個別で語られてきたITフレームワークITライフサイクルマネジメントの新発想

IT業界で脚光を浴びているEA、SOA、ITIL。これらのアーキテクチャやフレームワークは、なぜ注目されるのか。

» 2006年05月02日 07時00分 公開
[増田克善+アイティセレクト編集部,ITmedia]

 ITIL(ITインフラストラクチャライブラリ)が日本で注目され始めたのは、2003年にitSMF(ITサービスマネジメントフォーラム)ジャパンが設立されたのがきっかけだ。それを機に本格的にITサービスマネジメントが注目され、ITサービスのプラン、開発、提供、維持の各プロセスに標準化された手法が必要であるという認識が高まった。ところが実際は、複雑化・大規模化したITシステムの運用負荷が年々増大したために、運用コストを削減しながらサービスレベルを維持したいという欲求から、サービスサポートとサービスデリバリの部分だけが注目された。ベンダーもツール化しやすく導入を推進できる2つの要素の普及に邁進した。その結果、「ITIL=システム運用管理」と捉えられているのが現状である。

一方、EA(エンタープライズアーキテクチャ)も、オープンシステムの隆盛がもたらした複雑化・分散化されたITシステムになったことが背景にある。部分最適の名の下に乱立したITシステムは、企業の戦略にITを活用するどころか、外部環境の変化に対応すべく打ち出した戦略において、ITシステムそのものがボトルネックとなって実行を妨げるようになった。

EAを特徴づけるポイントは、ビジネスとITを関係づけて1つの体系として取り扱うことだ。組織全体のシステムとしてどのようなシステムが望ましいのかという理想像に近づけようとする全体最適化を図り、ビジネスとITにまたがる組織の設計図を共通フォーマットでドキュメント化・モデル化して、経営層、ユーザー部門、IT部門など関係者間での理解とコミュニケーションを容易にすることが要点となる。さらに、将来のあるべき姿、到達するためのプランを作成し、常に中長期的視点を保ちつつ、継続的な改善サイクルを遂行することが肝要だ。こうしたEAの活動を通じて、ビジネス戦略とIT戦略の相互関係を整理し、意思決定の基準と権限を明確化することがまさしくITガバナンスそのものであり、SOX法などの法規制の中でコンプライアンスの観点からも重要なマネジメントシステムと認識されている。

そして、事業環境や顧客ニーズ、企業組織などの変化に柔軟に対応できるITシステムのアーキテクチャとして脚光を浴びるようになったSOA(サービス指向アーキテクチャ)がある。ビジネスプロセスの構成単位に合わせて構築・整理されたソフトウェア部品や機能を相互に連携させることにより、柔軟なエンタープライズシステム、企業間ビジネスプロセス実行システムを構築しようというシステムアーキテクチャをはじめ、コンピュータのソフトウェア機能を「サービス」という独立した単位で実装し、それらを組み合わせてシステムをつくり上げる考え方などさまざまな要素を包含している。

SOAが注目される理由は、かつての分散オブジェクト技術に対する脚光と違って、EAやビジネスプロセスマネジメントなどが注目されているのと同様、ITのトレンドが技術指向からビジネス指向へと変わってきているからである。加えて、企業の合併・再編などの流れ、顧客ニーズの変化などによって業務プロセスが短い期間で変わることも当たり前で、システムがそれらに柔軟に対応するために、サービスレベルのコンポーネント化が必要になってきた。SOAはビジネスに密着したIT化を可能にする仕組みであり、経営層、システム担当者、ユーザーのすべての利害関係者から注目されている。

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