管理負担の軽減だけではない――ID管理に対する企業ニーズの変化今、見直されるアイデンティティ管理(3/3 ページ)

» 2006年06月01日 08時00分 公開
[ヤ嶋秀規、岡本 孝,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

ID管理は大企業だけのものか

 以前は、国内でも有数の大規模企業でなければ、IDMの導入は検討さえもされていなかったように思う。しかし、最近では数百人程度の企業からも、IDMについて問い合わせをしたり、説明を依頼するケースが増えている。これは、先述したコンプライアンスへの意識が企業規模にかかわらず急速に高まっているためである。

 例えば、数百人規模の企業の多くは、コスト的にIDMの導入に至らず、ID管理は人手に任せるしかなかった。アカウントのメンテナンスが人事異動などのタイミングに間に合わず、対象者がシステムを利用できない状況を招いていたり、管理しているはずのIDに退職者のアカウントや誰が許可したのか分からないアカウントなどの、いわゆるゴミアカウントの存在は珍しくない。これは、不要なアカウントは情報漏えいにつながるため、現在は早急に対処すべき問題である。

 また、企業環境の変化もIDMの必要性を大きくしているようだ。正社員以外のアライアンスパートナーや派遣社員の増加、流動的なマトリックス組織など企業における組織環境は大きく変化している。同じフロアにいる人でも、そのアイデンティティは異なっているのだ。各個人のアイデンティティを基にアクセス権限を把握し、コントロールするには、人手による管理では限界があり、その煩雑さがセキュリティホールとなる危険性がある。また、IDM製品が紹介される機会も多く、企業規模、連携システムの種類、ワークフローや監査機能など、選択肢が増えたこともIDMを検討する企業が増えた要因だろう。

 ただし、IDMの導入にはほとんどの場合、製品のライセンスコストだけでなく設計コストが発生する。例えば、連携先がカスタムアプリケーションで、製品に標準で用意されているエージェントでは対応できない場合や、特定の部署の人間だけが一部のシステムを利用するなどの連携条件によっても開発が発生する。さらに、人事情報に含まれないユーザーまでを管理対象とする場合にも、カスタマイズが必要となることが多い。だが要求仕様をはっきりさせることで、実績のあるインテグレーターであれば、その企業に適した製品の紹介と概算の見積もりが得られるはずである。

 今後、再び急成長が期待されるIDM市場であるが、企業に対するIDMビジネスの状況は、「主目的が効率改善からコンプライアンス対応に」「短期間での導入決定」「中規模企業もIDMの検討へ」と変化している。


 次回は、IDMを実現する仕組みを構成要素や機能の面から解説する。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ