと正確な判断ができないという。BIツールによって分析能力を高めるだけでなく、必要な部署にはこうした分析した結果を共有していく必要があるわけだ。意思決定の迅速化の要請が、BIの現場利用の推進につながっているのだろう。

BIツールベンダー、コグノスの代表取締役社長、フォレスト・パーマー氏もBIツールの使われ方について次のように説明する。

「企業内でのBIツールの使われ方は、ボトムアップ型、トップダウン型と双方向の使われ方がされていると思います。欧米では企業内でアナリストという役割を担う社員がBIツールを使って情報分析を行い、その結果を経営層や他部門と共有しています。経営層は提供された情報を経営判断に生かし、他部門は情報を業務計画に反映して柔軟な対応ができるよう情報活用をするケースが見られます。日本ではアナリストという役割がまだ普及していないため、BIツールのユーザーは情報部門やその他部門に所属する社員がBIツールを使用し、欧米企業と比較するとユーザー層が幅広いと思われます」

 分析のスペシャリストがいないことの多い日本企業は特に、一般社員層がBIを積極的に利用する傾向が強いということだ。いずれにせよ、意思決定スピードの迅速化が企業の生命線を担っており、それを背景として、さまざまなデータを誰もが利用して戦略立案に役立てる時代に入ったということだろう。

 ここまでを振り返ってみると、BIの本格的な全社的利用は増えてきているが、まだまだ、中間マネジャー層が数字をまとめて経営層にリポートとして報告するケースも多々見受けられるようだ。経営分析ソリューションを手がけるハイペリオンのプロダクトマーケティングマネージャーの工藤啓介氏は次のように語る。

 「経営層の人に使ってもらえればうれしいのですが、現状ではまだそこまでいってないような気がします。米国の弊社のお客様ですと、経営者が自分で使うという文化があるのですが。日本だと、経営企画ですとか、あとはマーケティングや営業、また経理でも結構現場で使われているんです。そこで現場の方がBIで作ったリポートを経営層に渡して、それを紙で読むという感じでしょうか。現場の最前線ということで言えば、たしかに営業やマーケティングでは一般の社員の方も使うようになっています。急激にそうなったというより、BIの広がりに合わせて、じわじわと少しずつという感じです」

 意識の高いマネジャークラスの社員が、経営層を説得するためにBIを駆使して報告書をまとめるなら良いが、報告書作成が目的化しては意味がない。BIの使い方の変化について工藤氏は次のように説明する。「これまでは『WHAT』だったんですよ。何が起きているのかを見るだけ。それが今は『WHY』、つまり原因は何なのか、その答えを知るためにBIを使いたいという要望が現場から出てきた。そこで多軸分析や、KPIを使った比較分析をして、答えを見つけていくという使い方になってきました。あとは経営管理全体に活用していこうということで、予算とか予測とか、いわゆる管理会計を含めて、BIで統合的に見ていこうという流れです。その中で、弊社で『BPM=ビジネス・パフォーマンス・マネジメント』と呼んでいるパフォーマンス管理にも使われるようになってきた。簡単に言えば、売り上げだけを見るのではなくて、きちんと利益管理もしていこうということ。売り上げは良くても、利益率はどうなのか。そのあたりもシビアに分析したいというニーズが高くなってきています」

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