中国で正規OS搭載を義務付け、オープンソース奨励でMSには逆風の可能性も(1/3 ページ)

中国のコンピュータメーカーは出荷するすべてのコンピュータに正規OSを搭載することが義務付けられた。中国におけるソフトの違法コピーの減少につながる可能性があるが、中国は一貫してオープンソースソフトを奨励しているため、MSへのメリットは限定的になるだろう。

» 2006年04月24日 07時00分 公開
[Paul DeGroot,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftと中国のコンピュータメーカーとの一連の新しい契約や、中国政府の国内コンピュータメーカーに対する正規OSプリインストールの義務付け、Microsoft幹部と中国政府トップの会談は、ソフトの違法コピーに対する中国の姿勢の変化を示している。西側からの圧力や、90%に上る違法コピー率が自国のソフト産業に与える悪影響への中国自身の懸念を背景としたこれらの動きは、Microsoftに大きな恩恵をもたらすかもしれない。だが同社は中国では、他の地域で得ているような優位を享受することはないだろう。中国は一貫してオープンソースソフトの利用を奨励しているからだ。

知財保護強化への政治的判断

 中国ではソフトだけでなく、映画や音楽、消費財(時計やハンドバッグなど)といった分野で違法コピー品や偽造品が横行しており、このことは他の国の大きな怒りを買ってきた。中国は2001年に、世界貿易機関(WTO)への加盟条件に盛り込まれた知的財産権侵害の厳しい取り締まりを実施することに同意している。

 だが、ソフトの違法コピーは依然として深刻な問題だ。世界のソフト違法コピーに関する年次報告を発行しているBusiness Software Alliance(BSA)によると、2004年には中国の違法コピー率は90%と世界で3番目に高かった。違法コピー率が世界で最も低かった国は米国で、21%だった。

 Windows Genuine Advantage(正規Windows推奨プログラム)のような新たなプログラムが導入されているものの、MicrosoftのWindowsデスクトップOSは、違法コピーの最大の対象となっているソフトであり、同社は中国で難しいジレンマに直面している。Microsoftはこの世界有数の活気ある市場で大きなプレゼンスの確立を目指しているが、ほとんどの中国人はMicrosoftの正規ソフトを購入しようとしない。だが、海賊版はMicrosoftに一切収入をもたらさない半面、同社のプレゼンス向上に一役買っており、Linuxなど代替製品の成長に歯止めをかける要因ともなっている。

 しかし中国当局は、ソフト違法コピーの横行が続けば、今後、中国にとって深刻な問題が生じることを認識し始めている。外国のソフトベンダーは、違法コピー率が格段に低い中国以外の市場で売り上げの大半を得ており、中国での違法コピーによる損害にある程度耐えることができる。だが中国のソフトベンダーは、違法コピーは当たり前という風潮が自国の市場に広がっているため、最初からハンデを背負うことになる。中国政府は自国のソフト産業の発展を明確に目指しており、その実現のためには、国内外の商用ソフトベンダーにとって将来にわたって採算が期待できる市場環境を整備しなければならない。

中国の新ルール

 中国政府は2006年3月から4月にかけて、こうした課題の多くに対する取り組みを相次いで打ち出した。これは胡錦涛中国国家主席の4月の訪米に備えた動きだった。胡主席の最初の訪問先の1つはワシントン州レドモンドのMicrosoft本社で、同氏はBill Gates氏をはじめMicrosoftの上級幹部と会談した。以下のように、中国は胡主席の訪米前に、摩擦の火種になりかねない問題を解消することを狙ったもようだ。

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