日本IBM、仮想化技術を携え「システム管理」時代の終わりを告げる

日本IBMが開催したIAサーバ・ソリューション・セミナーでは、仮想化と日本IBMのソリューションの組み合わせが、システム管理という考え方からITサービスマネジメントという考え方にシフトさせようとしていることが分かる。

» 2006年05月31日 23時58分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本IBMは6月1日、「IAサーバ・ソリューション・セミナー」を都内で開催した。同セミナーは最新のサーバソリューションがどのようにビジネスインフラを変革するのかに焦点を当てたもの。

 冒頭、日本IBM System x事業部事業部長の藤本司郎氏は、ITの役割が1990年代は経営戦略そのものを「構成」するものとして位置づけられていたITが、2000年代に入ると、革新的な経営戦略を「発想」させるものに、さらに現在では経営戦略そのものを迅速かつ柔軟に「実現」するものに変わってきたと説明。それゆえ、アーキテクチャーには5年ほどの中長期を見越したビジョンが必要であると話す。

 このビジョンに基づくものが、IBMが2005年7月に発表した「IBM Systems Agenda」であるとし、「Virtualization」「Openness」「Collaboration」の3点から顧客の経営戦略実現をITインフラの面から支援しているのだと説明した。

 前述の「Virtualization」「Openness」「Collaboration」のうち、今回のセミナーでは「Virtualization」の部分に重きが置かれたものとなっていた。ITインフラの複雑さを解消し、かつ、運用管理性や柔軟性の面で、システム全体にわたる仮想化が非常に有効だという考えだ。

 仮想化の部分において重要な役割を担っているのが、VMwareだ。IBMとVMwareは2002年に仮想マシンソフトウェアに関する戦略的提携を結んでおり、日本IBMでも、「VMware ESX Server」を用いたシステムのコンサルティングから設計・検証・導入・設置・運用管理・保守までを一貫して提供している。

 ヴイエムウェアの名倉丈雄氏は、VMwareでは、単に仮想化するだけにとどまらず、運用管理面での強化を図るなどし、仮想インフラストラクチャーとして進化を続けるVMwareテクノロジーについて解説。特に、稼働中の仮想マシンを停止することなく、物理サーバ間で移動させるVMotionテクノロジーなどの登場により、仮想マシンをサービスととらえ、ハードウェアと分離させた運用が可能になったことなどを挙げ、「仮想化によりITのビジネスバリューはより高められる」(名倉氏)とした。

仮想化でネットワークがボトルネックになる可能性は低い

 こうしたサーバの統合・仮想化の事例として、名倉氏に続いて登壇したのは、システム・インテグレーターであるエス・アンド・アイのサーバソリューション営業部部長の伊藤英啓氏。具体的な企業名は許諾を取るのが間に合わなかったとしながらも最新の事例について紹介した。

 その事例では、200台近くのWindowsサーバを抱える企業が、日本IBMのブレードサーバ「BladeCenter HS40」およびVMwareによるサーバ統合を進めたというが、注目すべきは、仮想マシンのパフォーマンスにあると伊藤氏。この企業では現在、47個の仮想マシンを作成し、うち43個が常時稼働(残りはテンプレートなどの目的で利用)しているが、CPU利用率、メモリ使用率ともにまだまだ余裕があるという。ネットワークI/Oに至っては、「ネットワークが(仮想マシン環境の)ボトルネックになる可能性は低い」(伊藤氏)という。

 物理面での統合効果としては、ラック占有領域の削減が大きいと話す。現在、47個の仮想マシンはバックアップやSANなどを含めると、33Uになるという。また、消費電力は各機器を総計すると約3700Wであり、2Uのラックマウントサーバ(xSeries 346)の360Wと比べると、そのパフォーマンスは歴然であるとした。

 しかし、統合効果としては、むしろ運用管理においてそれが顕著に表れたと話す。一台一台目視で確認して回る必要もなく、また、仮想マシンのテンプレートを利用することで、従来のように、導入するハードウェアの検討、見積もり、導入、構築作業といったプロセスを事実上ゼロにすることができたという点で、ITの価値が迅速化が図れたとしている。

 今回のセミナーではあまり触れられなかったが、仮想化技術はシンクライアント・ソリューションにまで広がりを見せている。同日には、日本IBMとClearCube Technologyが、仮想化技術を活用したシンクライアント・ソリューションを6月1日から提供していくことが発表された(関連記事参照)


 ビジネスの柔軟な変化にも迅速に対応し、かつ、資源を有効活用する。これこそが仮想化されたインフラの価値である。その意味ではそれぞれの仮想マシンは1つのサービスと見ることもできる。日本IBMはさらにTivoliによる統合管理環境を提供することで、物理/仮想を問わず、統合的な管理を可能にし、ITシステムが抱える問題を解決しようとしている。それは、単なる「システム管理」という時代から、ITサービスをマネジメントするという時代になり始めていることを意味している。

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